ハルと王子

 

先ほどから眩しい光を放っているのはなんだろうと、目の前でケーキを美味しそうに食べているハルを前髪のカーテン越しに観察する。きらきらと太陽の光に反射しているのは彼女が左手の人差し指にはめているビーズ細工の指輪だった。彼女によく似合う、薄紅色と蜂蜜色のビーズが大小入り混じってできている指輪に視線を送れば、勘の鈍い彼女も気づいたようで、「ああ、これですか?」とフォークを置き、右手の指でそっと、大切なものにするように、そっと撫でた。


「ツナさんたちばかり、リングをもっていて羨ましかったもので。女の子たちみんなで、作ったんです。実は色違いのお揃いで、皆持っているんですよ。」


ふふ、とハルは笑う。市販のものにしては凝ったデザインだと思ったのはそのせいか。それにしても彼女たちはこんなに器用だっただろうか。逡巡している自分の心をお見通しですよ。とでも言いたげにハルは先ほどよりも笑みを深くした。


「ルッスーリアさんに作り方を教わったんです。材料も揃えてくださって、手順事に丁寧に教えてくださるので、みんなで作れたんですよ。」
「よりによって彼奴かよ。あのオカマが最近上機嫌だと思ったら何をしてんだか。」
「なんですそのがっかりした顔は。失礼じゃないですか。」
「んー。いいんじゃない。それ、似合ってるし。ただ王子が気にくわないのは、なんで俺の分はないの?ってことだけだよ。」
「欲しいんですか?」
「・・・・・・」
「じゃあ今度、ルッスーリアさんにお願いしておいてあげますね。」
「・・・それならいらない。」
「なんなんですか、もう。」


不満げにとがらせたくちびるからため息を零すハルに「なんでわかんねぇかなぁ。」と小さく呟く。普段は大切なことさえ聞き逃すくせにこういうときだけこの女の耳はしっかり働いて「何がです?」と大きな目をこちらに向けた。ああ駄目だ。この顔は本当に気づいていない。鈍い。鈍すぎる。でも、この気持ちを口にしてやるつもりもない。不満があるなら気づいてご覧よ。


(俺はあんたが作ったものが、欲しいんだって。)

 







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