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マイペース更新モットーの「紫亜乃」も2011年9月14日をもちまして二周年となりました!
一周年の記念はもう若干諦めかけているので、書きたくなったら書いちゃうぞーくらいの気分になってます。
これからもマイペースにのろのろのんびりほんわかと続けていけたらいいなあと思っています。


今回の二周年記念小説は「お祝い」から連想される題で小話をいくつか、とさせていただきました。
なんだか短くてすみません;




1.クラッカー(チェスアー)


あれ、ない。
アーチェは先ほどまで机の上に置いてあったはずのクラッカーが忽然と姿を消していたのを見て驚いた。
どこにやってしまったんだろう。机に置きっぱなしの雑誌やタオルや図鑑を退けたり端へ追いやりながら、それを探してみる。
色とりどりのクラッカーはこの間、街へ降りたときに雑貨屋で買ったものだった。買ったあとでなにに使えばいいのか迷ったのだがカレンダーを見て答えはすぐに出た。

「ちぇー。せっかくクレス達が来たらぱぁーんってして驚かせてあげようと思ったのにさぁ」

どこいっちゃったんだろ。アーチェは勢いをつけて机に突っ伏し、口を最大限に尖らせると鼻で溜め息を吐いた。


見つからないクラッカー同様、その日彼らが彼女を訪ねてくることはなかった。


***


どこで油売ってんだか。

カレンダーについた花丸マークの日から数週間が経っている。
アーチェはその花丸を睨み付けながら腕を組んでみた。
頭に浮かんでくるのは2つ。
1つ目は、会いたいんだからあたしから会いに行けばいいじゃん。なんていう軽い気持ちで、2つ目は、あたしはあんなに待ったんだからあいつらが迎えに来るべきでしょ、早く来なさいよ。自分からは行きたくないじゃん。なんていう苛立ち。
会いたいけど、自分から会いに行くのは負けたようで嫌だった。
アーチェは待ち人を待つ人であって待ち人ではないのだ。自分に待たれているのは相手たちであって自分ではない。


「あーっ、もう! 早く来なさいよバカっ」

近くにあった段ボール箱を蹴った。ぼっと鈍い音を立てて段ボール箱が口を開きながら蹴り上げられた。

「―あ」

開いた箱の口から見覚えのある色が次々と落ちてくる。

「そうだ…。あたし、ここに閉まってたんだっけ」

色とりどりのクラッカーを辺りに撒き散らして床に叩きつけられた段ボール箱の傍らにしゃがみこんでみた。

…1つ、試しに鳴らしてみようか。

水色のクラッカーに手を伸ばし、何の理由もなく糸を指にくるくると巻いた。

コンコンと戸を叩く音。ざわざわと聞こえる懐かしい声。

まさか。手に力がこもり、ぐっと糸を引っ張った。

「アーチェ! 僕だけど、覚えてる?」

ぱぁんと弾ける音。懐かしい声。
戸越しだからこもって聞こえるけど、間違いない赤いバンダナのクレスの声だ。

「………おいおい何の音だよ。もしかしてあいつ料理でもしてんのか?」
「え…? いえ、今の音は料理というよりもお祝いのときなど鳴らす―――」

懐かしくて、愛しくて、ずっと、ずっと待っていた声。
聞きたくて、触れたくて、一目でもいいから見たくて。

散らかった床から黄色とピンクのクラッカーを取るとアーチェは玄関に駆け出した。

「クラッカーではありませんか?」




「大正解ー!! ぱふぱふ〜っ。ちなみにチェスター、あんたはあとで覚えてなさいよ!」

アーチェさん特製フルーツポンチでもお見舞いしちゃうんだからっ。




2.ケーキ(ロイコレ)

今、私はすごくドキドキしてる。(あぁどうしよう。もしも受け取ってもらえなかったら)
波打つ心臓を鎮めようと深呼吸をなんどもしてみたけどなんの意味もなかった。
だいじょぶ、だいじょぶだよ。
そう自分に言い聞かせてみても溢れ出す想いはどんどん増して、体温が上がっていくのが分かる。

