ロウテツ拍手文です><
@電話しながら
「もしもーし!あ、繋がったYO!」
「黒岳テツヤ、なぜお前が俺にかけてくるんだ…」
飽きれた顔が、スマートフォンの画面に映される。どうやら俺の父さんが作ったこのケータイの電波は障害を受けていないようだ。それに、荒神先輩のも、平気みたい。同じ会社なのかな、臥炎財閥?関係かな。俺がうんうん唸ってると、荒神先輩は変な顔をして、電話番号を知っていることに対しての説明を求めてきた。
「ドーン伯爵が逆探知して先輩の番号ゲットしたんだYO。」
「犯罪者まがいだな。」
「どの口が。」
「斬夜、」
さっきまで瞑想だなんだって座禅を組んでた斬夜が割り込んできた。
「君たちの携帯だけ繋がってるのか。」
「そうみたい、でもいつ通信が切れるかわかんないからこのまんまの方がいいかな。荒神先輩のは充電平気かYO?」
「あぁ、まだ平気だ。」
荒神先輩は、まだ不機嫌そうで、それよりももっとキリの方が不機嫌そうだ。もしかして、二人が良かった?なんて、考えるだけ不毛かな。しばらくずっと一緒にいたんだもんね。
斬夜に肩を叩かれて顔を上げた。気難しい顔をして手を顎に当てる。先ほどまでファイトしていたから、一応バディモンスターは、カードに戻している。心配そうなアスモダイに、斬夜を言い訳にしちゃった。それより、斬夜は俺のデッキケースに目を向けている。
「テツヤ、電話中悪いが、改めてデッキの整備をしておかないか?」
「え?」
「いや、さっき確認した以外にも、お前の新しいカードを知っておいた方がと思ったから。」
「あ、うん。わかったYO!」
「僕らもやっておきましょう、荒神先輩、いつタッグマッチになるかわかりませんから。」
「悪くないな、」
俺たちは互いのデッキを確認しあう。電話はつけたままで音声は流れっぱなしだ。……なるほど、このカードですか。あぁ、シナジーはこうで、お前のデッキだと、こうか。そうなりますね。
気に、なるよなぁ。
デッキじゃなくて会話なんだけど、だって、……一応、俺は荒神先輩のことが好き。好きって言っても、先輩としてじゃなくて、ずっと傍に置いていて欲しいとか、俺に、注目して欲しいとか、そういう分類の好き。だから、カードの音に紛れて聞こえる会話に耳をすませてしまう。
「テツヤ?」
「えっ、あ、な、なに。」
「いいや、だいぶデッキ構築が変わっていたから、気になって、」
「うん、アスモダイとルーシーの二体をしっかり活躍させられるようなデッキを作りたくて、爆に。」
電話越しに、カードが落ちる音がして肩を震わせた。思わず画面を覗くと、真っ黒な背中がびくりと震えている。
「荒神先輩、どうかしましたか?!まさか、裏角王……」
「い、や、違う気にするな。」
どもってから早口になった荒神先輩の声。
「荒神先輩……?」
自分でもびっくりするくらい甘い声で、名前を呼ぶ。まるで背中合わせに、お互いのことを探ってるみたい。
ねぇ、もしも許されるなら……
「俺!ちょっとトイレ!」
「え、あぁ?!え?」
斬夜が突っ込んで走ってくる前に、角を曲がって隠れる。心配してくれるのはわかるけど、ごめんね斬夜。きっと、荒神先輩も同じことをしてる。
荒い息遣いが、電話口から聞こえた。期待して声が上擦る。
「荒神先輩、その。」
「黒岳テツヤ、」
世界終焉の危機の日、電話しながらの、告白は、ひどい背徳感と、高揚感。肩でなんとか息をした。あぁいまにも世界は滅びようとしてるのに、俺たちは幸せに浸ってしまう。こんな俺は、やっぱり、悪魔なのかも。