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「どうしたのその傷」
「ひあっ」
驚かせないよう正面から声をかけたつもりだったのだが下を向いていた三浦は僕がそばに寄っていたのに気づかなかったようで(鈍いというか無防備というか困ったものだが)大袈裟すぎるんじゃないかというリアクションで飛び退いた。正直そんなに驚くことないんじゃないかと思ったがオーバーリアクションは彼女の特性ともいえることだったので受け流すことにして改めて手の甲にできた傷について尋ねると三浦はバツの悪そうな顔をして言い淀んだ。慌てて後ろに隠そうとする手を問答無用と掴んで確認すると赤い三本の線が白い肌にくっきりと浮かんでいた。
「なんだっけ、あの猫」
「瓜ちゃんです」
三浦は観念したように獄寺隼人の匣兵器の名前を告げた。主人と同じく気性が荒いあの猫は遊びに夢中になるとつい爪を出してしまうらしい。だけど悪気があるわけではないのだと三浦は必死に弁明する。加害者を庇うとはなんとも彼女らしい。
「そう」
「はい。次からはもう少し気をつけますから」
「わかっているなら僕がとやかく口をだすことではないね」
純粋だが愚かではない彼女ならば何度も同じことは繰り返さないだろう。ならば口煩く説教をする等ということは必要ない。そもそも僕が気にすることではなかったとどうしてこの行動にでてしまったのか今更疑問に思ったが、そんなこと本当に今更だ。
「雲雀さん?」
「おいで」
消毒をしっかりしておかないと腫れてしまうよ。と腕を引いて歩きだすと三浦が慌てて大丈夫です自分でできますのようなことを言ったが聞こえないふりをした。馬鹿げた仲間ごっこなんてうんざりだけどたまにはこういうのも悪くない。肩に乗ったヒバードが楽しそうに鳴いた。