3月11日以降、日本は大規模な転換期に入った様に思われる。
そのせいか、あちこちでとても恐い噂や予言めいた話を耳にする。
丁度一週間前、プライベートでごたごたがあり、ちいとばかし揉め、小さな気づきに至ってことは終息。色々疲れてしまったので、その日予定していた”サバト(土曜日の集まり)”に参加出来ず、「2ヶ月連続で休んじゃったね〜(先月は12日だったので、震災でアウト)」等と姉と話していたら、電話をもらった。
丁度サバトに参加最中のはずの時間だった。
電話を下さったAさん、とても躊躇しつつも話して下さった。今、マジで原発がヤバイことと、更なる巨大な地震が東京を襲おうとしているということ―。
「こんな話をして不安を煽るだけかもしれないし、迷ったんだけど、言わないと後悔する気がして…。」
Aさんはそう言って、すぐに埼玉を出て西か南へ避難する様に薦めて下さった。
正直、言われてえらい怖かった。えっ?地震また来るの?なんで?もういいじゃん!…という心境。
Aさんの話に寄ると、非常に優れた予知能力を持つB氏(3月11日の巨大地震も予知。生まれ持った予知能力の上に、30年にも及ぶ地震研究成果を元に、電磁波を計測しつつ、理論的な裏付けを取りながら予測されている。)からの緊急メッセージで、近々原発が爆発し、メルトダウンを開始。関東一帯が放射能に汚染され、何十年も人の住めない地域となる。更に、巨大地震が東京を襲うのだという。
原発がヤバイというのは他でも言われていた。私も決して自分とこだけは大丈夫!等と思っていたわけではない。
しかし、こうもはっきり耳にするとマジで背筋が冷たくなった。
「この話を聞いてどうするかは、みらちゃんの判断に任せるし、信じなくてもいい。けど、出来ることなら逃げて欲しい。」
物凄く心配して下さったAさん。有り難いことではあったが、電話を切った後、姉みけーらと二人して考え込んでしまった。
まず、避難するにしても行く場所がない。広島に親戚はいるが、彼等にも事情がある。
Aさんの話では、原発が爆発して放射線が撒き散らされても政府は避難指示を出さずに屋内退避を指示するだけだという。
なので、屋内退避を言われたら、すぐに西か南(出来れば海外)へ逃げて欲しいということだ。
確かに広島に親戚はいる。だが、もしそうなれば東京で生活している従兄弟夫婦なんかもいるし、私達が世話になれる余裕などあるはずがない。
お金があればなんとかホテル等に滞在出来るだろうが、そんなマネーありゃしまへん(笑)。更に、行った先でどーするの?
「そこが問題だよ。働かなきゃならないし、このご時世で仕事なんかそうそう見つからないよ。」
みけーらは逃げた後のことを考えていた。そして私も、一人だけ逃げられないと思った。
年老いた両親。母子家庭で、みんなで働いて家計を支えている妹一家。
みけーらにも彼氏がいるし、それらを置いて行かれない。
取りあえず、妹せっしーを呼び出し、彼女の意見も聞くことにした。
せっしーは思ったより冷静に話を聞いていた。そして最初のひとこと。
「それでかぁ…。なんか最近会社がやけに静かなんだよね〜。社員さんが少ない。」
彼女は某通信系の会社に出向しているのだが、ここのところ社内の人が少ない上に、あまりニュースが入って来ないらしい。
その上、就活を理由に突然仕事をやめる子や、田舎へ帰ったきり出社せず、連絡もつかなくなったバイトちゃんなんかがいるというのだ。
B氏の予言を裏付ける様な事象の数々。しかし、私らの結論はあっさり出た。
―動かない。政府が避難を指示するなら致し方ないが、行く所も無い私達は、ここにいるしかない―
そう言えば去年最後のサバトの時、日本のこれからについて師匠がこんな話をしていた。
―日本はこれから経済的にも民族的にも窮地に陥る。その為に、中国の属国になることで、安泰を図ろうとする輩が出て来る。
だが、もしもそうなれば日本は徐々に死んで行き、30年後には無くなるだろう―。
