M.Mと骸


相手に刃を向けるということは自分も同じ目に合う可能性が生じるということであるのに、いつも奪う側でいる人たちはそんな単純なことにさえ気付かない。自分だけは特別なんて、そんな根拠もない自信はどこから来るのかしら。そんなことを考えながら組み敷いた男、それまで私の頭に銃を突き付けていた男の首筋にナイフをひた、と添えると先程までの勝ち誇った嘲笑は何処に消えたのか、男の歯がカチカチと音を立てる。狂ったリズムは耳障りで、それだけでこの男に対する価値は一気に下がった。こちらの命を狙った奴の命乞い等わざわざ聞いてやる義理はない。ナイフを握る手に力を込めると案の定懇願の言葉を並べ始めたから最も効果的だと思う方法で言葉を止めさせる。血飛沫を浴びたコートを見て後悔していると背後から見知らぬ男の声がした。

「相変わらず躊躇わないんですね」
「何を今更。それよりも覗き見なんて趣味が悪いわよ」

骸ちゃん、と青年の中にいるであろう腐れ縁の名を呼ぶと「ばれてしまいましたか」と少しも残念そうではない答えが返ってくる。分からないはずがないのだかそんな無駄な話をしても一銭の得にもならないから割愛する。

「それで、何の御用?」
「勿論依頼ですよ。引きうけて下さるのなら、ですが」

なんせボンゴレが絡むので。双方にとって鬼門の言葉を口にした骸ちゃんを殴ってやりたくなったけど身代わりを殴って手が痛むのは馬鹿馬鹿しいので止めた。「金額次第」短い返答に黒髪の青年はクフフ、と笑う。最初から引き受けるつもりで来ている癖に腹が立つ。汚れてしまったコートの代わりに気になった新作を買ってしまおう。代金は骸ちゃんに払わせればいい。そう考えると少しだけ気が晴れた。

 

 







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