音を立ててドアを開ける。チャイムを鳴らさないのは、この家の住人だからだろう。ため息をついて、ソファーから重い腰をあげた。つきっぱなしだったテレビを消す。今から本人に会うのに、DVDはいらない。
廊下から玄関を見ると、珍しく真っ白な服を着ていた。驚いて思わず体を乗り出すと、背には大きな白い翼、ウィッグかエクステなのか、金色の髪、襟足が少し伸びている。くるりと振り返った彼は、楽しそうに口角を上げた。
「トリックオアトリート!」
「驚いた、まさかそれを選ぶとはな」
飛びついてきた天使を抱きとめる。早速お菓子のおねだりとは、良いご身分だ。
と、抱きしめてわかる違和感に、天使を下ろした。妙に体が柔らかくて、華奢だ。下に履いているものも、ズボンのように見せてフレアスカート。上は白いニットを着ている。足には筋肉がついているが、いつも見ているようでなく、すらっとしている。
戸惑ってるのを見越してか、ニヤッと悪そうな顔をする。そして、態とらしく体を押し付けて、得意そうな猫口を開いた。
「荒神せんぱい、お菓子ちょうだい?」
「黒岳テツヤ、俺は性別は気にしてないと言ったろ、」
「だから今日は性別ごと仮装したんだYO!」
今や人気沸騰の天才的ダンサー黒岳テツヤ、が、その姿のまま家に訪ねてくれば、すぐさま週刊誌に撮られる。今日という日は町中が色めき立つ、余計に何があるかわからない。それ故に仮装して、性別も変えたんだろう。魔法は便利だな。
胸板に頬を寄せるのは、単にいたずら心でなく寂しかったんだろう。腕を伸ばして腰を撫でる。ひ、と甘い声を出して、抱きついてきた。
「えっち」
「誰がだ、女の体して恋人の家に来る方が誘ってるだろ」
裾から手を入れて脇腹を摩ると、擽ったそうに身をよじらせた。男の時とは違う、弾力のある肌は吸い付いて離さない。ぞわぞわして、さらに手を進めていってしまう。声が次第に甘くなるのを聞きながら、手は調子に乗り始める。ああだめだ、これ以上は、と思った時に手をつねられる。
顔を上げれば、真っ赤な顔をするテツヤと目が合う。潤んだきらめく緑の瞳、普段より長い睫毛がキラキラと光って魅力的だ。テツヤは震える口を開き、えっちと繰り返した。
「悪戯しないで、お菓子ちょうだいYO」
「菓子はある」
「なんだYO、オレばっかに悪戯して」
「だってお前はないんだろ」
何か言う前にキスをして黙らせる。真っ赤な顔をますます赤らめて、テツヤはぎゅうと俺の服をつかんだ。このシャツ、安く見えるけど海外のブランドなんだよ、キョウヤからもらっただけだがな。
腰を掴みそのまま抱き上げる。装飾が少し落ちて、天使は少しみすぼらしくなってしまったが、ポテンシャルの輝きがそれを覆い隠した。まだ大きな翼もあるし、天使としてのなんたるかは守ってる。こいつの正体は悪魔の悪魔、魔界の王アスモダイのバディなんだがな。
寝室に連れていったテツヤをベッドに下ろす。柔らかな翼から、羽は落ちることがない。よく見ると猛禽類の翼のように見えた。天使によって翼の元のモチーフの鳥は違うらしく、これは、イーグルか。
