ゴッサムにも雪は降る。冬場とも為ればある程度の降雪量で降り積もる雪だが、例外もある。理由は簡単、「あの男」がいるからだ。季節に関係無く、時間に関係無く、だ。

「諸君には申し訳ないとは思うが、此方も資金を必要とする身でね。融資を頼んでも首を縦に振って貰えないなら、致し方無いが強制的に援助頂いた訳だ。」
尤もらしい事を言っているが、要は強盗だ。哀れ銀行は一面季節外れ...いや、まるで雪崩れにあったかの様に雪まみれだ。

「では、ごきげんよう!」

こうしてアジトに戻ったフリーズは、何よりも先ず妻が眠る水槽を愛しげに見上げる
「ノラ...ただいま。少々手間取ったが今日も融資を受けられたよ...」
絶対零度のハートにもたった1つだけ、人間らしさが残るとすれば、妻への愛情だろうか?

しかし、フリーズは違和感を感じる。
「?...そこにいるのは誰だ?客人を招いた覚えは無いのだがな」
暗がりに向かって呼び掛ける主の声に慌てる手下達。しかして...
「失礼かと思いましたが、こうでもしないとお会い出来ないと考えましてね....」
スーツ姿の男が現れる。物腰は柔らかいが、そもそもフリーズのアジトに忍び込んだ時点でマトモでは無い。
「誰だ...」
「高見沢と言います。なに、ビジネスの話を持ってきたのですよ。貴方に取っても悪い話では無い筈です。」
「ほう?」
「奥様の事は正に悲劇としか言い様が無い。その為に貴方は持てる能力で全力を尽くしておられる。やり方はともあれ...」
「べらべらと良く喋る...」
「これは失礼。では本題に入りましょう。」
高見沢の話を要約すれば、フリーズの持つ冷凍睡眠、並びに冷凍保存の技術を自社で取り扱わせて欲しい、と言うものだ。
使用料として法外の金額も払う。当然だろう。如何に優れた技術でも犯罪者が培った物だ。出所をおおっぴらに出来る筈もない。要は口止め料だ。
だが...
「実に魅力的な話ではある」
「では?」
「魅力的ではある...が、お断りだ」
「何故!?」
「先ずお前が気に入らん。ズカズカと人の屋敷に入り込む様な奴に信頼しろと言う方が無理だろう?」
(犯罪者風情が信頼を口にするか?)
高見沢は思いはするが顔には出さないよう注意を払う。
「交渉はしないと?」
「そうだ」

その言葉を聞いた高見沢は席を立った。
「結構...では実力行使と行きますか!」
そう良い放つと、カードケースの様な物を取り出した!
「貴様...例の!」
「そうだ、仮面ライダーだ!」