ラルとスカル


不機嫌そうにコーヒーを啜っている見知った顔を見つけたときにはどうしようか考えたが(どこかの国の触らぬ神に祟りなしという言葉を思い出した)けれどここで会ったのも何かの縁だと腹を括る。「ラル」と呼びかけながら近寄ると彼女は整った顔を更に歪めた。感情を表に出し過ぎるなという彼女にしては珍しいなと思う。

「スカル、久しいな」
「どうしたんです」
「いや、大したことじゃない。ただ納得いかないだけだ」
「は?」
「なんでお前たちだけ身長が伸びるんだ」
「…先輩たちはもともと大きくなる遺伝子が入っているのかもしれませんし、俺は成長期だからだと思います」
「…不公平だ」
「ラル姐さんだって女性にしては背が高めだと思いますけど」
「………」
「それに男としては、好きな人より背が高くありたいんだと思いますよ」

黙り込んだラルを横目に、彼女の思い人の姿を思い起こす。金色と漆黒、青と赤。反発し惹かれあう二人は結構お似合いだと思うけれど、という言葉はなんだか悔しいので口には出さずに、代わりに当たり障りのない慰めの言葉を探すことにした。

 







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