『あっアリス!!』
「二人とも!怪我はないか?」
「アリスの知り合いかしら?」
『!…女王…陛下』
「嗚呼…あの時はホントに悪かった。」
「どういうことですか?」

と、白兎はアリスの隣に立ち、トゥィートルディーを一睨みした。
それを遮るようにトゥィートルダムがトゥィートルディーを背中にかばう。

「俺が…お前の居る場所を脅して聞いたんだ。だからトゥィートルディーとトゥィートルダムが防御行為として"名前"を使ったんだ。だからコイツ等に罪はない。」
「違う!違うよアリス!!ワルいのはボクらだよ!」
「そうネ!アリス関係ない!」
「ふふふふっ…」

不適な笑い。発信源はアリスの隣。白い長い耳が映える黒い色素の薄い髪。そして顔には怪しく光るルビーが二つ。埋め込まれている。
でもその目は笑っておらず、どこか怒りのような悲しみのようなものを思わせる。

「…甘い甘い甘い甘い…!まるでストロベリーにコンデンスミルクをたっぷりかけたかのように甘い!!アリスの体に流れているのはストロベリージャムなのかな…?」
「……何が可笑しい。」
「どんな状況で"名前"を使ったのかなんて鳥や花に聞けばすぐにわかる。それにね!どんな状況で使ったなんて関係ない!!名前を使うことこそが罪なのだから!!!
「…白兎…?」
「こんな素晴らしい世界から葬られるなんて地獄につき落とされるのと同じです。"名前"を使われる方もバカだ。この世界は素晴らしい!美しい!素敵な場所です!それをわかっているはずなのに何故"名前"を教えたりするのでしょう…!!嗚呼理解できない!理解できない!なんて愚かなんでしょう!!?なんて身の程知らずなんでしょう!!!!」

白兎は頭を抱えた。指が頭に刺さるのではないかというほど力強く。
そしてこの大きな部屋に響く程の声で叫んだ!

そんな身の程知らずはさっさとお掃除したくてたまらないんです!!!!折角の女王の招待を踏みにじるなんて!!!!全く理解できません!!!……ふぅ…愚かな傷の舐め合いはそこで終わりになさい。今から起きることの傷を深くするだけですよ。」
「本当に…この世界が好きなんだな…」
「はい。」

そう答えた白兎の顔は本気だった。純粋に、ただ好きなんだとわかる。
これは説得できないわけだ。

「だからですね。今からは処刑の時間です。クイーンもお待ちになられています。」
「…処刑ってさ。現に戻ることだよな?」
「ええ。現はどんな場所か忘れてしまいましたが、最悪な場所なんでしょう?」
「いっいやだ…!帰りたくないヨ!!」
「姉さん!!もう姉さんと離れたくない!!もういやダ!!!」
「…」
「では、トランプ拘束しろ。」
『御意』

何時の間にかトランプが周りを包囲していた。白兎の命令でトランプはすぐさま二人を取り囲んだ。トゥィートルダムがその中から引きずり出された。

「姉さん!!!姉さぁあん!!!」
「……去れ。」
『御意』

撤退していくトランプ達。トゥィートルディーは、頭と両腕を拘束されていた。よく時代劇とかで見る処刑のための道具だ。板に3つ穴を開けて、板を半分にして、カチンコみたいに開くやつ。

「いよいよね。待ちわびたわ」
「申し訳御座いません。でももう始めますから。」

二人は真っ赤な血の目を見つめ合いながら笑う。
本当のお前達はそんな奴じゃなかったよな。

「…参りましょうか。」

白兎がどこからかわからないが、鎌を取り出し構えた。

「貴女は人の名前を使うという大罪を犯した。貴女が此処で生きる価値はない。よって……貴女を処刑致します。」
「姉さん!!!!駄目だ!!!代わりにボクを!!姉さんだけは…」
「…うるさいアル。大人しくしてるヨロシ。」
「……姉さん…?」
「本当に死ぬわけじゃないヨ。だから、戻っても会いに行けるアル。」
「姉さんっ…」
「……っ…」
「…?白兎。どうかしたの?」
「!!いえ…何でもありません」

今、目の色が戻りかけていた。のオッドアイ。
嗚呼、わかった。これで確定した。
白兎の主人格はだ。
間違いない。トゥィートルディーとトゥィートルダムの会話で思い出したんだろう。
帽子屋のことを。

next?