この話を聞いていたある女性は、ではどうしたらいいのか。海外に逃げればいいのか?と質問した。
師匠は首を振って答えた。
―外国は更に厳しい状況を迎えることになる―。
Aさんのお話を聞いた時、正直師匠の言葉がずっしりあったせいか、世界中の何処にも逃げ場などないのではないか、と思った。地震から、放射能から逃げられても、問題は別の姿をとって現れて来る。
それからやっぱり私にとって最大の動機は、〇さんの存在だった。
彼は東京在住だ。彼もきっと出て行かないだろう。もちろん、守るべきものがある人だから、出なきゃいけない時は出て行くだろうが、不安や噂に惑わされて行動する人ではないと思う。
前向きでありながら、常に冷静な彼のいる関東に、私もいたいのだ。
三姉妹会議は、もしも大地震が起きた際に取るべき行動と、心構えを取り決めて終了した。
放射能のことは気にしても仕方ない。元々被爆者の子供だ(父は広島の原爆で被災。)。遺伝子は既に刻印済み(笑)。
ちなみに私達は、この話を両親には伝えなかった。もしも不安を訴える様なら、その時両親だけ広島にお願いしよう―。私達はそう決めたのだった。
しかし、話し合いですっかり腹の据わった気分でいた私達は、その後Aさんに薦められてフォローに入ったBさんのツイートで、恐怖を味わうことに。
Bさんは、地震が起きると思われる場所の電磁波を計測し、数値が高いと地震注意報なるものを発令してらっしゃる。
彼の予報は、彼に備わった予知能力を基本に、それに科学的な裏付けを行って公表されている様だ。しかし、彼は熱意のあまり、使われる言葉が時として厳しいものになりがちだった。
そのBさんがついこの間出された【大地震警報】なるものは、本当に怖かった。
Bさんはしきりに”準備してください”と繰り返していた。予想されるマグニチュードは8。最大震度7だという。時間は48時間以内。
私は動揺し、誰かにこれを伝えなければならないのではないかと思ってしまった。自分も怖いが大好きな人達が恐ろしい思いをしたり、傷ついたり、いなくなってしまうのは耐えられない。
Aさんも、きっとこんな気持ちで私に連絡を下さったのだろう。
私は空を見上げ、耳を澄ました。おかしな雲は見えなかったが、静かで鳥のさえずりすら聴かれない。時々遠くでカラスと思しき声が小さく響いているくらいだった。
恐怖と不安が私の心を支配し始めたその時だった。
ツイッターでたまたま目にした、シドニー在住のある方のブログを読んだのだが、そこにこんなことが記されていたのだ。
シドニーに住むヨーロッパからやって来たオカマのじい様方が、日本の為に熱く熱く、夜な夜な血圧上げて祈って下さっているというのだ。
”オカマ”のじい様達が…、縁もゆかりもない私達の為に、一つになって祈り続けてくれている…。
私は泣いた。泣けて泣けて仕方がなかった。
祈られていたのに、こんなにも祈られていたのに、何故私は不安になったりしたのだろう。
私も祈ろう。日本を…いや、世界を、地球を愛してくれているガイアの為に!
私は早速そのシドニーのオカマじい様達が行っているお祈りプロジェクト”お鎮まりジャパン!”に参加することにした。マゼンタの祈りで日本と大地を癒そう!
そうして時々、揺れたりはしたものの、Bさんの予測した巨大地震は起きることなく、48時間は過ぎたのだった―。
そしてその後、ツイッターから追い出されてしまったBさんは、予言が外れたと、とてつもなく激しい非難にさらされたらしい。それまで神様の様に彼にすがって来ていた人達の、恐ろしいまでの変貌振り。
予言が外れた!どうしてくれる!
仕事も放り出して避難したのに!責任を取れ!
大地震が来なかったことは喜ぶべきことだ。それなのに、怒り狂う人々がいる。
何故こんなことになるのだろう。
そして、何故予言は外れたのだろう。外れてしまうのに、何故予言は与えられたのだろう。
予言とは何なのだろう。
私はこのことについて、この一週間色々考えることになった。
(つづく)