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ふたりの16





ボーッと日々を過ごすと


あっという間に時間が流れてしまう





帰り道、七海とドーナッツ屋さんに入った


私はチョコがかかったのがすき


七海は見た目甘党っぽくないのに


あまあまのものが好きだ



今日も選んでいるのはハニードーナッツ




なんだかかわいい



お皿にのったドーナッツを持って

空いている窓側の席に座った




ガタン……



「はー、学校おつかれ」


「疲れたの?でも、数学のとき寝てたわね」



「見られてたのか……!」



「あの先生、説明長いしね」


「そう!なの!ワカッテルゥ!」




ケラケラ笑いながら


話する放課後の時間って好きだ


ゆっくり時間が流れて、楽しめる




私が結構喋りたがりだから


七海はそれを頷きながら聞いてくれる



私はこういう時間がすき



だけどあっという間に時間は過ぎる





「ねー、七海」



「なに?」



「楽しい!まだいたい!」




空になったお皿を見つめる


もう帰らなきゃいけないサイン




「ふふ、嬉しい。でも帰ろうね」




私の頭をぽんぽんとして


立ち上がった





外に出て伸びをする



「さて、帰ろうか」


「はーい、、」




渋々歩く私をみかねて



七海が手を引いた




「また行こうね、今度はパンケーキがいいわね」




また行ってくれるのは、嬉しいけれど


ちゃっかり自分の食べたいものを

言ってくる七海




「ふわっふわのやつがいい!」



「いいお店知ってるわ」



くすくす笑う七海を横目に


すっかりウキウキになっている自分がいる



七海は私の扱いがうまいのだ





■□■□■□■






ガタンゴトン……



夕方の電車は社会人で溢れている


みんな疲れた顔してるなぁ





あと二駅……




キキーーーッ


車内にブレーキ音が響く




「!」




ドンッ



人の波に押されて

目をつむる




「っわ」




目を開けると

七海の顔が横にあった




顔が近くて少しドキドキする





「びっくりしたわね」



「う、うん」




耳元で喋られるからくすぐったい



あ、あと一駅……!




動くに動けないから着くまで耐える






「ドーナッツ美味しかったね。また食べたいわ」



わざとなのかさっきまで

喋ってなかったのに喋りだした





「んっ、ふふ。くすぐったいよ」



そう言って片手で耳をふさぐ




「かわいい」






くすぐるような吐息で喋る


意地悪だっ……




はやくつけ〜






■□■□■□■






「また明日ね」



分かれ道まで歩いて


バイバイした





七海が近くにくると



ドキドキしてしまう




これって距離が近いからなのかな










.



























ふたりの15





あ、キスされる……



七海の顔がゆっくり近づく



無意識に目をぎゅっとつむると



七海の顔は私の顔を通りすぎて


コツンと顎をのせた






「……キス、してほしかった?」




クスリと笑いながら

耳元で囁かれた





全身がビクッとして


甘い声に麻痺しそうになる





「違っ……」





慌てて口回りの砂糖をはらった


は、恥ずかしい……





「じゃあなんで、目を閉じたのかしら」





七海は顔を離して


砂糖をはらった手を掴んだ





「………ッ!」ビクッ





私の砂糖が付いた手をとって


指先を舐めた



生暖かい舌が指に絡まってゾクゾクする





「な、何してる、の」



七海はチラ、と私を見て


指を軽く噛んだ



「やっ、」



背中に流れるゾクゾクが頭まできて


のけぞってしまう






「夜空は、甘くて美味しい」




「そ、それは砂糖が……」






ビュオオオオッ!




急に風が舞い上がる様に吹いて




スカートがめくれた






「あっ!」




お弁当を持った手では押さえられず


七海は私の手を持ったまま



スカートはめくれ放題だった




徐々に顔が真っ赤になるのを感じる







「やっ、やだ!」



「レースの赤チェック可愛い」




冷静に七海は下着の柄を言う



やめてくれーーー






少し風が緩くなって


お弁当を横に置いてスカートを直した







「可愛い下着ね、見ちゃった」



「忘れて……」





恥ずかしさで泣きそうになりながら

パクパクと無言でお弁当を食べた










■□■□■□■





バタン……




屋上の扉を閉めて一息ついた



風強かった...





暴れた髪の毛を手ぐしで整えた



「夜空」



「なに?どうかした?」



「後ろのスカートが全開だわ……」



スルリとおしりを触られた







なん……だと……!?



気をつけたのに全開!?!




おしりを触られたのをスルーして


パタパタと後ろを払ってスカートを直す





「あっ、ありがとう……」




こんな複雑な思いのありがとうは


初めてだ






風の強い日にはもういかないぞ!





と、強く誓った













.





















ふたりの14





月曜日の朝。




ざわつく教室で静かに本を読む

七海を見つけた




「なーなみちゃん!」


「っわ!」




横から話しかけたら想像以上に

驚かれた





びくっと体を揺らして

眼鏡の奥の目が開かれる



「おはよう!」


「よ、夜空かぁ……おはよう」




びっくりしたなぁって言いながら

本を閉じた





「もう土日で治ったんだね」


「うん、もう元気だわ」


七海はにっこりと頬笑んだ





ん?ってことは……




「風邪ひいたのは二人の秘密だねっ」




こそっと耳に近づいて囁いた


なんかうれしい?かも





「!」



びっくりした顔にしたあとに


にやーと笑った



「な、なにその顔……」



なんだか七海は嬉しそうだ




「二人だけの秘密、ね」




「ん??」




「……お昼が楽しみだわ」





お昼が楽しみなんて

そんなにお腹空いたのかな、




「……?またお昼ね!」






またダルい月曜日の始まりだ








■□■□■□■





キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン







ガタッ




「おなかすいた!ご、は、ん!」




チャイムがなると七海のもとへ飛んでった





「私、購買行かないと、、夜空はお弁当?」



「うん!ついてく〜」






いつものメロンパンかな?



そう思いながら七海を待った





「……お待たせ」



「じゃあ、屋上行こっか!」








コツ……コツ……




二人で階段を上がって


屋上のドアを開けた







ビュオオオッ……!




「っわ!風強いね!」



「……裏側行けば大丈夫かしら」


「せやな!」










裏側に行ったけどやっぱり風が強い



まぁ、飛ぶ程度じゃないけど





「夜空のおいしそう」



「これ、あげる!あーんして」





「やった!……あーん」




ぱくっ




「どう?」



「おいしいわ、ありがとう」



「お母さん自慢の玉子焼きだからね!」



ふふーんとどや顔をする私




「じゃあ、私のもあげるわ」



スッとメロンパンが目の前に出される


そのまま頬張った






パク





にやにやーと七海が笑っていた



な、なにや……




「ん、おいしいよ」



「でしょう?……夜空、お砂糖いっぱいね」





口の回りが甘そうね、って言って



七海の顔がゆっくり近づいた












.











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