いじらしいな。ベッド脇に置いておいたチョコレートの箱から一つ選んで摘まみ上げる。一応都内某所の高級店のチョコレートボンボン、中に入っている洋酒まで最高級だ。丸いダークブラウンに、真っ白な丸い模様、その周りに黄色の花があしらえてあり、落ち着いた装飾だ。他にもいくつか買ってきたが、まずはこれが良い。組み敷いたテツヤの口に押し付けると、彼はおずおずと口を開いた。薄く開いたそれに、チョコレートをゆっくりと入れてやる。少し大きいからか、大変そうにチョコレートを口の中に収めていく姿を見ていると、下半身の一点に血が集中していった。ようやく口の中に入ったそれを、テツヤは噛み砕いた。寝ているせいか、食べにくそうな感じで、中からどろりと溶け出てくるだろう洋酒に、噎せそうになっていた。勿論吐き出すのは許さない。
チョコレートが入ったままの口にキスをする。味わうように何度も角度を変えると、なかなか強い洋酒だと言うことに気がついて、ああこれは辛いだろうな、とテツヤを顔を見る。混乱したような目をして、手で何度も俺を確認していた。フラついた手を捕まえてやるとわかりやすいくらい体が跳ねる、そして俺を捉えると、体を起こして抱きついてきた。
「も、ゃば、……ぃ、あたま、くらくらする、」
「だってお前、持ってないんだろう」
「なに、」
「トリート」
また優しく下ろしてニットをめくる、赤くなった肌が可哀想に見えてきた。ただ、目に入る双丘が妬ましいからそんなことではやめない。膨らんだそれの周りをなぞると、また高い声を上げた。
魅惑の美少女が淫乱な様を見るのは男として悪いものじゃない。柔らかだが弾力のある胸を軽く揉めば、嫌だと声を上げた。頭を振れば長い髪が付いてくる。汗ばんだ前髪を手で避けると、まさしく美少女の顔が覗くのだ。そもそも可愛い顔をしているのに、女になってしまえば、そこに女性としての可愛さが付属する。これは、普通の男なら、辛抱たまらない。かく言う俺も、悲しきかな勃ちあがり始める自身が治る気はなさそうだった。
「これは甘そうじゃないか、」
「ゃっ、ゃだっ、ゃだYOォ……ぇっ、ぁ、あらがみ、せんぱっァッ!」
「乳首は男の時と同じくらい弱いな」
「っひ、…ぁんっ、ぁ……も、もう、ぃ……」
スカートに手をかける。フレアスカートだから脱がしやすい、が、あえてめくってみる。ガチガチに閉ざされた足を、鎖骨へのキスと、胸への愛撫で緩ませる。にしてもボリュームのある揉み心地の良い胸だな、こいつが本当に女なら、引く手数多な傾国の女だろう。もうすぐ性器に届くところでテツヤの理性に邪魔された。気に入らず、乳首を弾く。わかりやすく声を上げて、最後の踏ん張りを負かした。じっとりと濡れたそこに手を滑らせると、今度はもういいと言うように四肢の力を抜く。ただ与えられる刺激に高く喘ぐだけだった。
酔いが回ったのだろう、だんだん言ってることが支離滅裂になってきた。悪いことをしたと思うがこいつももう16だ。こんな酒に乱されてるようじゃ困る、なにしろいつ世界に放り出されるかわかったものじゃない。
クリストリスを弄るとイヤイヤと頭を振った。あぁ、……男の時も性器を扱かれるのは嫌いだったな。まぁ扱いても勃たない上精子よりも潮吹きの方が多いメスイキ体質のマゾだからな。ここは、少し触れられるだけであんなに高く喘ぐ場所だ。気持ちが良くて仕方ないんだろうな。
「ゃぁっぁン!ゃ、ぁ、ァ……は、ぁ……」
中からこつこつと溢れる愛液、指に纏わせて少し入り口を弄る。小さいが後ろではあんなに俺をくわえるんだ、それに、この体でここに傷がついても何ら問題はないだろう。
「挿入れるぞ」
返事が拒否でも聞く耳は持たない。自身を蜜壺にあてがうといとも簡単に飲み込んでいった。膣内の感覚はまるでモンスターのようで少し興奮する。こんなものまで作れる魔法を彼は使えるのか、と思うと、人とは異なる異形とセックスをしているようで、少し気持ち悪かった。第一女がそんなに好きじゃないんだ、顔がテツヤじゃなければすぐさま捨て置いている。
