篠岡誕SSS
2009/3/25
3月25日。
桜が咲くにはまだ少々早い頃合だというのに雑草はたくましくも生えてくる。
「なんかほとんど1年中闘ってる気がするなー」
練習手伝いやら何やらの合間を縫って、篠岡は今日も草取りである。
現在練習は昼休みだが、篠岡は既に昼食を摂り終えていた。
少し前に昼休みに入るという声が聞こえたから、皆は今頃コンビニか部室だろう。
「もう少し取ったら飲み物の準備しなきゃねー」
一人ごちながら草を抜いていると、ふと日が翳った。
え、と呟いて顔を上げると、ペットボトルを持った水谷が立っている。
「あれ、お昼は?」
「これから食べるよー」
水谷がちらりと振り向いた先を見ると、栄口と巣山がいた。
ああなるほどと思ったところで、目の前にペットボトルが差し出される。
「はいこれ、どーぞー」
「わー、いいの?」
「有志のワリカンだから大丈夫ー」
小さく吹き出す篠岡。
「え、冗談だってば。んーと、あとね、」
水谷がしゃがみ、声をひそめる。
「これも」
言って袋を差し出した。
「こっちはなーに?」
「こっちはねー、」
へらりと笑う水谷。
「誕生日プレゼント。大したものじゃなくて悪いんだけど」
え、と再び呟いて固まった篠岡にペットボトルと袋を持たせると、水谷は「じゃーねー」と手を振っていってしまった。
暫しの後、我に返ってあわあわし始める篠岡。
「お、お礼言えてないし!」
後でお礼言ってこなきゃと思いつつ、かさりと袋を開ける。
見慣れた日焼け止めのチューブが2本。今はともかく、これからの時期の必需品だ。
「……助かる……っ!」
ありがとうありがとうと内心呟き、篠岡は水谷が行ってしまった方に目を向ける。
昼休みのうちに、チョコの大袋あたりを調達してばら撒いてこようと決意した。
――篠岡ハピバ!
― ― ― ― ― ― ―
誰がどう言おうとNOT水千代。
誕生日担当あみだくじをやったらまさかの水谷担当になってしまったという。