2014/10/7 Tue 09:14
総てが変わる


話題:創作小説




誰かが叫んだ直後、馬鹿デカイ砲弾が隣の部屋を撃ち抜いた。
幸い誰も怪我を負わず、全員砂埃に巻かれていた。

「オイオイオイオイ、恐ろしいもん使ってくんじゃねぇよ、危ねぇ」
「遠くに戦車が見える。しかも政府軍だ」
「あぁ、それで外したんだな……」

アーダムが無線で指示を送ると隠れていた部隊がRPGを戦車に発射した。
命中したかどうかは解らない。

「次の装填が終わる前に移動するぞ。イルシャード、お前は東から回れ」
「わかった」

二手に別れて煙が立ち上る街中を走っていると、先程までいた部屋が砲撃され崩れ落ちた。

下手に街中を歩くとヘリで襲撃されかねない。それどころか無差別砲撃に遭うだろう。
土地勘はこちらにある。
そう考えて森の中へ身を隠した。
正直、別にここも安全と言うわけでもないが。
銃声が遠くから聞こえる。
今日は何人死ぬ、何人殺さなきゃならない。

たった数年で全てが変わってしまった。
内乱が終わったかと思えば、今度は世界と争わなければならないなんて。
しかもかつて自分がいた国とだなんて。
親父はそれを望んでいたのか?
国家の自由と先人達の思想を守らなければならない。
だが、時代は変わる。
流れを受け入れることだって必要なはずだ。
どこで食い違った、なにがダメだった。
受け入れないというならどうして武力に走る。
話し合いの余地はどこにもないのか?

ふと、近くで犬が吠えている気がした。
いや、している。
武器を構えながら静かに向かうと、人が倒れている。
戦闘服を見る限りアメリカ兵。
その周りを犬が鼻を鳴らしながら落ち着きなくうろついている。
そんな犬をそっと撫で「 お前は僕のそばにいなくてもいいんだよ」と呟いた。
聞き覚えのある言語。
在りし日の思い出が甦る。

罠の可能性もある。
俺は武器から手を離さずに一人と一匹に近付いた。
犬が吠え唸る。だが、その尾を股の下に巻き込んでいる。

「おいおい、お前軍用犬なんだろ?」

最近のアメリカ軍は使えたら何でもいいのか?
銃口で兵士の体をつつく。
少し瞼が動いた。まだ生きてはいる。
犬の主人は深傷を負っているが、手当てをすれば助かるだろう。
武器を背中に回してこいつを何処かに連れていこうとすると犬が一吠えした。
不安そうな顔だ、犬なのに。

「大丈夫だ、助けてやるよ」

怯える犬の頭を撫でてやろうと手を伸ばすと、噛みつくものと思っていたが意外にも尻尾を少し振りながら自分からすり寄ってきた。
本当に何でもありだな、アメリカは。

兵士の腕を肩にまわして、一番近場にあるだろう廃墟へ向かった。
その間、やつはずっとうわ言を言っていた。
たぶん、家族か誰かの名前だろう。

こいつは生きなければならない。
生きて国に還らなければならない。
そう思った。





続きを読む

コメント(0)




back next

[このブログを購読する]



このページのURL

[Topに戻る]

-エムブロ-