二度寝したとかで十九時に起きたってT君。二十時位に来るって話だったから遅刻でも何でも無いのにね。ボクも急いで掃除して身支度して、迎えたT君。玄関開けて抱き着きたい衝動抑えた。

雨降りそうだって宅飲みにしたんだ。
だからまず買い出しにね。

近くのM店とウェルシア行って酒とかつまみとか軽く食べられるもの買って帰宅。
猫と戯れてるT君尻目に台所の片付け、鼻歌口ずさんでたらいつの間にか近くにT君立っててビビったりとかね。
それでまあ台所から追い出して即席めんお湯煎れたりしてたらテレビがついてさ、あれ?って見たらT君がダメ?みたいな顔してて笑った。別に好きにしてて良いのにね。

で軽く食べてから缶チューハイで乾杯。T君お酒弱いけど、少しずつ強くはなってきてるのかな、わりと度数の高い奴選んでてね。
ソファでの距離近いんだ、本当に、触れるの躊躇ってた時期が懐かしい。肩にもたれ掛かると抱き寄せてくれる、抱き着けば抱き締めてくれる。柔軟剤の香りとか、T君の髪の匂い、触れてくる手がどうしようも無く愛しくて、欲しくて。

T君、甘えさせることでストレス解消になるって言ってた、変なヒトだよね。ギブアンドテイクな関係にはなってるのかなって。

ミヤさんにも、まいさんにも、Iさんにも重ねてついた嘘、それでT君が離れないならそれで、これで良いんだ。

アルコール回って動悸がする。T君の胸元に押し当てた耳、聞こえる鼓動も速い、チラッと見上げれば目の赤いT君。眠そうだなって。いつの間にか日付変わってて、少し眠る?って消した電気、もう寝息が聞こえていてね。暗がりの中見つめた横顔、長い睫毛、肩に寄り掛かってワタシも少し眠ろうとしたら起きたのか不意に回された腕、体制変えて胸元に抱き着いて目を閉じたんだ。
強く抱きしめてくれる腕と頭を撫でる手、それが段々覚束無くなってきた頃に二人とも眠ったんだろうね。ふと気づいたら四時近くになってた。
何かワタシ鳴いてたって、呻いてた?それで撫でると止むみたいな。何それ全く覚えてないんだけどって。ひたすらに甘やかしてくれるT君、途中サイコパスの診断テストふざけてやって、それでワタシが自殺するって話になったら結構思い詰めちゃうタイプなんだねって。それでまた頭ポンポンされて。何だよこの人って。

愛しさが止まない、友達以上恋人未満、最低な関係でも構わないって思った筈なのに。欲しいって思っちゃうからダメだね。

んでまたテレビ見てダラダラ、外がもう明るんできててさ。
朝が嫌いだと思った。
八時近くなって、T君そろそろ帰ろうかなって、それにそうだねなんて返しつつ抱き着いたまましばらくみーみー言ってた、お互い言ってることとやってることの矛盾、T君だって、あれ?帰す気ないな?とか言いつつ抱き締めてくれてた腕解かなかったじゃんって。まあ埒があかないから離れて、いつも通りT君の背中コロコロかけてあげて、改めて受け取ったホワイトデー。初めてゴディバもらった、プラスチックの箱に入ったカラフルな包装のトリュフ。
それと、ブレスレット。
前にキュービックジルコニアとアメジストどっちが良いですか?って聞かれて、そこは選んでよって。そしたらアメジストだった。ワタシの誕生石。

嬉しくて、有難うと言った時のT君のはにかんだ笑み、可愛いんだ。

それで玄関まで見送って、そこでさ、ちょっと笑ったこと。
T君、上着忘れてんの。通りで寒いと思ったなんてさ?笑
それで笑いながら取りに行って渡した。

今度こそお邪魔しましたって。今日は有り難うございましたって敬礼したら頭ポンポンして笑ってくれた。

玄関の閉まる音、廊下を歩いていく足音、淋しくなる。
リビング戻ってソファに沈む、T君の匂い。

手に入らないって刷り込み、諦めていくって考え。
きっとT君は気付いてない。
いつまでも都合の良い関係を続けていることって不可能だから。いつか壊れてしまうから、決して強くない糸、いつだって切れるんだ。


悲しいね。
どうして好きになってしまったんだろうな。


揺れるアメジストのブレスレット。苦しい。