おかしい……今回のSSは書き始めたのが5月の頭だったはずだ……!!
某ニコ動画でキーワード『祐一 キョン』で検索した『祐一なキョン』シリーズがツボでした☆特に孤島症候群ネタ(笑)
ハ「開けてよ有希!私達はSOS団の仲間でしょ!?」
→ハルヒ&長門押し問答
→長門の頑固っぷりにハルヒうなだれる
→キョンが扉の前に立つ
キ「長門……」
キ「結婚しよ『ガチャ(長門、ドアオープン)』……早いな(汗)」
……いい仕事してくれたぜ、杉田さんよ……ww
アルバイト始めました。塾の講師。けれども月給が2万越えねえ……orz
そんなわけで、長編前にリハビリ兼ねて短編SS。↑のネタに使われた、キョンの異作品同声優体Y・A氏とキョンはどっちが散財激しいがやろ?
【早朝の逢瀬】
金は天下の回り物。誰がそんなことを言い始めたのかは興味一辺倒もなく知らないが、なかなかに的を得た言葉だと思う。幾ら貯えを持ったとしても金は世の中を巡らない限り景気を良くしてくれなどしない。
いつか見たどっかのテレビ局調べのリポートによると、最近の若者はお金を手に入れても、まずは貯金に走る傾向があるのだとか。それがこの国のほとんどの若者に当てはまるとするのなら、経済状況がそれほどに裕福でも貧しくもない一般家庭の男子学生の中では、俺は金を天下に回している方だと言えるだろう。何せ、ほぼ必ずといっていいほど週に1度は学生5人分の食事代を一身に背負うのだ。それも忌々しいことに、俺自身は先程述べた通り財産は貯えるタイプでありたいというのにだ。
つまり、何が言いたいのかというと、
「金がない……」
そういうことである。俺は今、自宅の部屋にて預金通帳とにらめっこ中だ。週1のペースで綺麗に減っていく残高を見ていては、もう溜め息をつかざるを得ない。畜生、ハルヒの奴め、うざったいルール作りやがって。金は天下の回り物だが俺の財産はSOS団の回し物じゃねえんだぞ!
……仕方ない、いくらまだ高校生とはいえ、『友人付き合いで金欠だから小遣いくれ』だなんて親にせびる駄目人間なことはしたくない。せめて収支の赤字を減らすためにも、バイトするか……
リビングに降りて、我が家の権力者に相談することにした。
「なぁ母さん」
親父じゃないのは仕様だ。
「ん、何?」
「バイトしようと思うんだけど……」
「了承」
早っ!?
明日にはバイトの求人誌を入手しようと考えながら、部屋に戻る。そうだ、バイトといえば古泉の野郎に相談するのもいいかもしれん。メールしてみるか。
『バイトしようと思うんだが、いい案はないか?』
『貴方のSOS団員としての活動時間が減れば世界の危機ですが?』
返信早いな。つーか話飛躍しすぎじゃねえか。
『金がねえんだよ、おいそれと親にたかりたくねえんだ』
『機関から幾らでも出しますよ? 貴方の役割を考えればそれくらいの報酬は正当なものでしょう』
『俺は真っ当に生きたいんだよ』
『仕方ありませんね、では……』
「はぁっ、はぁ……あー畜生、眠い!」
俺は今、凄まじい眠気と戦いながら自転車で走っている。
あの後、古泉のアドバイスで決めたアルバイトは新聞配達だった。古泉曰わくこれなら放課後のSOS団の活動に支障がなく、機関の手助けで夕刊紙の配達免除でも変わらない給料が貰えるとのこと。
そんなわけで俺は朝の街を暗い内から疾走する羽目になった。ちなみに、ハルヒやクラスの連中には秘密にするつもりである。当然、俺が金を稼いでるなどとハルヒにバレれば今以上の出費を要求されかねないからだ。
自転車であるので、そう遠くまでは行かない。しかし、課せられたルートを走っていた時ふと気付いた。
……ああ、ここら辺、長門のマンションの近くか。
しかもルートを確認すると、マンションの住人の内の何人かも新聞をとっている。だが、長門の分はないようだ。まあ不思議ではないが。色んな意味で必要なさそうだし。
マンションの各部屋のポストに新聞を放り込んだ後、俺は次の場所に向かった。
学校にて早起きにより強制発生する眠気との格闘法を模索しつつハルヒにバレないように過ごすこと数日。いつものように自転車を走らせて新聞を配っていると、
「……ん?」
長門のマンションの出入り口の前に誰か立っていた。エントランスの薄暗い光に照らされてはいるものの、逆光でよく見えない。
よく近付いて見てみると、
「………………」
……長門だった。相変わらずの無表情な顔、まだ朝っぱらにもかかわらず制服姿。とりあえず挨拶するとしよう。
「よう長門、おはよう。今日はどうしたんだ?」
「………………」
微動だにしない。俺をジッと見つめてくるだけ。どうしたんだ、どっか行くのか?
