しとしとと雨が降るわけでもなく、ぎらぎらと太陽が照りつけるわけでもない中途半端な曇り空だ。そんな空の下を、何をするわけでもただなんとなく歩いている自分も、またきっと中途半端なのだろうと、なんとなく自虐的になってみたりもする。
何かを気取るわけでもなく、誰かに会いたいわけでもない。原因も無ければ目的も無い。なんとも中途半端な散歩だ。
そんな半端な自分にいつも意味を与えてくれるようなやつに、一人ほど心当たりがあったが、そうタイミングも良くはないだろう。

細めの路地に入り、なんとも様になっている壁に背中を預ける。
「ー煙草が、ない」
あまりのことについ一人ごちる。
そういえば如月に、最近不健康そうだからまずは禁煙から始めろ、と、没収されたところだった。
仕方がないから、煙が出ていただろう空中を目で追い、そのまま空を見上げる。

ーどこまでも、灰色だった

二つの建物によって形をつけられた空は妙に狭く、なんだかより中途半端に見えた。
そんな空を見ていたら、頭のなかに歌が流れてきた。
あれは、自分がまだ幸せだった頃だったっけ。
好きだった歌手の、好きだったラブソング。

あのときはただただ音楽が好きで、いつか音楽で世界を救いたいなんて、本気で思ってたっけ。
なんとなく、笑みが溢れた。溢れたら、ポケットから振動が伝わってきた。

「今どこにいますか」

誰からかは、言うまでもない。
そのメールに普通に返信をしてやろうかと思ったが、やはり止めた。

「お前は?迎えに行く。」

たまにはこんなのも悪くないだろう。
それから、たまについでに今日はあいつに歌ってやろう。
昔好きだったラブソング。
中途半端な自分には借り物の歌がぴったりだ。
でも、借り物の歌でも、今日は伝えれる気がする。