「ね・・・寝ようぜ」 半田が言った。 うん、そうだな・・・ 僕らは半ば呆然としながら、部屋の隅に三人ひっついて横になった。 「あ、その前に・・・」 パシャリ。半田が僕とメンマの写真を取った。 「ま、記念と言うことで」 あ、あはははははは。僕らは乾いた笑いをして恐怖を追い払おうとした。 と、その時。 ガチャン! 「うお!」 「ぎゃあ!」 「うひゃへあ!」 それは、テープが最後まで行って、上がった録音のボタンの音だった。

翌朝、僕が目を覚ますと、最初どこにいるのか分からなかった。 そして、ああ、メンマの家だっけかと思い出すと、夜中の音の記憶が戻ってきた。 急におっかなくなって、僕はメンマと半田をたたき起こした。 部屋にいたくなかったので、もう帰ろうかと半田と話すと、メンマが急に可哀想になった。 メンマの親は、夜まで帰ってこない・・・ 「そうだ、メンマ、僕んちこいよ。朝飯いっしょに食おうぜ」 そう言うとメンマは、いかにもホっとした表情を浮かべた。 半田は写真を持ち、現像に出してくると言って帰っていった。 そして何事もなく数日が経った。 僕んちでメンマと遊んでいると、半田が現像された写真を持ってやってきた。 もうこの頃には、あの夜のことは気のせいだったんじゃないかと思えてくる。 「どうだった?なんか写ってたか?」 「まだ見てねえ。一緒に見ようぜ。そう言えば、写真屋の人が、可愛い弟さんですねって笑ってたぞ。 お前、おれの弟だと思われたんじゃねえ?」

 

実際、メンマはチビだったし、半田は背がすごく大きい。 「でもメンマは可愛くねえだろ」 わはははは。僕らは笑った。 さっそく写真を袋から出して並べてみる。 「なんにも写ってねえなあ」 「んー、やっぱ気のせいだったのかなあ」 「そうだ、カセットテープ!あれは?」 「持ってきてるよ」 「聞いたか?」 「いんや、さすがに怖くてさ・・・ははは」

うちのラジカセに入れて再生してみる。 「・・・・・・」 「・・・やば」 「うん・・・・」 ずるり・・・ずるり・・・ 聞こえるよ! やけに小さな音だけど確かに聞こえる! ずるりずるりずるりずるり そのとき、メンマが落ちている写真に気が付いた。袋から出したとき落ちてしまったのだろう。 それを見てメンマが青ざめた。それは最後の僕とメンマの写真だった。 そこには、メンマの背中に裸の赤ん坊がしがみついて、こっちを見ている写真だった。 顔が真っ黒で表情が分からない・・・が、 いやに真っ赤な口を大きく開いて、なにか叫んでいるような、そんな顔の赤ん坊・・・ 写真屋が言っていた「可愛い弟さん」との言葉を思い出す。 「いや・・・可愛くないだろ、これ・・・」 そのとき、突然大音量でラジカセから音がした。 「ぎゃああああああ!」 まるで赤ん坊が何かを訴えるかのように叫んでいる声・・・ ガチャン。テープを最後まで再生し、ボタンが上に上がった。

 

正直、今でもそのテープの声は耳に残っている。 そしてそれは、あの夜の記憶を嫌が上でも思い出させるのだ。 そんな時ぼくは、同じ日の学校で見た樋口さんの、 日焼けした肌と水着で日焼けしていない真っ白なおっぱいに、 うすく赤らんだポッチがふくらみ気味に尖ってたことを思い出して、 おっかない気持ちを追いやるのだ。 ああ、そういば彼女の下着は、うすい水色に魚のアップリケだったっけ・・・

ここまで、長々とした文を読んでくれた方、どうもありがとうございます。

 

後日談というわけでないんですが、補足。 メンマはあの夜の後、自分の部屋でなく、両親の部屋で寝るようになったこと。 音は聞こえなかったそうだ。 そして一週間ほどで、新しい家に越してきました。 例の団地の話は、アイドルの山田まり○も近くの団地出身らしく、 テレビで言ってたとメンマが言ってました。 メンマとは中学が違ったのですが、あいつはその後もいろいろ体験したらしいので、 今度飲みに言ったときにでもネタになりそうな話を聞いてきます。 例のテープと写真は、団地前の神社の祠の中に隙間から突っ込んで入れました。 だって怖いもんw 半田は現在消息不明です・・・