フェアール・クリスタル 第一章、第二編 by名無し。
この小説は一章でノートの約6ページ分使っていて、正直言って面倒で長いので二回に切ってやります。
なので前回を読んでいないのでしたら先にそちらを読むことをお勧めします。
ちなみに、若干天使がうざいですww。お気をつけください(←
ということで追記より小説
‥‥‥‥‥‥‥空気が一瞬止まった。
彼は呆気にとられた様子で口をポカンと開け、固まっている。
当たり前の反応ね、つまんない。と天使が思う。
朝日が厠に影を生み、それは少女と彼を隠して、二人を覆う。
つかの間の静寂を破ったのは少女。
「どうしますか、『勇者』様?」
すると、『勇者』という言葉に反応したのか、急に元気になる彼。
「オレが勇者だって!?」と目に力が入る。日の光が顔にあたり、輝いて見える。
天使はそれを予期していたのか、それとも最初から謀っていたのか、口端を少しに一都上げると続ける。
「はい、そうです。この物語の主人公ですから」
この少女に垣間見える何かに気付いていない彼は、うれしそうな表情を浮かべると、ふとあることに気付く。
「この物語って何だ?」
──そう、彼女の目的を聞いていない。
少女は一瞬怪訝そうな顔をするも、頭によぎった何かを消すように左右に首を振る、‥‥‥‥‥‥そして説明を始めた。
「この星が『ハラート星』という名前なのはご存知ですよね?」
‥‥‥‥‥‥彼にはこの天使が何を言っているのかが分からなかった。
彼の住んでいた星の名前は『トワレ星』だ。それなのに、この目の前の少女は違う星の名前を言った。
────この時、彼の中にあった、よく分からない不安と不満が、イライラに変換された。
「さっきから何意味不な単語ばっか言ってんだよッ!」
‥‥‥‥‥そしてとうとうキレた。
しかし、天使はそんなことは全然お構いなしに続ける。
厠の壁の作り出す影が、天使を影色に染めている。純白の羽が真っ黒に見えるのは気のせいだろうか。
「この世界の中には、幾つもの星があります。
あなた様の住んでいた『トワレ星』、エルフの住む『エルフ星』、悪魔の住む『デビル星』、私たち天使の住む『ウラノス星』、そしてこの星『ハラート星』。‥‥‥‥‥‥‥‥他の星はどうでもいいですわ。」
面倒臭い。少女の目がそう物語っている。
「そして『クリスタル』‥‥‥‥‥‥はご存知ないですよね。」
明らかに馬鹿にした態度。どんどん彼のストレスがたまる。
少女は彼のイライラに気付かないのか、それともわざと無視しているのかスルーを続け、話す。
「『クリスタル』というのは、全部を集めれば願いが叶うと云われている石の事です、‥‥‥‥‥‥‥わたしは信じていませんが。」
そういうと、少女は服のどこかから鏡を取り出し、おかっぱの髪をさらさらとなでる。
それから、天使は鏡をしまうと、「面倒なので一気に話しますね。」と言った。
「そのクリスタルを、先程話した『デビル星』の王女アシュウィーが狙っているのです。
彼女が何をしようとしているのかは分かりませんが『悪魔族』の事です。善からぬ事を企んでいるのは確かです。
そのことに危険を感じた『大天使』さまがわたしを使わしたのです。」
‥‥‥‥‥‥‥彼は半分くらいしか聞き取れず、結局彼が理解できたのは、
「そのアシュウィーってやつをオレに倒せと?」
そう彼が言うと、少女は大きな拍手をした。
「おバカですのによく理解できました」
とたん彼の頭の中からぷつっと音がする。
「バカにすんじゃねえ!!」
結構キレて迫力があるだろうに、小さな少女は動じない。‥‥‥‥‥‥いや、動じなさすぎる。
「で、受け入れてくださいますか?」
完全なるスルー。‥‥‥‥‥本当にこいつは天使なのか?‥‥‥‥というより、
「何でオレなんだ?」───理由すら聞いていない。
そう、何でオレ?あの時だって‥‥‥‥なぜオレがいつも面倒事に‥‥‥‥‥
彼が考えれいるのを他所に、天使が理由を説明する。‥‥‥‥空気はどこやら。
「それはあなた様が『クラスター』だからですわ。
クラスターというのは、クリスタルに何らかの反応を示す人の事です。
クリスタルのうちに眠る力を引き出すだとか何とか言われてますね。」
彼は黙り込んでしまった。原因は考えすぎによるショートだ。
天使は彼の様子など微塵にも気にせずに、やるのかやらないのか聞いている。鬼だ。
そういえば忘れてた〜というような顔で、
「終わるまで家には帰れないっていう事を伝えるのを忘れてました」と少女は言う。
悲壮感漂う顔の彼。
「その何とかって奴を倒さないと、オレは一生家に帰れないと?‥‥‥‥‥それって強制じゃまいk「いいえ違いますわ。」
最後の言葉は言わせまいとする天使の顔は笑っている、が何か違うものを感じる。‥‥‥‥‥威圧感か何かだろうか。
「分かった、やってやるよ、羽。」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥もちろんいや嫌だが。羽と言ったのは嫌がらせ、せめてもの抵抗。
「羽ではありません、アプリーレですわ。名前くらいは覚えられますよね、いくら馬鹿でも。」
‥‥‥‥‥勝てない。というより、さっきからバカバカって、何か恨みでも買うようなことしたかオレ?と彼は思う。多分態度のせいだと思われるが。
突然、羽‥‥‥‥もとい。アプリーレが口を開く。
「わたしは大天使様のお導きにより、ここに参りました。そのため、詳しいこと私もよく知らないんです。
‥‥‥‥‥あなた様の名前も聞いておりません。」
はぁ?普通勇者に仕立て上げるんだったら、名前くらい調べとくだろうと彼は思った。が、
「今、自分を(こき)使うんだったら名前位把握しとけよと思いましたね。顔に出てますよ」
と自分より小さい子に図星を食らい、精神的に大ダメージを負う。
「‥‥‥‥‥‥‥オレの名前は『ヴィータ』‥‥‥だ‥‥‥」
やっと名乗れた彼──ヴィータ。主人公のくせにやっと自己紹介。
アプリーレはそれを知ってか知らずか、
「やっと名乗れましたね」と茶化した。
朝の光が厠を差す。まるで彼らを導いているかのように。
ここより、壮大な?物語が始まるのであった。
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