早く、来ないかなぁ…。


あなたを待つ。ただずっと。
温かい笑顔で、こっちに駆けてきてくれるだろうあなたを。


***


「お誕生おめでとう!」

ケーキをね、作ってみたんだ。ジーニアスのに比べたらまだまだ全然ダメなんだけどね…。


えっと…あのね、ロイドの誕生日を祝えるのは今年までだから。(おめでとうって言えるのももう、終わりなんだね)




3.旅行(クラミラ)

「どこか行きたいところはあるか」
クラースは淹れたてのコーヒーの香りに微笑みながらそう訊いてみた。
彼の目の前に座っていたミラルドはコーヒーカップを両手で持ち、揺れる濃い茶色の水面を見ながら、そうねと思案顔になる。
机の上には数冊の旅行冊子。三泊四日で八万ガルド! ヴァルハラを堪能しよう! なんて見出しがそれぞれについている。
「クラースのお仲間さんに会えるところ」
「…………は?」
突然なにを言い出すのだとクラースは呆けた声を出した。
「アセリア暦4306年とか?」
「おいおいミラルド―」
「ふふっ。冗談よ。そんなに焦らなくたって良いでしょう? それともなにかやましいことでもあったの?」
「はぁ!? だ、断じてないぞ。やましいことなんか」
声を荒げたクラースの様子にミラルドの眉がピクリと動いた。
「…なにその態度。もしかして本当にやましいことでもあったんじゃ…!」
がたり、ミラルドが椅子から立ち上がりクラースを睨み付ける。
「な、ないと言ってるだろう!」

―その夜、男の悲痛な叫びがユークリッド村にこだましたという。

「怪しい…もしかしてあっちでもエッチな本買った訳じゃないでしょうね? あるなら即刻処分、出しなさい!」




4.入学(ではないけれど)(高佐)

緊張するな。ごくりと唾を飲み込んだ。
今日からここの所属か…。交番勤務から警視庁の仲間入り…警官になろうと決意した当初からの夢が叶ったんだ。
どきどきしている。

おそるおそるドアノブに手を伸ば―

「あら、なにか用?」
「うわわあああ! すいません、怪しいものじゃないです!」

――ああもう僕、いったいなにしてるんだろう。

これじゃあ怪しい人じゃないか。





5.出産(クレミン)

お疲れさま! だ、大丈夫かい?ミント。

「はい…大丈夫ですよ。クレスさん。それよりもほら……見て」

うわぁ…金髪だ。ミントの色だね。

「クレスさんもじゃないですか」

え? あ、あはは。そ、それもそっか…。で、でもサラサラ加減とかミントにそっくりだよ、きっと。

「…ありがとうございます。でも、口元とか輪郭とかはどことなくクレスさんに似てませんか?」

そ、そうかなぁ…?
あ、あのさミント。

「はい?」

な、名前なんだけどね。この子、女の子なんだよね?

「えぇ、そうですよ。もしかして、名前…考えてくださってたんですか?」

ミントが頑張ってるんだから僕もなにかこの子のためにしようと思って…えっと…ダメ、だったかな?

「いいえ! そんな、すごく嬉しいです!」

…そうか。良かった…。

「クレスさん、この子の名前を聞かせてください」

…………メリル。

「…え?」

あ、あのさ、えっと、本当にごめん、ミントに了解もとってないのに! ダメだったら言って、ミントが決めてくれていい、ただ―

「…ただ?」

その、僕らを巡り会わせてくれたのは君のお母さんなんだ。あの地下牢で、君のお母さんは僕を助けてくれた。そして、君を助けてくれと僕に頼んできた。
僕は、僕らの子供に………大切な、大切な人の名前をつけたいと思ったんだ。
…………ごめん。そんなの嫌かな?




「いいえ、とても―とても嬉しいです」



溢れてくる涙は、悲しい涙じゃなくて。


これ以上ない幸せを噛み締める、とても優しい涙。





一周年記念の小説は(の予定でした)

ロイコレ…贈り物
チェスアー…学園もの
ゼロしい…夫婦喧嘩
ジニプレ…劇の練習

まだ書けていないので、いつか書きたいなーみたいな。うーん、こんなサイトで大丈夫なんだろうか。
リクではなかったからいいかーって軽い気持ちでいます…。というかそれじゃないと押しつぶされそうで(なにに)


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