朝の8時から、けたたましく機械音が鳴っている。
どうやらスグ目の前のお家で、お庭の木の剪定をしているようだ。

田舎の人の朝は早いね。
現役時代にこんな音で目覚めたら…
怒り狂ってるところだわ。
(上野トリで起床12時/笑)

時々、お庭のお手入れをしているお向かいさん。
かなり煩い音だけど、普段なら気にしない。
きっとコレが田舎の普通だと思って。

でも今日は朝からレッスンしたいんだよ、私ゃ。
モニターの音、聞こえるかなぁ。気が散るよなぁ…

その様子を伺いに何となく窓の外を見てみる。

…え?
無い。切っちゃった?
桜の木…。

私の家の窓からも見える、細いけれど背の高い桜の木。
4月末に引っ越してきたので、咲くのを今年は楽しみにしていた。
少し歩けば桜並木もあるけれど、家から見られるその環境を贅沢に思って楽しみにしていた。

呼ばれて来たであろう、その作業員さんについ声をかけてしまう。
「桜の木、切っちゃったんですね…」
「も少し咲かせてからだと、暑くなっちゃうからね」

満開まであと10日くらい?
いや、暑くないだろうよ!!
せめてそのもう少しを待ってくれ。まだ夏じゃないんだ。
桜を愛する日本の心は!?

その桜の幹と枝に絡みついている、でっかい団子になったツタの塊の方が私は気になるぞ。
そっちをキレイに外してくれ。

秋に枯葉が落ちてきて、畑の掃除が大変だと、
ブロッコリーのおばあちゃんがそういえば愚痴をこぼしていた。
他のお家の桜だから文句は言いにくいって。

そう、全ては他人様の桜。
おいらの楽しみなんて知ったこっちゃない。
それぞれの色んな事情があるんだろう。
けど、けど…

無残に運ばれていくその桜の枝には、一分咲き程度の白い花がチラチラ見えている。
何だか胸が苦しい。

悲しみと怒りと色んな気持ちが頭をぐるぐるして、しばらく立ち尽くしていた。

作業はまだ続いている。
あぁ、機械音が煩い。