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3つの場合


うぐねえと、膝と今と鶴の短編




case 1


「う、うぐいす、だめだ」
「髭切は留守だ、この姉に身を任せていいんだぞ?」
「あ、あ、姉者に見つかったら」
今夜は不眠不休だ。
「だめ、だから……ぅん」
「ん、ふふ、うぶだなぁ」
たったのキスひとつで、顔も耳も真っ赤だ。とろりと色気を含んだ片目にとらわれて、膝丸はふるりと身震いした。
期待じゃない。期待などしていない。だって姉者じゃない。だけど、もうひとりの姉のように、大好きな鶯。
「……うぅ」
「楽しいなぁ、ひよこ丸をいじめるのは」
「ひざまるだ」
「わざとだ。かわいいな」
「鶯までも……!」

「続くなら僕も仲間に入っていい? うんうん、いいよね。今日はいっそう楽しめそうだなあ」



case 2

「鶯ねえさま!」
「今、そんなに急いで走ると危ないぞ。どうした?」
「みてください! ひゃくてんです!」
100、と赤文字で書かれたテスト用紙を広げた今は誇らしげだ。鶯は微笑ましく、今の頭を撫でて褒めてやった。
「今は勉強も頑張ってえらいな」
頭を撫でられた今は、先ほどの勢いはどこへやら、どこかもどかしげに、はずかしげに、テスト用紙で半分顔を隠してしまう。少し視線をうろうろさせて、ちいさな声で言う。
「……ごほうび、ください」
鶯は、ばちり、と目を瞬く。褒美か、そうだなぁ。
「手元には何もないなぁ。何がほしい?」
「今度の、おやすみ、いっしょにケーキがたべたいです」
抹茶のティラミスがおいしいってお店があって、鶯ねえさま、お抹茶すきだから、だから、だから。たどたどしく話す今は、眉を下げておろおろとしている。
鶯は笑った。今は断られるかと不安に目を見開いたけれど、ぽん、と頭を撫でる手はやさしかった。
「ふふ、覚えていてくれたんだな。そうだな……日曜でいいか? ついでに茶葉を買いに行きたいんだが、連れ回しては褒美ではくなってしまうか」
「いきます! ぼくもおなじお茶っぱがほしいです!」
あなたがすきなものは、なんでも知りたいから。
言葉にはしなかったけれど、今はうれしくてうれしくてどうにかなりそうだった。思わず口実のテスト用紙を握りしめていて、もったいないぞ、と鶯がきれいに開いてくれたのだった。



case 3

「なぁ、つる」
「きみは最中に喋るのが好きだなぁ」
「だって、ん……」
愛撫を続けたままお喋りな口を塞ぐと、鶯はおとなしく目を閉じる。しばらく口付け合ってから、惜しむように唇を離す。意外にも、鶯の方が唇がさみしそうだ。
「で、なんだった?」
「んー……」
国永の首に手が回される。国永の頭の上には、クエスチョンマークが浮かんだままだ。
「口がうるさいほうが、唇を塞ぎたくなるだろう?」
「……そういうのはな、遠回しに言うんじゃない」

余計に可愛く見えて困るだろう。
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それはおしまいの

今薬今(R18)





今に、触れて欲しいと言われたその日。彼女の涙と小さな身体を抱きしめて、全部、全部叶えてやりたいと思った。彼女には叶わぬことが多すぎて、そして自分には背負えるものがあまりにも少なく、隣にいることしかできない。友人であり続けることーー友人の関係を超えても、手を離さずに繋いでやることしか、できやしないのだ。


今はするすると制服を脱ぎ、惜しげも無く白い肌を晒す。そこに羞恥などはなく、まるで、懺悔をしているかのようだった。
生まれたままの姿で広いベッドに横たわる今は、ぼんやりと虚空を見つめている。髪を下ろすと普段の幼さが少しなりを潜め、未発達な身体と諦観な表情は不釣り合いで、まるで知らない少女のようだった。
となりで寝てくれるだけでも、いいですから。
動けないでいる俺に悲しげに目配せをして、ベッドに横たわった。そして、現在。
覚悟を決める。色気もなにもないパーカーを脱ぎ捨て、くるぶし丈のジーンズを靴下ごと脱いだ。いい加減やめろと姉妹に言われたスポーツブラを脱ぐ。……裸に、なる。
ベッドに膝を乗せると、柔らかくて滑りそうになった。その気配に気づいた今が少し驚いたようにこちらを見る。目があった。それからまじまじと見られ、自分が裸であることを思い出す。
「……あんまり見るなよ」
「だって、びっくりして……」
互いに、なんだかそわそわする。少しおかしくなって笑うと、張り詰めた空気が柔らかくなった。

