やや続き物です。
桜が咲き誇り、春風に花弁が舞う。
庭に1人、麻葉童子は立っていた。
「乙破千代、そなたもこちらへ来ると良い。」
笑う麻葉童子の隣へ行く。
「桜を見ると切なくなる」と呟き、寂しげに目を伏せた。
「どうしたんだ?」
「…感傷に浸っていた」
「お前なぁ、ただのガキの癖に色々考えすぎなんだよ。」
「乙破千代が考えなさすぎなのだ!」
むくれた麻葉童子の頭を押さえて、どうどうと宥めれば「僕は馬では無い!」と手をはねのけた。
時折こうして見せる子供な部分が、どうしようも無く気になり仕方が無かった。
頭に手を置いてぐしゃぐしゃと掻き回すと「これ!乙破千代やめよ!」と可愛くない文句を言うので、更に抱き込み脇を擽る。
「乙破千代…!ははっ、も…放せっ」
とうとう擽り過ぎて涙目で音を上げた麻葉童子を解放し、「もっと楽しいことしようぜ」と笑えば、彼は素直に頷いた。
「俺は飴を食べてみたいなァ」
「何だそれは?」
「甘くて美味いらしいぜ。」
「なら、次の仕事の報酬は飴にして貰おう。」
そう麻葉童子は、綻ぶように笑ったのだった。
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ほのぼの。乙破千代人間時ってどんな人だったんだろうか。
ハオさんはふてぶてしいけど、麻葉は素直で可愛いといいな。いいな。
会話のみ。ラスボス戦前。
「心を開いても、受け入れてもらえなかったボクたちはどこで暮らせばよかったんだ?」
「なら、俺のとこにくればいい」
「な…っ、ふざけるな!」
「ふざけてなんかいない。居場所が無いなら、俺たちのところにこいよ。」
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むしろこのくらいの勢いがあっても良かったと思う今日この頃。
ロイドは男前であると信じて止まない。
「キミに支配されたくない。寧ろボクが支配してやりたいと気が付いた時には、流石に自分がどうかしてると思ったけどね」
「……」
「キミを許してあげる。キミの為じゃなく、キミに執着するこの気持ちと向き合う為に。」
「この仕事に就いて、嫌な人間をいやと言う程見てきた…どうしようも救えない奴が居る事も良く解っている。」
淡々と話すリゼルグ。
「だから君なんて可愛いもんさ。こうして罪悪感にかられてボクの様子を伺ってる。今も」
慈しむ様に目を細めたリゼルグは「そして、昔も」と付け足した。
凝視したまま動かない…否、動けないままでいるハオを、リゼルグは「馬鹿だね」と笑う。
ボクもキミも。
憎しみか愛しさか分からない執着心を抱えて、今日も生きていく。
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書きかけ小説が、電源落ちて消えてしまった記念ΩÅΩ;←
今日の夜にはUpするはずだったリゼハオのモトネタ。
ううぅ…(悶絶)
「おや目覚めたか。乙破千代」
目覚めたのは布団の中だった。
声の元を辿ると、傍らの文机に頬杖をついた少年が笑う。
「これは、どうした事だ。」
「そなたは生きているということだ。おいで、飯を用意している。」
すいっと立ち上がる彼。
不思議な事に、あんなに重かった身体は軽く飛び起きる事が出来る。
どういう事だ?訳が分からない。
「ふふ、飯を食べたら話をしようか」
用意された飯を1人大急ぎで掻き込む。粥に山菜が添えられた質素なものだったが、暖かいそれは旨かった。
食べ終えたのもそこそこに、彼へ向き直る。
「僕の名前は麻葉童子。鬼の子だ。そなたも見えておるのだろう?」
「ああ、鬼だらけじゃねぇかこの屋敷。」
「その割に肝の座った男だ。先程まで魑魅魍魎共に食われかけていたのが別人の様だ。」
ころころと笑う麻葉童子と名乗る少年。
鬼だらけの屋敷でただひとり人間の形をした彼。
どう見ても鬼とは思えないが。
「ここは礼を言うべきなんだろうが、お前さんはどうして俺なんかを助けた?まさか食うつもりじゃねぇだろうな」
「ハハッ、まさか。喰うならもっと柔らかい子供にするさ。……と冗談はさておき、そなたこの屋敷で働いてみないか。何せ、鬼共は人間には見えないから困るのだ。行くところが無いなら此処に住めば良い」
四の五の言える立場ではないし、願ってもいない好条件だった。
こうして俺は、この屋敷の使用人となった。
奴は『鬼の子』と名乗ったが、要は少し変わった力を持つ普通の人間だった。
鈴を鳴らすように笑う様子は、可憐と言う言葉すら似合う。
時折貴族からの依頼を受け、鬼を従え出ていくとその後は米や酒など食料を持ちかえる。
鬼は鬼で制すのだと教えてくれた彼は、鬼殺しを生業としているのだと理解した。
出会ったあの時、魑魅魍魎を追い払った不思議な力は万能では無く、痛手を追って帰ることもあった。
そんな時にいつも従えている鬼の姿は見えず、彼は俺の手を使うのだった。
しかし…悪いとは思いつつも、矢張り盗賊として生きてきた時と同じように、家の中を物色し盗める物を探した。
彼は恩人だ。
盗賊として生きる上で義理など捨ててしまったと思っていたのに。
その良心が、行動に移す事を止めていた。
こうしてしばらく時は過ぎていった。
◆平安パラレル
人間だった頃の乙破千代×麻葉童子
盗賊として生きていく身の上として、相応しい最後だと思った。
身動きを取れなくなった冬の日、雪が静かに積もり始め、嗚呼…此処で死ぬのだと思った。
「腹が減っているのか?」
いつの間にか十位の年齢だろうか、少年が顔の前に居たのだ。
手入れされた長い髪や着物は清潔で貴族かと思ったが、回りに牛車は無い。
否、貴族はでは無い。
何よりも彼は、その背後に大勢の鬼を従えていたのだから。
驚きも束の間、無表情な彼は再度「腹が減っているのかと聞いておる。」と繰り返した。
妖怪だろうか、こんな明るい時間に粋狂な妖怪だ。
彼は俺の答えを待った。
腹が減りすぎてもう動けない情けない俺を食べても、腹の足しにはなるまい。
何より質問は、俺の腹が減っているかどうかだった。
「腹ァ減りすぎて死にかけてるよ」
頷いた事を確認したその少年が手を上げると、後ろに控えた鬼が俺を抱え上げたのだ。
「ならば来やれ。」
先程死を覚悟したばかりと言うのに、今はもうこの鬼が恐ろしく堪らない。
みっともなく生にしがみ付く俺は彼の目にどう映るのか。
前を歩く少年が振り返った。
「お前は、少し眠ると良い。」
翳された少年の手が暖かく、意識が遠退く。
もしかしたら俺は死んだのかもしれない。寒さも痛みも感じない。
綺麗な死神が迎えに来たのだから、案外悪くない最期だ。
「お前名前は何というのだ?」
「乙破千代、だ」
***********
はい、続きます。
乙破千代も麻葉も、口調が良くわかりません(-ω-)