「…お前も苦しいくせに。」
「何のことでしょうか」
「……さぁな」

俺は至って冷静だった。
目の前で殺されそうな知り合いが居るのに。さっきみたいに走り出したりしなかった。

「…さぁ逝きますよ。」

まぁそうだろうな。死んだって現実世界に戻るだけだ。
…アリスの役目って何だ?
アリスは何をするんだ?
もし、俺のやることがアリスの役の中の一部にすぎないなら、バタフライ、いい名前をくれたな。

「…ふんっ!!」
「させるか!!!」
「アリス!!!」
「!!?」

キィイイン!!

「まさか飛び出してくるとは…無茶するよねぇ〜アリスゥ」
「…あ…れ…チェシャ猫!?」
「……チェシャ猫さん…」
「貴方何者!??」
「クイーン。…彼は名前を守護する者、キャタピラーの対です。」
「ちょ〜っと話聞かせてもらったけど、納得いかない点があってね。中止させてもらった」
「何…?」

チェシャ猫はレイピアで鎌を受け止めていたらしい。レイピアを下ろすと白兎も鎌を下ろした。

「ん〜ごほん!…今回の名前不法使用事件において、いくつか不十分な点がある。なお、この不十分な点が解消されるまで、被告人は自由である。まず証言が曖昧なままの対処。次に防衛での名前の使用。最後に証人が不足している。以上を踏まえ…!

「…はぁあ!!??」
「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!!裁判だって!!」
「なっなんで…裁判ってなに?」
「裁判は裁判!!俺がやるって言ってんだからやる!!!はい!準備〜」
「……どういたしますか?クイーン…」
「あら…面白そうじゃない。是非やりましょうよ。久し振りに裁判の間に行けることですし」
『……』ぽかーん
「…話が読めない…つまりどういうことだ?」
「二人を解放できるかもしれないってこと!!」
「…チェシャ猫…お前!」
「それよりトランプたちよぅ…早く解いてあげてよ〜可哀想だろがぁ〜」
「トランプ!早くなさい!!」

なんだかチェシャ猫が出てきてから一気に場の空気が変わったな…まぁ2人はまだ生きているのだからいい。

「姉さん!!…よかった…」
「ホントヨ…トランプの奴!!」
「じゃあ四人には白兎に部屋を用意させるから、そこで待ってて下さるかしら?」
「嗚呼、よし行くぞ」
「わかったヨ」
ぺたん
「あれ…姉さん腰抜けた?」
「そんなわけ無いヨ!……あれ?」
『立てない…』
「しょうがないなぁ〜俺が運んでやる。お姫様だっこがいい?おんぶがいい?」
「うーん…肩車?」
「おいおい;;;」
「じゃあボクがしてあげる」
「いいこネ〜」

「………久しぶりだな白兎」
「ええ…そうですね」
「なぁによその態度は。俺来なきゃ大変だったってわかってんだろ?」
「どういうことですか?」
「アリスは無害。部外者だ。女王も気に入ってるし、殺してたらお前は追放されるぞ。」
「…その意味では感謝しています。」
「柄にもなく感情的になりやがって…そんなに兄弟が嫌か」
「何でそんな話になるんです」
「明らかに双子のせいで動揺してんのがわかるぜ。帽子屋をまだ否定するか。」
「彼は良い人です。ですが…もし、彼の言っていることが本当なら、私はとても危うい位置にあります。彼を本気にさせたら即…帰らなければなりませんから。」
「…どうせお前は帰るよ」
「どうしてそう言い切れます」
「お前も薄々気づいてんだろ。帽子屋と会う度に記憶が蘇りつつある。」
「!どうしてそれを…」
「…また会う事になったら、殺すつもりか?」
「それは法律としてできません……彼とは穏便にいきたい。都合良く彼の名前が思い出せたなら、それを使いたい。」
「嗚呼、お前も名前使えたんだったな。」
「……できることなら、帽子屋さんもずっとこの世界で生きて欲しい。そう思ってはいます」
「無理だな。」
「……」
「アリスが現れたから、お前の負けになる。」
「…絶対に…?」
絶対に。

・・・next?