Rainbow
2017.8.1 Tue 12:26
:現代パロ作品 旅
ヒヨコとカエル、仲良しこよし(旅・サンゾロ)
今日は、サンジだけ居残りとなった。
自主的な居残りだ。
ずっと欲しかった食材が入ったと聞いて、レストランでずっとその相手。
ゾロは、早々に帰宅していた。
曰く、
「邪魔をしたくないからな、アイツの楽しみだ」
菩薩の様な笑顔でそう言い、帰路に就いた。
そんな訳で、サンジはずっとその食材と共に過ごしていた。
時刻は丁度、1時を回った時。
「やっべ…夢中になってた…!」
午前様もいい所。
久し振りに…ゾロ以外で夢中になってしまっていたサンジである。
「は、早く帰らねえと…!」
サンジはコックコートを脱いで、普段着ている服に着替えて…戸締りをして、店を出た。
大慌てで、家に待たせているゾロの元へと帰る時。
丁度、深夜営業の酒屋の前を通る。
「…辛口の日本酒買って帰ろう…」
ゾロの好きなお酒でご機嫌取りを願い。
酒屋に入った。
時間は、2時。
ゾロはテーブルの上で…何かを作っていた。
「…ここ、で玉結び…で、完成!っと」
とん、と置いたのは…縫い包み。
旅をしていた頃の話だが、ゾロは縫い包み専門店でも働いた事があって。
そこで培った技術で…こうして、たまに縫い包みを作っていた。
「…カエル、完成っと」
カエルを両手で持ち、子供を高い高いする様に持ち上げて…クスリと笑う。
そして、ガサゴソ…何かを探して、それを出すと。
ヒヨコの縫い包みが、出て来た。
「あはは、並べるか」
2つの縫い包みを並べて、ゾロは一層笑みを深くする。
どちらの縫い包みもよく出来ていて…商品として売っても差し支えないであろう物であった。
「お前は…サンジだ」
ヒヨコを持ち上げて抱き締める。
そして、隣のカエルも持ち上げて。
「こっちは俺な」
ヒヨコと一緒に抱える。
幸せそうに寄り添う、ヒヨコとカエル。
「仲良しこよし、ってな♪」
幸せそうに微笑み、ヒヨコの頭を撫でる。
しかし、その瞳は少しだけ…寂しそうでもあった。
まだ、サンジは帰って来ていない。
「…おっせーなー…」
寂しい、なんて言葉が出そうになったが飲み込んだ。
待つのもまた、楽しいんだと言い聞かせて。
二つの縫い包みを抱えて突っ伏した。
その時。
「悪い!遅くなった!!」
聞きなれた声が、頭上から聞こえてくる。
バッ!と顔を上げると、申し訳なさそうな顔をした…ゾロの愛しい人の姿。
「……お帰り、お疲れさん」
慌てて帰って来た、そんな様子だったからこそ、ゾロはふわりと微笑んだ。
「酒買って来たから、二人で飲もうぜ?…ん?ゾロ、それなんだ?」
「酒?♪いいな♪…って、どれ?」
酒と聞いて上機嫌になったゾロだったが…サンジが興味を示した物が分からず首を傾げると。
「その縫い包み」
ハッとした。
テーブルに出しっぱなしの作った縫い包みの存在を忘れていた。
「あ…いや、これは…」
「…ヒヨコと、カエル?可愛いなぁ、何処かで買ってたのか?」
興味津々に問い掛けて来るサンジに口ごもる。
しかし、別に隠す必要もないと思い。
「…さっき、俺が作った奴…可愛いか?」
ゾロの言葉に、サンジは目を丸くする。
ゾロにそんなことが出来るとは思っても見なかったからである。
「…ゾロ、そんな事…出来たのか?」
「ん?…ああ、ぬいぐるみ工房で働いてた時があってな?そこで1から徹底的に教えてもらって…」
意外な事実に、サンジは驚いてばかりで。
「…俺と、お前って感じか?」
「…//」
しかし、ゾロの意図している事であろう物を敏感に察知して微笑みかける。
サンジは、ヒヨコのぬいぐるみを持って。
カエルのぬいぐるみを、ゾロに渡す。
「ヒヨコとカエル」
ゾロに渡したカエルのぬいぐるみに、ヒヨコのぬいぐるみを押し付けて。
「仲良しこよし、なんてな♪」
まるで、抱きしめ合っている様な雰囲気で。
そんな事を言われて。
ゾロは、顔を真っ赤にした。
その日から、大量のぬいぐるみをゾロは作っていた。
定期的に開催されるフリーマーケットに足を運び、其処で沢山のぬいぐるみを、安値で売り捌く。
ヒヨコとカエルのぬいぐるみを、マスコットにして。
END
追記に後書あり
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