陽を知らないような真白い肌。小さな肩。まだ膨らみかけたくらいの胸。この幼い身体は、もう、男にひらかれてしまった。彼女を女にした、顔も知らぬ男を、ひどく恨めしく思う。どうしてこの幼い身体に、そんな無体を強いることができようか。
考え込んで黙っていると、今は少し怯えた顔をしていた。いけない、安心させてやるつもりだったのに。深く息を吸い、笑みを作る。頭を撫でてやると、今は安心したように息をついた。
「……どうしたらいい?」
「うーん……つるつるしたお人形だとおもえばいいかな……」
人形。例えだとしても、それは悲しく響いた。そんなことをいうな。例え無意識だとしても、おまえは人形なんかじゃないと、教えてやりたかった。いまからそれを教えよう。その肌は、ちゃんとあたたかいのだと。
片手で胸を包む。そのやわらかさにひどく胸が高鳴った。目を閉じた今の耳が少し赤い。そうっと揉むと、ふにふにした。手触りが気持ちよくて何度か続けると、手の中で小さな粒が主張してくる。
「………ん……」
「……嫌じゃないか?」
「いやじゃないです、でも、へんなかんじがします……」
互いの呼吸が浅い。ゆっくり続けていると、指の腹が突起を掠ってしまって、今が声を上げた。
「あっ……」
ぴく、と小さい肩が跳ねる。咄嗟に手を離して覗き込むと、今の顔はは真っ赤になっていた。
「あ、いや、悪い……だ、大丈夫か?」
今は唇を噛んだまま視線をうろうろさせている。ひと呼吸おいて、今の手がそろそろと俺の胸に触れてきた。おずおず揉んだり、撫でたりする。そのうちに、ぴり、となんともいえない刺激が走り、さっきの今と同じように肩が跳ねた。
「……そうだな……へんな感じだな」
「うん……」
頬を染めて目を逸らして、なんだか、それもへんな感じだ。しばらくそうして、同時に目が合う。今の目は潤んでいた。たぶん、自分の目も。

キスをした。
唇が触れて、離れて、もう一度、触れた。



あれから、触れ合いは続いている。放課後、今が薬研の手を握って指を絡めると、決まって今の部屋に行った。制服を脱がし合い、行われる秘め事。
触れるだけのキスをしてから、そっと互いの肌に手を這わせるのだった。

「今……! も、やだ、って、言ってんのに……っ」
「だって、薬研がかわいいから」
「っ……ばか」
胸の突起を遊ばれて、薬研の身体は不規則に跳ねる。今はどうやらその反応が好きらしく、また、薬研は胸が一等に敏感であることが発覚し、毎回、しつこいほどに胸を弄ぶことをやめられない。
小さな手には収まらない胸をやわやわと揉んで、そこをゆびで擦って、きゅっとつまんで、たまにすこしだけ強くして。それだけで、おもしろいほどに感じてしまう、女の子の身体。
「んぅ……っ、あ、んッ……やめ……」
真っ赤な顔で、涙目になっている薬研を見ると、ますますやめられない。みんなが知る格好良い薬研はここにはいなくて、いまは、とっても可愛い女の子で、そんな薬研を知っているのは、自分だけなのだ。
「ま、て、やだ……っん……!」
びくん、びくんと薬研の腰が跳ねる。薬研は唇を噛んで声を抑えた。淡い絶頂。こんなことをするのは今が初めてだけれど、こんなに感じてしまうようになったのは、絶対に今のせいだ。
今は頬を上気させ、満足げに笑う。蕩けた目の縁にちゅっとキスをして、そうっと腹を撫でながら下に手をやった。中心に中指を這わせると、シーツに滴りそうなほどの愛液でいっぱいだ。ほう、とため息をついてしまった。
「わ……とろとろです」
「言うな……っ」
「だいじょうぶです、ぼくも」
薬研の手を取り、秘めた場所に触れさせる。そこは濡れているはずだ。ぬる、と今の秘所に触れた薬研はますます赤くなる。その赤いほっぺたに、またキスをする。そのまま唇を塞げば、行き場をなくした薬研の手は今の肩に触れた。

