高校の時、放課後の校庭の隅っこで友達とバレーの円陣パスをしてた。
誰かのミスで低い木の柵を越えたボールを、友人Aが拾いに行った。

うちの高校は小高い山の上にある。件の柵の向こうは崖に近い急斜面だ。
ただし木や笹が沢山生えているので、ボールはそれらに引っかかって止まっているはずだった。

しばらくして斜面の下からヒョコッと顔を出したAだが、その表情は何か困惑している様子。
俺たちが異変に気付いたのはその直後だった。
ボールを持ってきたAの右腕は、鮮血で真っ赤に染まっている。僅かだが地面にも滴っている。
俺たちは慌ててAを保健室に連れて行ったが、血を拭い去ったAの腕には傷の類は何一つ見当たらなかった。

Aの弁によれば、怪我をするようなものには触れなかったし痛みも感じなかったらしい。
ボールを触ったときのヌルッとした感触で初めて気付いたそうだ。