しばらく突いていると突き当たりに差し掛かる、ここが子宮なこともわかっていたし、ここで子どもを作るのも知っていた。ただ、どうして馬鹿正直にこんなものまで作り上げてるのかは不満だ。
呼吸が落ち着いてきたテツヤの前髪をまた払ってやった。数度深く胸を上下させて息をしていたテツヤは気が付いたように目を開けると、じ、と俺を見上げていた。怒りはなく、不思議とスッキリした顔だった。
「黒岳テツヤ、」
「んっ、……なに、」
「お前どうしてこんな完璧な女に変身したんだ?」
背に手を回すと天使の翼は本物だ。
「かんぺきじゃない、YO」
突き上げるのをやめる。ただ抜かずにおいた。テツヤは手でシーツをいじりながら続ける。
この姿は単に、もし俺が女性ならばの過程で作り上げた計算上から成り立ってる、それに、女として振る舞うならば、内臓を女にしないとダメなんだ、中途な返信をするとクセになるから、やるなら完全でなくてはいけない。アスモダイじゃなくてルーシーに学んだの。でもね、例えば女だったら、きっと今ごろ悲鳴をあげて先輩に殴りかかってるはずだし、こんなに足を出して超渋谷のセンター街は歩かない。完璧な女じゃなくて、オレの仮装は男の理想、天使みたいなバカな可愛い女の子。
柔らかな胸を自ら強調させる。そうだ、お椀型の手に収まる美しい胸を持つ女なんてそういない、加えてテツヤの格好は男を誘っているようで、美しい胸とそれが合わさることはない。
ムカついた。
体位を変える、所詮松葉崩しだ。先ほどよりも深く、奥底を狙う。Gスポットを抜きがてらに刺激して、本命はポルチオだ。
「ひゃ、ぁっ、ぁん!あっ、」
「っく、……ぅ、」
「だめ、だめっ、、にんしんしちゃぁっ、ぅ、……ょおっ!?」
「すればいいだろ、馬鹿天使」
「ゃんっ、ゃだ、ゃだぁっ、……踊れなくなる……」
「こんなに跳ね躍ってれば十分だ」
「っは、だめ、くる、きちゃう……ぃっ……イく、っえぇ、っ、なんで、」
テツヤがイきかけたところで抜いてやる。テツヤが困惑してこちらを見るのを見計らって、態とらしく笑った。手で腹の上から子宮を探るように触ると、ビクビク反応してくる。
「お前排卵してるか?」
「っへ、」
「排卵、子どもほしい、天使を孕ませたい」
きゅうきゅう締め付けてくる。変態だな、このガキ。
「今からぶちまけてやる、から、イったら排卵して、ちゃんと俺の精液全部、受精させるんだぞ」
もう声にもならないらしいが、快感が欲しいのは拒否できなくて、わけもわからずウンウン頷きまくってた。俺は上からポルチオあたりを刺激して笑う。
「ほら、イくぞ」
「っんっ、」
「5、」
「ぅ、」
「4、」
「っひ、」
「3、」
「……」
「2、」
「っつ……」
「1」
「……っは、」
「0」
激しい断末魔の嬌声のおかげが普段よりよく出てくれた。
穢れた天使を風呂に入れていると、日付を超えた。ハロウィンの終了は、こいつの体を元の男に戻した。変わらず天使の服を着ていたせいで、ほとんど変わりはない。
12時で元に戻るあたり、シンデレラを踏襲している。果たして、王子と踊り狂って眠ったシンデレラは、子どもをつくってしまうのだろうか。
もう双丘のない胸を触り、反対の手でテツヤ自身を扱く。変わらず反応をしないほとんど不能なそれは、やんわりと立ち上がり、透明な液体を吐いた。