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「はいアスカさん、終わりましたよ。あとはじっくりお休みをとることです。分かりましたね?」 イロハ・シティの城で働く淑女と、同じ城の姫・ノルアにより、アスカの背中の火傷に処置が施された。 アスカは「はい」と返事をし、お礼を言った。 「ねえおばさん。アスカお姉さんはどのくらいお休みするの?」 「そうですね……最低でも数週間、長くてひと月――」 「そんなに待てないよ! 私、もっとアスカお姉さんと遊びたいのに!」 「いけませんノルア様。休まなくては、治るものも治りませんから」 「でも……」 「大丈夫ですよ、ノルア。ひと月なんて、あっという間です」 「本当?」 「はい。この樹の上で花が咲いて、その花が全部足下に落ちたら。その頃には私、元気いっぱいです」 「良かった! じゃあ私、この樹の花が咲くまで待ってる!」 「それがいいですよ」 ノルアにこう言って、アスカは樹に背を向けるように座り直した。 空はすでに茜色。太陽は沈みかけていた。 「(このシティに来てたった数日のはずなのに。何故だかここまでが、とても長かったような――)」 ふう。と、アスカは息を吐いた。 「あとは満月が出るだけ……」 「そうだね、アスカ!」 こう声をかけたのはマルーだった。彼女は、アスカがもたれる樹の丘のふもとからやって来ていた。 「隣に座ってもいいかな?」 「どうぞ」 「ケガの具合はどう? 少しは良くなった?」 「はい。おかげさまで楽になりました」 「それなら良かった!」 こう会話をしてしばらく、二人は静かに太陽を見送った。 それから少しして。 「あのねアスカ」 「はい。何でしょう」 「この樹を守ってくれてありがとう!」 「……何故、そのようなことを?」 「だって、アスカがいなかったら、私達が知らないうちに、この樹はなくなってたかもしれないからさ。だから、ありがとう!」 「……ありがとうを伝えるのは、私の方です」 「 ? 」 「私一人でしたら、守ることはできませんでした。これから咲く『幻想の花』も、今隣にいるノルアの笑顔も、この目で見ることはなかったでしょう。こうやっていられるのは、サイクロンズの皆さんのおかげです。ありがとうございます」 「当然だよ! 仲間のピンチだもん! 駆けつけなくっちゃ!」 「仲間……」 「うん!」と、屈託のない笑顔で返事をしたマルー。この頃、空はすっかり藍色に変わり、大きな星がちらほらと輝いていた。 「そうだっ、ノルアちゃんにもちゃんとありがとうを言わないと! 私達をここまで連れてきてくれたんだもん――あれ?」 お礼を言おうとしたマルーだったが、ノルアはこうべを垂れていた。 「無理もありません。ここからシティまで、何度も往復したのでしょうから……」 アスカはそっと、ノルアの頭を撫でた。 「ありがとう、ノルア」 あなたが「仲間」を 呼んでくれたから―― 「……お姉さん。私、えらい?」 「――はい、とっても!」 アスカとノルアは、互いに微笑んだ。 その光景を、満月の光が優しく包み込む――! 「二人共! 上を見て!」 「 !! これが――!」 「きれーい!」 ─━─━─━─━─ ――シューイチおじいさま へ おじいさまがいつも言っていた幻の花。昨日、ついに見ることができました! お日さまがしずんでから、ずーっと起きているのは大変だったけれど、まんまるで大きいお月さまが丘の上にのぼったときに目がさめて、頭の上で桃色の花がわあっといっぱいになりました! とっても感動しました! お花見を楽しんだあとは、幻の花が咲くまで守ってくれたお姉さん達と、花びら集めきょうそうをしました。とっても楽しかったです! その時に不思議だったのが、花びらは地面に落ちると消えちゃうけど、手のひらにあるときは消えないところです。なぜかはお世話係のおばちゃんが、教えてくれました。私たちの体に通っている魔法力が、魔法でできている花びらを、手のひらから消さないようにしているから、だそうです。 あと、もう一つ不思議なことがありました。 花びらをいくつか集めて、手でつつむと、お花の形をした宝石に変わったことです! とってもきれいなので、おじいさまの手紙の中に入れておきました。ぜったいに見てね! 「――おじいさまに、届くといいな」 「ノルア様。あの大きなかがり火に、シューイチ様に宛てた、お花の宝石入りの手紙を投げ入れるのです。そうすれば、手紙は火と一緒に空まで上って、シューイチ様に届きますよ」 「はい――」 ノルアはうなづくと、丁寧に封をされた手紙を、真っ赤なかがり火に向かって投げ入れた。 火は少し揺らめいて、手紙を少しずつ燃やしてゆく。 その様子を見てそれから、ノルアは空を仰いだ……。 「ノルアちゃんの手紙、届くといいね!」 「そうですね……」 「これで無事に四つ目の道具をゲットね!」 「まさか、ただの花びらが宝石みたいに固まるなんてな」 「すぐに報告しよーう」 「そうだね! フライトで、ファトバルに戻るよっ!」 Flag:5 へつづく! |
contents アースの風の戦士たち。 Flag:0(10) アースの風の戦士たち。 Flag:1(19) アースの風の戦士たち。 Flag:2(34) アースの風の戦士たち。 Flag:3(36) アースの風の戦士たち。 Flag:4(29) アースの風の戦士たち。 Flag:5(5) きゃらくたー絵。(0) そのた。(3) |
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