向かい合って座り、互いの性感に触れる。
「ま、て、今、まって」
陰毛まで濡れそぼった薬研のそこは小さく主張している。蜜を塗りつけてくるくる擦ると、おもしろいほど身体が跳ね上がった。
「ひッ、あ、」
「やげん、かわいいです」
「………ッ」
跳ねる身体を抑えながら、薬研は意地を張るように今のそこに触れた。無毛なそこに触れるのは、どこか背徳感があり、それが余計に胸を高鳴らせる。見つからないくらい小さな陰核を見つけ、自分がされたのと同じように、愛液を撫でるように塗りつける。
「ぅん……っ、やげん」
「いま……っ、や、あ……ッ」
「は、あぅ、う、やげん、やげんっ……」
深くまでは触れない。″女の子″を愛でるだけ。蕩けあった視線を交わし、どちらからともなくキスをして、空いた手を繋ぐ。指を絡めて、何度も唇を食んで、時々舌を絡ませて、その間もゆびは止めないで。
「ンッ……あ、あ、だめだ、ストップ……!」
「ふぁ、いいです、ぼくも、あっ、ぁ」
「いま、も、だめぇ……、あ、アッ……!」
「んんんっ、ぁう、やげんっ、ふぁあっ……」
揃ってびくびくと震え、熱く短い吐息をはきながら、絡めた指を強く握る。脱力感に包まれたまま、唇を合わせる。深く口付けると、溜まった唾液がくちゅりと音を立てた。

薬研は疲れ果てたように広いベッドに身を投げ出していた。羞恥心はなりを潜め、裸のまま仰向けに転がる。性を知ったばかりの少女には、この触れ合いは刺激が強い。
今はそんな薬研を見て笑った。あんなにはずかしそうにしていたのに。自分だけが知る薬研は、もうすっかり引っ込んでしまった。
「薬研がぼくのものになればいいのになあ」
今も隣に転がる。ぼうっとしていた薬研は、今の言葉の意味を測りかねた。
「ぼくだけの薬研になればいいのに」
薬研をひとりじめできたらいいのに。
「……そういうこと」
「ほかのひとになんていいません。ぼくは薬研だけが好きですから」
無邪気な笑顔は、時に毒だ。薬研の胸は高鳴り、耳が、目の奥が熱くなる。そんな願い、こっちの方が叶いやしない。好きだなんて言葉も、人に触れることのなかったこの少女にとっては、親愛の形だろう。きっとそうなのだ。
「ばか」
「なんで、すぐばかっていうんですか!」
膨らんだ頬を指でつつくと空気が抜けて、今はさらにいじけた。頭をわしゃわしゃ撫でてやると、こども扱いはきらいだと言われた。

恋なんてしたことがない。したことがないのに、恋をさせないでくれと、好きの形が変わらぬようにと願う。
それは、もう遅いと知りながら。
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Datura

▼いちごちゃんルート




いつまでも消えない傷というのはあって、痛んだり痛まなかったりするが、そこに確かに存在している。それを見て見ぬ振りができるようになり、剰えそれが日に日に上手くなって行くことを、大人になるというのだと、いつからか人は理解する。誰に教えられずとも。一期は思案しながら、目の前の白い身体をそっと撫でた。
「鶯殿、」
「あぁ、一期、……」
1LDKの部屋は狭く、置いてあるベッドだってシングルのそれがひとつきりだ。この部屋の主が死ぬほど無頓着なせいで物が少ないから手狭に感じたりしないだけで、殆どガラスケースの生き物も同じだった。
羊水のように生ぬるい空気に浸りながら、一期と鶯は度々触れ合い、混ざり合う。ふたりの秘密を分け合うように、口づけをしては舌を絡めて、それを引っ張り出して吸い上げて。唾液で服が汚れるのも構わないで、鶯の瞳を覗き込めば、与えられる快にわかりやすく蕩けた目がある。
「苦しくありませんか」
「平気だ、だから、」
もっと。
ぐいと引き倒され、今度は一期が口内を弄られる番だった。もどかしげに身体を揺らすのは自分か彼女か、境目も曖昧になる程酩酊する意識の中で、一期は器用に鶯の衣服を剥ぐ。
朝には寝坊助なこの人を起こして、ふたりの好みが違うから少し面倒でも紅茶と緑茶を淹れて。それさえあれば朝食は何でもいいなんて言うから、しつこく作り続けた卵焼きはいつしか彼女のお気に入りになって。そうやって少しずつ、少しずつ、一期は鶯の特別になったのだ。一期には想像もつかない場所で傷だらけになっていた美しい鳥を、助けたい。それがただの逃避でもいい。逃げることが必ずしも悪で、悪手ではないことを教えてくれたのは、他ならぬ鶯なのだ。
「はぅ、うう、あ、あッ」
「さあもっとよく、足を開いて……そう、よく見せてください」
瞳と同じくらい涙に濡れた花弁を開いて指を沈めると、鶯は堪らなくなってかぶりを振る。きもちいい、だめになる。内から外から刺激を与えてやると、それだけですぐに果を見てしまう。普段はおっとりと穏やかに笑み、茶と一期の料理を可愛らしく咀嚼するだけの口が、今は閉じることも忘れ、端からは涎を垂らして淫らに喘ぐばかりだ。
それでいい。
貴女の望みを妨げる万事は、この私が夢想に変えてみせる。
「いちご、」
「はい、鶯殿」
「いちご、すきだ」
「ええ、私も。愛しておりますよ
夢現の世迷言でも、夢でなければこちらが現実だ。
不気味な月も禍つ鶴も、あらゆる現実が私の前では霧霞。一期は鶯を追い立て、絶頂の彼方に泣き震える鶯を抱きしめ、うっとりと囁いた。
「私は、貴女が望んだ『普通《せかい》』。どんなことをしても、きっと、貴女のお側にいますから
一期の言葉を聞いてか聞かずか、鶯は悦楽の余韻冷めやらぬ顔で、幸せそうに頷いた。
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Eli, eli, lema sabachthani?

