うぁあああギリギリ…!
今日はいい夫婦の日だったので何か描いて上げたかったのですが、ちょっと時間が無かったので下書きだけだったssを手直ししてきました。手抜きでごめんなさい。
アラコン現パロで夫婦ネタです。取り急ぎなのでまた修正します。
(ちなみに、本文中のアラミスの台詞は私の中で歳の差カップルの歳上に言わせたい台詞No.1です)
ss本文は追記です。
冬の足音が近付き始めた、ある昼下がりのお話。
【 andante 】
―――…キィ
ドアが小さく軋む音に鼓動が跳ねる。
そっと部屋の中を覗くと、こちらに背を見せて机に向かっているアラミスさんの姿が見えた。
嗚呼、まだ終わらないのだ。と、予想はしていたのに少し残念な気持ちが心を覆う。
トレイに乗せたふたつのココアを少し眺めて、軽く頭を振って気持ちを切り替えた。
もう一度ドアノブに手を掛ける。
こんな時、お気に入りの薄桃色をしたタオル地の内履きは足音を消してくれる。邪魔にならないように静かに。そっと部屋に入ってソファに腰かけた。
トレイをテーブルに置き、揃いのマグカップから私のものを手に取る。
暖かい湯気の立つマグカップを両の手で包んだ時、視界の片隅にちらついた光。
その正体は私の左手の薬指にある、細い銀色。すっかり馴染んでしまったそれを、特別意識することも今では少なくなった。
けれど、やっぱりそれは私を赤面させるのに十分で、
火照った意識を誤魔化すように、何気なく視線をアラミスさんに向ける。
「(………あ、)」
不意に感じた既視感。
最後にアラミスさんの背中をこうして眺めたのは、何時だったろう。
思い出の渚に、波が立つ。
先に好きになったのは、きっと私だった。
細身に見える貴方の背中が、本当はとても広いことを知っているのは、その後ろ姿をずっと見つめてきたから。
黙々と仕事をこなすその、書類を捲る指先、伏せられた睫の奥にある思慮深い色を湛えた瞳、纏められた少し癖のある青い髪、
そのどれもが私の憧れで、届くなんて思いもしなかったもの。
だから、こうしてこの人の背中を見つめるのには馴れていたはずだった。
それなのに。
嗚呼、でも。見ているだけでは、嫌。
そんな思いが心に湧き出てしまうのは、どうしてだろう。
それが我が侭な願いだとわかっているから、言葉はけして唇から零れることはないのだけれど。それでもどこかで、貴方が気づいてくれることを望んでいる自分がいる。貴方の
その優しい声を聞かせてほしい。
暖かな指先で、触れて、ほしい。
貴方のことを知る度に、好きになる度に、私は我が侭になっていく。
ねぇ、アラミスさん
此方を向いてください。
どうかその瞳に、私を
―――カタリ、
ペンが机に置かれた音。
軽く軋んだ音をたてて回転する椅子。
振り向いたアラミスさんは、何時もと同じ優しい笑みを浮かべていた。流れるような仕草で両手を広げる。
唇から零れた声。
「おいで」
柔らかく微笑んだその瞳に、吸い込まれてゆくような錯覚がして。
嗚呼、ずるい。
そうやって貴方は
また私から全てを奪っていってしまう。
胸に飛び込んだ私に、くすくすと笑う声がなんだかとても悔しかったから、
「アラミス、さん」
重ねた唇を離した時、貴方はどんな顔をしているのかしら?
2010-11-22 23:59