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―ナチラン・ネイトの城「玉座の間」 「久しぶりねミズキ。元気だった?」 「ああ、この通り。 城内環境が変わったと聞いたけど、大したことなさそうだね」 「今はつかの間の休息。これからまた慌ただしくなるわ。 ミズキだって、あの組織のことで大変なんでしょう?」 「いや、順序良く準備が進んだおかげで今は余裕なんだ。だからしばらく前にもらった姫の依頼を、代表のチームに引き受けさせようと思って――」 ミズキはサイクロンズとシャークズの紹介をした。 ミズキが名前を言うごとに、玉座にいる姫は前に乗り出して、一人一人の顔を凝視してゆく。 「……安心して任せられそうね」 そう言った姫が席を立つと、一行に向かって数歩前進する。 「私がこの国を治めし姫・リンカと申します。かつて私は、緑の戦士としてミズキ達と行動を共にしていました。 どうかよろしくね」 コバルトグリーンの色をした瞳をもつナチランの姫・リンカの、内側に跳ねた艶やかな黒髪が揺れた。 「それで、本当に間違いありませんね? あなた方が私のお願いを聞いて下さるということで」 「おう!」 「ま、まま間違いないのでありまするでる…っ!」 「ずいぶん固まってんなー。大丈夫かー?」 「あなたはもう少し緊張しなさい!」 「うふ、マルーさん。あんまり固いと疲れてしまうわ。深呼吸して」 リンカが深く息を吸う動作をみせて、マルーに深呼吸を促す。 「すー……、ふー――」 「すー――」 「はぁ――」 「ふ〜――」 「お前らも固まってたのか」 「少しはほぐれたかしら。 じゃあ、今回の依頼内容をお話ししますね――」 姫が言うに、近頃「妖精が住む森」で、妖精の数が減少しているという。 それと同時に、この国の者とは思えない身なりの人間を見たとの目撃情報が入ったのだそう。 「その情報というのが、黒色のような茶色のような、汚ならしいローブを身にまとった二人組。 日に日にこの情報を持ち込む人が増えると同時に、妖精もめっきり見なくなったというから関連性があるとみて――」 「私たちに連絡をくれた」 「そう。 あと、ローブをまとった二人組、カゲの組織の一部だと思うの」 「カゲってあの、数年前に五大戦士が封印した、闇の存在のことですよね?」 「そう! 復活したらしいぜあいつら」 「復活!? そんなの聞いてないわ!」 「だって話してないもん。「宝石」しか」 「……もしかして私、またダマサれタ……」 ランシーが両手と両ひざをついてうなだれる。 「宝石を集めるのはホントだぞ? 宝石の中に、カゲを倒す力があるんだってウワサだからな!」 「……大丈夫なんですか?」 「大丈夫ですって姫さん! えーと、カゲの一部がーなんでしたっけ?」 「あ、はい――」 リッキーのあっけらかんとした様子に何とも言えない感情を持ちながらも、リンカは話を続けることにした。 「――カゲの組織の一部が犯人としか思えないの。まず妖精は、ある程度人に能がなくては、観ることも感じることも出来ない存在。でもあの者たちは特別。「光の存在を消す者」として能があるから、光の存在である妖精のことを察知できるの。 しかもこの国は妖精から恩恵を受けて成長してきた…そんな妖精を恨み、消そうとする者なんてこの国の民にいるはずがありません」 「私もそう思っていたんだ。 だからこそ、このチームを呼んだ」 ミズキが両隣にいるマルーとリッキーの肩に手を置く。 「まずこっちにいるサイクロンズには、既に三人の戦士が揃っている。 ソルジャー=ソードのマルー、マジシャン=ロッドのリンゴ、サポーター=ソードのボールだ」 「ええ、分かるわ。 あとはリュウさんね。私が寄付した槍を使ってくれて、嬉しいわ」 「これ、お姫さまが使ってたんですかー?」 「やっぱり彼の武器は王位に就いている姫さまのものだったんっすね! これは感激っす!」 「懐かしいわ。