▼不穏な吉光姉妹


保冷剤を拝借して、感覚がなくなるまで耳を冷やした。病院に行かずとも出来ると書いてあったから、小さな端末の中の画面を参考に、ひたすらに冷やす。麻酔の代わりだから、しっかりやらないと痛い目を見る。一期は感覚がなくなる前に襲い来る、人体の正しい警鐘めいた痛みに顔をしかめながら、手の中のピアスを眺めた。

「……鶯殿?」
「やあ、一期」
図書館には彼女がいる。一期の方から会いに行くのが常であったけれど、本日は稀有な日らしい。エントランス前のベンチに、鶯友成は腰掛けていた。一期の姿を認めると、彼女は傍らの紙袋を持って側に来やる。
「待っていたんだよ」
「わ、わたしをですか?」
「他に誰がいるんだ?」
綻ぶように笑う彼女は相変わらず美しく愛らしい。この際理由などどうでもよいか。彼女が一期のために時間を割いてくれた。この事実だけで、天にも昇る心地心地だった。
「そう、これを渡そうと思って」
「え、」
鶯は手に持っていた手のひら大の紙袋を、そっと一期に手渡した。返されるようなものが何かあっただろうか?首をかしげるばかりの一期を鶯は珍しく感情もあらわに楽しそうな瞳で早く早くと急かす。封を開けてみれば、それはピアスだった。赤い薔薇。一期の瞳の色と同じだ、鶯はそう言って、うっとりするように笑んだ。
「これは……」
「可愛いだろう。見た瞬間お前の顔が浮かんでな、これは贈らねばならないと思ったんだ」
「あ、ありがとうございます……!」
一期は熱くなる目頭を押さえ、それから紙袋を抱きしめた。
貴女の肚の中には、私の永遠の愛が。そして貴女からは、私の体を貫く愛が。ちらりと彼女の肚のあたりに目をやれば、鶯は察したのか、照れ臭そうに笑って腹を撫でた。
幸せだった。

体を刺し貫くことになんの躊躇いもなかった。彼女がくれたものだから。それ以外に理由や意義などない。空けよと命じられたのであれば一も二もなく従うし、よしんばそんな意図など無かったとしても、結果論だ。穴を開けなければ彼女の愛を身につけられないというのなら、一期に迷いは一切なかった。
安全ピンを耳たぶに刺す。痛みがあるような、ないような。冷え切った真っ赤な耳たぶはもはや感覚を機能させず、無気力に鉄の棘を受けいれている。滴る赤い血は微々たるもので、少しばかり戦々恐々としていた気持ちもとたんに拍子抜けした。
背後の扉がひらいた。
「いちねえ、なにやってんだ」
「ああ、薬研、おかえり」
「じゃ、なくて、耳……ッ」
「これかい?鶯殿がピアスをくださったんだ。つけたいけれど私には穴が開いていなくてね、病院を待つのも億劫で、それなら自分で開けてやれと思ったんだよ」

家に帰ると、品行方正を絵に描いたような姉が自傷していた。大げさに思われるかもしれないが、字面としてはこう言う他ない。
血の滴る耳を恍惚とした表情で撫でながら、鏡を見つめる姉はまさしく狂信者だ。図書館に巣食う無貌の女神を崇め奉る無辜の民。薬研は努めて平静を装いながら、淡々と聞かせる。
「そいつで無事済むならかまわねぇが、化膿したら病院行けよ」
うんわかっているよ、上の空の返事にため息が出る。
救われているのに報われない。
愛しているのに恋われない。
つくづく似た者同士の自分たちが、それでも決定的に違っているのは、その深度であろう。
「……いちねえ」
分かり合えない。
薬研の信じる宗教と、姉の信じる宗教は違う。前者は友愛、後者は恋。
「ふふ、鶯殿……」
姉と似たものに形を変えつつある自分の宗教には見ないふりをしたくなるほど、一期の抱えるそれは醜悪で、苛烈で、そして美しかった。

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