「おい、カス。」
膝を折り跪いた私の頭上から、低い、容赦ない声が降り注ぐ。
「―――はい、なんでしょう」
XANXUS様、と言葉を紡ぐ前に、右肩にブーツの踵を振り落とされて、床に沈む。
「―――ぁぐ…ッ!」
「―――テメェみてぇな貧弱な女がなんでヴァリアーなんかに志願した?」
答えろ。
言いながら先程の一撃で外れただろう右肩を踏み躙るXANXUS様に、遠慮や手加減などと言う甘ったるい言葉は存在しない。
ただ、甘んじて受けるだけ。
「ぅ、ぐ…っ、あ、」
「金か?裏社会での地位か?殺しがしたいだけか?」
ピジョンブラッドの瞳が射殺すように細められるのが、見えずとも分かる。
「―――答えろ。」
そんなこと、決まっています―――愛しい、我が君。
「――――富も、地位も、何一つ欲しくはありません。薄汚れた人間の血を被る事なんて吐き気がします。」
願いは、一つだけ。
「私が望むのは、貴方の為に生きて――――貴方の手に掛かって死ぬ事だけです。」
邪魔であれば、殺して下さい。
ですが、できればどうか、貴方の手で。
「それだけ、です。XANXUS様。」
静かに見上げれば、今度こそ美しいピジョンブラッドの瞳が見えて。
可笑しいと言わんばかりにすがめられた。
「――――ぶはっ!」
乗せられていた足が退けられて、私は無様に起き上がった。
XANXUS様の笑いは、やまない。
「くだらねぇ、実にくだらねぇ理由だ」
「はい。」
「無償の愛なんぞ気色悪いが、テメェのはただのエゴでしかねぇ」
「はい。」
ただ、静かに、ただ頭を垂れる私に、XANXUS様が近付き、顎を持ち上げられる。
「―――だが、くだらねぇそのエゴも、たまには悪くねぇ。」
「――――…!」
「俺の為に生きて、死ぬ事を許可する。」
今、これより、テメェは、俺のモンだ。
獣が食らい付くように乱暴なキスが、降った。
もしも願い一つだけ叶うなら、君の側で眠らせて
(――――ああ、なんて幸せな、)
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初ボス夢がこんなんとか白星は間違いなくどこか病んでると思う。(笑)
でもこれボス愛でボスに罵られたい千波を思いながら書いたからこうなったんだよ。(言い訳
BGM:宇多田ヒカル「Beautiful World」