「…………(フル)」
出掛けるわけではないらしい。ところで、反応はもう少し大きくした方がいいと思うぞ。まあいい、出掛けないのならどうして着替えてここにいるんだ?
「…………あなたが、」
ん、俺?
「ここ数日、あなたが普段のあなたの平均的な起床時間よりも数時間早く覚醒し、ここまで来ることは認知していた。しかし私に用事を持ち掛けるでもなくここを去っているので少々気になった」
あー、そうか。……長門なら大丈夫そうだな。
「………?」
首を傾げる長門に俺はこのアルバイトについての動機と内容を語り、あと最悪ハルヒにだけは隠してもらうよう告げた。長門は数ミリ頷き、
「……わかった。涼宮ハルヒには知らせない」
と約束してくれた。頼んだぜ。
「いい」
ああ。悪かったな、勘違いさせて。俺がここに来る時はいつもお前に厄介事を持ち込んでたからな、わざわざ起こしちまった。つーわけで、俺はしばらく朝はここまで来ることになるけど、気にしないでいつも通りの生活をしてくれて構わないぜ。
「問題ない」
ありがとよ。新聞をノルマ通りポストに入れた後、長門に一声かけて俺はマンションを後にした。
翌日、
「……………」
「……………」
昨日とほぼ同時刻、同じ服装、同じ無表情で同じ場所に長門は立っていた。
「……まぁ、なんだ、長門、おはよう」
「……………(コク)」
小さく小さく頷く長門。どうした、どっか行くのか?
「…………(フル)」
やっぱりか。俺は昨日言った通りバイト中だ、厄介事じゃないぞ?
「わかっている」
……そうか。じゃあ俺はまだ配達あるから。また学校でな。
「…………(コク)」
こんなよくわからないやり取りをし、俺はその場を後にした。
しかし、この次の日もその次の日も、毎日長門は同じ場所に立っていて、その度に俺達は同じような会話を繰り返した。別に飽きたとか鬱陶しいなどと言いたいわけでは全くもってないのだが、意図がわからない。
逢瀬を繰り返すこと数日、意を決して(意を決するようなことでもないが)俺は長門に尋ねることにした。
「おはよう、長門」
「…………(コク)」
相変わらずの小さな首肯。新聞をポストに入れながら尋ねる。
「あのさ、長門。どうして毎日こんな早朝からここに立ってるんだ?」
「………迷惑だった?」
傍目から見れば単なる疑問のような返事。俺から見ればわかるが、ほんの少しだけ不安そうな表情。思わず苦笑する。
「そんなわけないだろう、仲間だろうが俺達は。仲間と朝に会えることの何が迷惑だっていうんだ?」
まあ、古泉みたく話をするだけなのに無駄に顔を近付けてくるようなことは勘弁だが。
「……そう……」
ああ、だから気にするな。
「わかった」
おう。で、結局何のために起きてるんだ?
「…………秘密」
少しばかりの沈黙の後、はぐらかす長門。どことなくいつぞやの『禁則事項』ジョークの雰囲気に似ていた。だから、追及する必要性はないだろう、そう思った。
「そうか。何をしたいのかは知らんが、体に気を付けろよ?」
「(コクン)…………また、」
「ん?」
「また、学校で」
「……ああ、またな」
長門からこの台詞を聞くのは、バイト始めてから……初めてじゃないか? 少しだけ驚きながらも、俺は胸が温かくなるのを感じ、顔を緩ませながら返事を返した。
その場を後にし、じきに入るであろう給料の額やその(SOS団関連以外での)使い道などを考えながら、俺は残りの新聞の配達を続けた。
――たまには長門あたりに本でも買ってみるかな――
ここ数日、彼は学校の大多数の生徒よりも早く起床し、1人でこの町を走っている。その間、彼と顔を合わせる者はほぼ皆無。つまり、彼が家族以外で1日の最初に顔を合わせるのは……私。
その事実に気付いた時――胸が少しだけ温かくなり、顔も僅かながら緩んだのがわかった。理由こそよくわからないが、これは有機生命体でいうところの『嬉しい』という感情だろう。
少しだけ、涼宮ハルヒに対する優越感。彼女こそ彼に最も近い存在。けれど――この早朝の時間だけは、譲らない。
明日こそは、私の方から『おはよう』を言ってみよう。彼にそう言われた時の私が嬉しいように、彼にとってもそれは嬉しいことなのだと願いながら――
おまけ?
「よう長門、今日も早いな」
「(コクン)………疲れている?」
「ん、まあ流石に早起きを続けるのは辛いさ。それに合わせた睡眠時間をとれるとは限らないからな」
「そう……これ、使用する?」
「? 何だそりゃ?」
「栄養剤」
「……何とかビタンD?」
「……強力」
終わり
おまけの栄養剤は「アレ」です。さあ、次は長編かな?
……教育実習怖いよ―……
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ニヤニヤが止まりませんよ。
長門らしいほんのりとした作品ありがとうございました。