誰得? 我得!
一週間遅れだけどバレンタインネタ(ハザノエ・テルミュー) 2月21日 23:55

バレンタインを間近に控えたある日、ノエルは暗い表情で、ショッピングセンター前をうろうろしていた。
「どしたの、ノエるん?」
「マコト!?」
挙動不審な彼女にマコトが声をかける。その手には大量の荷物が抱えられていた。
「それ…」
「チョコだよー。うちの家族や友人・知人にプレゼント! 勿論ノエルのもあるからねー」
「あ、ありがとう…」
笑顔になるが、すぐまた浮かない表情に戻る。マコトはそんなノエルを元気づけようと、わざと明るい声で尋ねた。
「そういえばさー、ノエルはもう準備終わったの? うちの上司へのチョコ…」
さすがに最後らへんは小声になる。
「な、どうしてそれを…?」
「ふふん、アタシも諜報部の一員だからねー」
親友のノエルと、上司のハザマ。この2人がどうもアヤシイ事に、マコトは持ち前のカンで気付いていた。ハザマはいまいち胡散臭くて油断ならない男だが、ノエルが本当に彼を想っているのであれば…と、今は成り行きを見守っているところである。
「…作ってない。作らないかも」
「え?」
「だって…ハザマ大尉、料理上手いんだもん…」
どうにか聞き出した話によると、ハザマは以前、ノエルに手作りのカレーをご馳走してくれたことがあるらしい。
「すごく美味しかった。でも、それだけ上手に作れるなら、私の料理なんかじゃ満足出来ないんじゃないかって不安で…」
マコトが知る限り、ノエルは壊滅的に料理が下手である。そしてハザマは、そんな彼女の料理を美味しく頂ける極めて稀なる存在だった。
「心配すること、ないんじゃないかな。アタシが見た限り、ノエルの料理をあんなに美味しそうに食べる人、マイ以外じゃ大尉が始めてだもん」
「…そう、かな?」
「そうだよ〜、きっと小躍りして食べてくれるに決まってるって!」
親友の力強い励ましに、段々明るさが戻ってくるノエル。
「ありがとう…私、今からでも頑張ってみる!」
「ファイト、ノエるん!」
ノエルは笑顔で手を振ると、店内に駆け出していく。それを見送るマコトは複雑な気持ちでいっぱいだった。大事な親友と、あまり好ましく思えない上司の仲を取り持ってしまったからだ。
(うー…ノエルを悲しませたら許さないからね!)
無意味に握り拳を作るマコトだった。
 
バレンタイン当日。
「ハザマさん…どうぞ!」
ノエルが差し出したのは、緑色の泥っぽい「何か」であった。
「おや、これは…」
「抹茶チョコです。抹茶、駄目でしたか…?」
抹茶が駄目とかそれ以前に色々アウトな物体を目の前にしても、ハザマの笑顔は変わらない。
「どちらかといえば紅茶の方が好みですが…抹茶も大丈夫ですよ」
「そうですか」
ハザマは紅茶が好き…覚えておこうと密かに思うノエル。
「今、頂いてもよろしいですか?」
「どうぞ!」
「では…」
緑の泥をひとつまみし、口に運ぶ。もぐもぐと咀嚼し、満面の笑みを浮かべた。
「いや〜相変わらずノエル嬢の作る料理は素晴らしい!」
「良かったぁ…」
喜びと安堵のあまり、ちょっと涙が出てしまった。
「な、何も泣かなくても…」
「すみません…私、不安だったんです。ハザマさん料理上手いから、私の料理で本当に満足してくれるのか、って…」
「確かに、よく誉められます。でも…」
若干涙声になって俯くノエルを、ぎゅっと抱きしめる。
「私は自分の料理より、ノエルさんの作った料理の方が、ずーっと美味しいと思いますよ」
「ハザマ、さん…」
大きな手が、あやすようにノエルの頭を撫でる。
「ホワイトデーのお返しは、私の手作りお菓子をご馳走しましょうか?」
「うぅ…お願いします…」
泣いてしまったり、抱きしめられたり。嬉しいやら恥ずかしいやらで、そう返すのが精一杯なノエルであった。
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おまけ(テルミュー)
「全くどいつもこいつもバレンタインバレンタインって、菓子業界に踊らされた馬鹿ばっかだな」
「そう…」
「てなわけでクサナギ、俺様にチョコよこせ」
「散々非難しておいてチョコくれとかどういう了見なの? 貴方にあげるチョコなんてないから」
「それはそれ、これはこれだ。さっきからテメェがアホみたいに食ってる安売りマーブルチョコでいいからよこせよ」
「嫌。これは私が買ったの。欲しければ自分で買えば?」
「それじゃ意味ねぇんだよ!」
「知らない。邪魔しないで」
最後の一つをミューが口に放り込んだ、その時。
「むぐっ! う、ぅん…」
「ごちそうさん♪」
「うぅ〜…死ね!」

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