要するに、気が付くと九割九分九厘の確率で誰か死んでいるという短篇作品集なのです。』より、バックアップとプロモーションを兼ねて最新作をば。

御覧あれーヽ(´∀`)ノ

4×9

 午前6時51分発の上り電車。人も疎らな内に貴方は乗り込み、決まって扉のすぐ横に腰を下ろす。
 車内ではいつも読書をしていて、貴方がいる景色だけは美しい朝そのもの。二日酔いのサラリーマンや、化粧乗りの悪いOLとは訳が違う。少しパーマ掛かった黒髪に白い肌、周囲と同じスーツでも貴方だけが美しい。
 貴方の愛読書は青空を背にした樹木が描かれた表紙のそれで、書店で同じものを探して何度も何度も読み返した。

 “愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない。”

 奥手で聡明な貴方が私に宛てたメッセージ。密やかな愛の言葉。
 これを読み取った私は、全身全霊の奉仕を以て貴方の愛に報いようと、そう心に決めたのよ。
 だからこそ貴方の元に手料理を届け、だからこそ貴方の光熱水料を払い、だからこそ貴方の家を掃除し、だからこそ貴方に付き纏う女を殺し、だからこそだからこそだからこそ貴方に尽くしたというのに。なのに。
 貴方はいつまで経っても私に振り向いてくれなくて、あまつさえあの女を想って涙を流すなんていくら何でも薄情だわ。僅かばかりでもいいから私も満足させてちょうだいよ。

 ──だから、ねえ? 私と死んで?

4×9
CHICな君に恋した
SICKな私を赦して


FIN.

第49作に因み、4×9(シック)と同じ音を持つCHICとSICKを絡めた小咄
要するにギャグ派生←

ちなみに。
被害者が読んでいた本は言わずもがな太宰治の『新樹の言葉』であり、毒婦が感銘を受けた言葉は「火の鳥」より三木朝太郎が番茶をがぶがぶ呑みながら吐いた長〜い台詞の一節。

以下、まさか酔っ払いが吐いたとは思えない長〜い台詞です/(^O^)\

「君には、手のつけられない横着なところがある。君は、君自身の苦悩に少し自惚れ持ち過ぎていやしないか? どうも、僕は、君を買いかぶりすぎていたようだ。君の苦しみなんざ、掌に針たてたくらいのもので、苦しいには、ちがいない、飛びあがるほど苦しいさ、けれども、それでわあわあ騒ぎまわったら、人は笑うね。はじめのうちこそ愛嬌にもなるが、そのうちに、人は、てんで相手にしない。そんなものに、かまっている余裕なんて、かなしいことには、いまの世の中の人たち、誰にもないのだ。僕は知っているよ。君の思っていることくらい、見透せないでたまるか。あたしは、虫けらだ。精一ぱいだ。命をあげる。ああ、信じてもらえないのかなあ。そうだろう? いずれ、そんなところだ。だけど、いいかい、真実というものは、心で思っているだけでは、どんなに深く思っていたって、どんなに固い覚悟を持っていたって、ただ、それだけでは、虚偽だ。いんちきだ。胸を割ってみせたいくらい、まっとうな愛情持っていたって、ただ、それだけで、だまっていたんじゃ、それは傲慢だ、いい気なもんだ、ひとりよがりだ。真実は、行為だ。愛情も、行為だ。表現のない真実なんて、ありゃしない。愛情は胸のうち、言葉以前、というのは、あれも結局、修辞じゃないか。だまっていたんじゃ、わからない、そう突放されても、それは、仕方のないことなんだ。真理は感ずるものじゃない。真理は、表現するものだ。時間をかけて、努力して、創りあげるものだ。愛情だって同じことだ。自身のしらじらしさや虚無を堪えて、やさしい挨拶送るところに、あやまりない愛情が在る。愛は、最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思っては、いけない。

ね?糞長いでしょ?(爆)
この後もぐだぐだ喋って高野幸代は女優に至るわけです。どうでもいいか。

ではでは。
風邪を振り返して嘔吐&欠勤&執筆できたからオーライ☆Akashiでした(^O^)/