くれは

2011.4.5 Tue 16:55 :ハーフ&はーふ
ハーフ&はーふRM

昼休み、一緒に屋上にやって来たアルフォンスは、それこそ両手いっぱいにお菓子を抱えていた。
「……昨日の今日で、すごいな」
「えーと、調理実習?」
それにしても、これだけのパウンドケーキが揃うと壮観だ。
番組で、アルフォンスの甘味好きをカミングアウトしたので、この手の差し入れが増えるとは思っていたが――それにしても。
「D-Lightに挑戦なんて、大胆だな」
「アハハ」
感心するように言ったが、実際、そう思っている訳ではない。彼女達はただ、弟の喜ぶ顔が見たくてはりきったのだろう。
(流石にオレは、スイーツまでは作れないからな)
実は、母の手伝いがてら簡単な料理くらいは作れるけれど――トリシャに言わせると、似たようなものらしいが。
(男らしくないって、思ってたんだよな)
だから、弟と一緒に食べはするが自分で作ろうとは、ましてやアルフォンスにやろうとは考えてなかった。
それが少し変わったのは、調理しつつも格好良かったD-Light達のおかげである。

「オレも、今度こう言うの、作ってみよーか……な?」
「えっ!?」

パウンドケーキを手に取りながら言うと、アルフォンスが驚きの声を上げた。女装モデルをやっているからこそ、エドワードが人一倍、男らしさにこだわっている事を知っているからだろう。
けれど、すぐに嬉しそうに笑って。
「うわ、楽しみだ……絶対、一番に味見させてねっ」
「……って、マズくても文句言うなよ?」
「言わないもんっ」
「食べ過ぎて、太ったら怒るからな?」
「ちゃんと走るもんっ」
エドワードの言葉に、いちいちアルフォンスが反論する。
昨日のテレビ以上に、ときめき王子台無しな発言かもしれないが――こんな可愛いアルフォンスにも、エドワードはときめくから。

「約束、な?」

……我知らず微笑みながら、エドワードは弟にキスをした。
今日のアルフォンスとのキスは、いつも以上に甘かった。

end


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