この槍でどんな試練でも乗り越えてきたもの。 その槍、風の技がやり易いでしょう? 刃に付いている宝石のおかげなのよ」 「へぇ〜」 「私が見た戦闘では、使い馴れている様子だったぞ」 「なら期待出来るわ。 もちろん三人も、頑張ってね」 「「 はい! 」」 「僕、頑張ります!」 「それで、そちら側がシャークズの皆さん 「そう! リーダーはこの俺、賢者のリツキさまだ! リッキーって呼ばれてるんだぞ」 「言われなくとも理解できます。あなたはこの集団のなかで一番目立っていた方ですから」 「それはうれしいぜ! んで、さっきうなだれてたのは大魔導師のランシーおねいさん」 「(なんだか、サイクロンズの紹介のときと比べて顔がこわばっているような……)」 「向こうが槍使いのブラスで、ハンター=ツインダガーのアスカ。みーんな俺の大切な仲間だ!」 「しかしながらこいつは、仲間をこき使うとんでもないやつだ」 「何言うんですかミズキさん!」 「あら? ミズキさんが言っていること、間違いじゃないわよ」 「全く自覚ないんっすねリーダーは。でも僕はそれでも付いていけるんっすよ? 一番頼れるのはやっぱりリーダーっすから!」 「残念なことに、どうしても憎めないのよね。アスカもそうでしょう?」 「…否定はしません」 「まぁ、このチームのリーダーは桁外れの詠唱速度だ。いつ唱えたか、私でも分からなかった。 他のメンバーも仕事が早い。実力はどのチームよりも上だ」 「というわけだから姫さん、俺たちにも期待してくれよな!」 「……では、シャークズの皆さんも、よろしくお願いします、ね?」 「任せてくれよな!」 「(ややっぱりお姫様の表情こわばってるじゃない! ほらもう目をそらした! これは確実に印象最悪だわ……)」 「大丈夫かランシー? またうなだれたりして」 「平気………話、続けてて下さい……」 「(こちらのチームは、本当に大丈夫なのかしら) ……さて、妖精が住む森は、この窓から見える、小さな湖を囲った森のことです」 そう言いながら、リンカは一行から見て左側の窓を指差す。 近くにいたシャークズが窓から覗き込むために駆け寄った。 「ほほーう。近そうだな!」 「案外、距離あるように見えるけど?」 「湖、きれいっすね!」 「私達にも見せて下さーい!」 「湖って、どれだけキレイなんですかー!?」 「僕も見たーい! アスカさんもおいでよー」 「既に三人が場所を記憶しています。見る必要はありません」 「でもキレイだって、言ってるよー?」 「森に入った時にでも見られます」 「そー? あ、前が空いたー」 「……あなたはいいんですか?」 「へ? 俺は、これから見れるし別にいいかなーって」 「そうですか」 「私はもう行くぞ。外で待っているからな」 「私も先に城を出ます。 リンカ姫様、いい報告をお持ち帰りいたします」 ミズキとアスカは玉座の間から出ていった。 「おい、アスカはどこ行ったんだ?」 「ミズキさんと一緒にここを出ましたよ」 「お、サンキュー! よしお前ら! 出発するぞ!」 リッキーの号令でシャークズの三人は玉座の間から離れる。 「マルー、もういいだろ? これからその森に向かうんだから」 「もうちょっとだけ!」 「ダ メ だ ! 他の人達を待たせるわけにはいかねぇだろ!」 「あ、あわわーっ!?」 マルーがボールに引きずられてゆく。 「……失礼しました!」 「また来ますねー! お姫さま〜」 こうして、サイクロンズも妖精が住む森へ向かった。 やがて、静かになった玉座の間に深いため息が響く。 「あのいい加減さといい、幼さといい、心配面が多々見えてしまって……落ち着いていられませんね、正直なところ。 ですけど、ミズキからはぶれない表情が見られたのですし、間違いはないのでしょうよね」 信じて待つしか、 ないようですね―― |
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