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◆ハオside
「ホロホロの奴、こんな所に痕つけてる。」
不機嫌そうに鏡の中から見返す自分の首元にはくっきりと鬱血の痕。
昨日の情事の際に、繋がったまま執拗に首元を責められた所為だ。
制服のシャツでは隠せやしない。信じられない。
「…今日会ったら…、絶対ぶん殴ってやる。」
◆ホロホロside
「よぉ。」
いつもよりも更にかったるそうに歩くハオの背中を叩く。
弟の方は朝練でとうの昔に学校にいるというのに、この兄はいつもマイペースだ。
「暑苦しいから話しかけるなよ」
心底嫌そうに視線だけを向けた奴は、そのまま歩き出した。
「ゲッ、ハオが制服のボタン締めてやがる。絶対今日槍が降るな。」
「………誰の、せいだと思ってる。」
「??」
そういったハオの襟元はきっちり一番上まで閉じられていて何の事だか良く分からなかった。
何となく俺が悪いんだろうけど、奴は意地っ張りだから自分からは言ってこないだろうしなぁ。
とりあえず。
「ほら、カレーパン一個持ってきたからこれで機嫌直せよ。」
いつもなら”カレーパンは邪道”と豪語する奴を唸らせた、珠玉の一品。
呻いた後に「貰ってやる」と不遜な態度でそれをひったくったハオの様子を見る。
軽くオレの頭を殴り、これで許してやると、そっぽ向いた。
一体なんなんだ。
*************
ホロホロはキスマークを付けた自覚無し。
気持ちよくなってきて、腰を使いながら無意識に吸い付いちゃったんでしょう。
でも案外、噛み付いたりもされたりするのも、
案外気持ちが良くって好きなんでしょうね。はおさん。
(本人は認めたがりませんが)
ワットは自分が逝くべき場所へと、魂が引かれるのを感じていた。
現世では霞の様になった自分を、その子は確かに見止めた。
リゼルグが良く話していた通り。おそらくジャパニーズだろう黒髪の子供。
巨大な赤い化け物を連れて、満天の星の下、それは屋根の上に立っていた。
リゼルグに寄り添うようにいたあの妖精に比べれば、なんと凶悪な姿だろう。
それでも不思議と恐怖は感じない。
死ぬことは怖くなかったし、すでに死んだ身の僕が何を恐れる?
だから、最後にと思い、声をかけてみたんだ。
「君がリゼルグの言ってた”星マント”の子??」
「……ワット・ハドソンか。」
少しの間を開けて漏れたのは僕の名前。
マントの少年はその大きな怪物の手に座った。
近くによって隣へ座ってみる。
「へぇ、凄いや!どうして知っているの?僕の名前」
「王なら、なんでも知っているよ。」
覗き込んだその途端目をそらす。
その幼い容姿とリゼルグの話は到底僕の中では結びつかず、少しおかしかった。
「お前は馬鹿だな。殺される事は想像しなかったのか?」
驚いた。本当に全部知ってるんだ。
「うん、わかってた心算だった。だけどリゼルグには悪いことしちゃったなぁ」
「?」
「僕は人を殺したし、自分が死んでも良かったんだ。
だからあんなに人を…あんなに自分を大切にできるリゼルグが羨ましいんだ。
・・・多分理解はされないかもしれないけどね。」
「僕は殺されても良かったけれど、リゼルグには手を汚して欲しくなかったっていう僕の勝手」
「怪我させちゃったのは僕のせいだ。」
ぽつりぽつりと話していた僕の話が途切れると、
マントの少年は、分からないと首を振った。
「うん。そうだね」
「聞かないのか?僕が何故リゼルグの両親を殺したのか。」
「僕が聞いても無意味でしょう?
倫理的な事を僕の口から語る資格も無いし。
でも少し興味はあるよ。その赤い怪物が何なのか、どうしてリゼルグを助けるのか。」
オノックスさん達が、この怪物に焼かれたのを少しだけ見た。
まるでリゼルグを守るように放たれた炎はリゼルグ以外の物を全て飲み込んだ。
「君たちが目指すシャーマンファイトと何か関係があるんでしょう?」
「!!」
「…リゼルグ先生の助手、したかったなぁ。
君と会ったって言ったらどんな顔するかなぁ。」
「ワット・ハドソン。もうお前は逝った方が良いだろう。
僕にはお前が良く理解できない。」
「……直観だけど、君とリゼルグは似てるかもしれない」
「どういう意味だ。」
「わからない」
頬を掻いて見せれば、その子は肩を竦めた。
今度こそ体が引かれる。
ふわりとロンドンの空へ浮かぶ体。
いつもならば雨や霧がかかっているというのに、今日だけは晴れた夜空。
眼下に広がるロンドンの夜景、ビック・ベン。
リゼルグが病院に運ばれていく。
君はきっと、人殺しなんかしなくたって生きていけるよ。
あの子もきっと本当は悪い人じゃないかもしれない。
********
ハオとワット君。
この世に執着なんかないのかもしれないワット君が唯一楽しみにしていた探偵事務所ができなかったのが残念。
ハオは理解できない人の一人であろうワット君。
平安時代にこういう人が一人いたら麻葉は変わってただろうという思いを込めて。