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キャンプをした時の事

以前、新潟県のある山でキャンプをした時の事。
深夜、テントの中で懐中電灯の明かりを頼りに本など読んでいたが眠くなってきたのでそろそろ寝ようか、と思い始めた頃。
突然、懐中電灯がパチン!とはぜるような小さな音をたてて消えた。
「ショートしたのかな」 俺は真っ暗の中、手探りで懐中電灯のあったあたりをまさぐった。すると、さらさらさら、と妙な音が聞こえた。
何だろう?耳をすませてみると、何やらと布のようなものが擦れ合う音。
俺は動いていないし、外のキャンパーは寝静まっているのか、人が歩いているような気配や足音はない。
鈴虫の鳴声に混じって、布の擦れ合うような音だけがかすかに鳴っている。
さらさらさら、さらさらさら。かすかな音だが暗闇の中では妙に気になる。
まるで絹のタオルをテントの張幕の上をすべらせているようなその音は・・・俺のテントの周りをぐるぐると回っていた。
「やばい!」とっさに、それが何か尋常で無いものだと直感した。
あまり肝の太いほうではないので、手がガクガクという事を利かなくなった。
それでもなんとか懐中電灯をさぐり出し、電球がショートしたのかもしれない事も忘れ、夢中でスイッチを入れた。
パチッ。懐中電灯は普通についた。どういうわけかスイッチがオフになっていたのだ。テントの中がぱっと明るくなると同時に、音は消えた。
しばらくの間、身動きができなかった。ただ耳だけに全神経をかたむけて音のゆくえを探った。だが、虫の声がかすかに聞こえるだけ。
どれくらい時間がたったのか、俺はようやく落ちつきを取り戻し始めた。
とにかく寝袋にもぐって寝てしまおう。そう考え、寝袋のジッパーを開いた。
ジッパーを背後にむけて引いたその時、ひじの裏側に何かが触れた。
俺の背後にあるはずの無いもの。
冷たく汗ばんだ、誰かの皮膚。
おぞましい感触に、俺の背筋は一瞬で凍りついた。

ごめんね

私がまだ4?5歳の頃の話です。
当時家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていました。
ある日銭湯の帰り道、ある公営住宅が立ち並んでいる場所を通りかかるとある家の玄関先に警官が2人居て、女性が何かを大声でまくしたてているのです。
なんだろう?と訝しんだものの、まぁ警察が居るのだから大丈夫と私たちは帰宅しました。
次の日、昨日の件の家の隣の住人が母親の知り合いらしく話を聞いてきたのでした。
それによると、昨日の女性はその住宅に越して来てまだ一週間足らずだったのですが引っ越して三日目辺りから、寝室にしていた和室で変なことが起こりはじめたそうです。
夜中、人の気配で目を覚ました。なんだか子供が騒いでいるような気配だった。
キャッキャという子供の笑い声。同時に畳をみしみし踏む様子がハッキリわかった。
部屋には霧のようなものが漂い、その中を3人の子供がはしゃぎまわっているのだそうです。
そしてさらに母親とおぼしき女性の声が「ごめんね、ごめんね・・・」とボソボソ言っている。
目をこらしてみると、部屋の隅の方に女性が正座をしてひたすら頭を下げている・・・・その女性がハッとしたように顔を上げ、こちらを向いたそうです。そのギラギラした目と視線が合った瞬間、その住人は気を失ったのだそうです。
次の日、ヒドい悪夢だったと半ば思い込んだのだそうです。
しかしそれは次の日にも、さらには三日目に現われた。
そして次の日、まだ深夜でもない時間に部屋が妙に霧がかかったように霞始めた。
住人は堪らず半ば半狂乱になって警察を呼んだのでした。
後日、詳しい経緯は知らされませんでしたが、その住宅の前の住人が逮捕されたのでした。
そして立会いの元、その寝室の床下が掘り返されたところ・・・・案の定、発見されたんでした。
合計4体、バラバラだったそうです。
怖かったのは、その犯人は「家族は実家に帰した」と触れ回り、自分は一人で住み込みで働いていたのです。私たちがいつも行っていた風呂屋でした。

テープレコーダー

これは友人から聞いた話。
ある男がひとりで登山に出かけたまま行方不明になった。
3年後湿地帯でその男の遺骨が発見され、遺留品も回収されたが、そのなかには、テープレコーダーがあった。
テープには大声で助けを求める、男の声が録音されていた。
男はどうやら何かけがをして、動けなくなったらしかった。
テープことはマスコミにも公表されたが、遺族も警察関係者も公表をひかえていた部分があった。
そのテープには助けを求めるメッセージとは違うものも録音されていた。
何かに非常におびえた男の声だった。
どうやら夜に何かがおこっているようだった。
男は必死にテープにむかって口述している。
一日目
「夜になると人の声がする・・・
呼ぶ声がする・・・
こんな夜中に誰もいないところに・・・
だれもいないのに・・・」
二日目
「たすけて・・・
声がする。
夜になるとあいつがやってくる・・・
暗闇から呼んでいる・・・
昨日より近くなっている・・・
おそろしいよ・・・
おねがい、たすけて・・・
とてもこわい、とても・・・
だれかたすけて・・・」
三日目
「近くまで来ている・・・
たすけて・・・
人が・・・ヒッ・・・
・・こわい・・
近くまで来ている・・・
おねがい、たすけて・・・
おねがい、おねがい
よぶ・だれも・・・
ひ・あいつ・・ちか・・・・こわいよ・・たす
すぐそばまで・・たすけ・
こえが・・・
おねがい、・・た・・・・て」
こうしてテープはそこで切れている。
それ以後、男はテープに何も録音していない。
警察はこのテープをくわしく分析した。
テープはずっとその男の声だけで、他の怪しい物音は入っていなかった。
しかし、三日目のテープが最後に切れるところで、これまでとは違う音が録音されていた。
そのことに関して、分析家も理解不能だった。
それは、遭難した男の声とは違う、別の人間の声だった。
レコーダーのすぐそばで発せられている。
耳元でささやかれたかのように、はっきりと。
「オイ」

トイレ覗き

俺が中学生の頃の話。
夜9時ごろ、自宅のトイレで大をしてたのね。
ふっと横の窓を見上げると、変な顔があった。
その窓は、家の外(裏側の、軽自動車がやっと一台通れる程度の路地)に直接面している窓。
ガラスに顔をべったりとくっつけている感じで、鼻や頬が押し付けられて平べったくなってた。
一瞬髪の毛が逆立ったんだけど、すぐに、(ああ、これはのぞきか?)
と思い直した。当時姉が高校生だったので、トイレをのぞく奴がいても不思議はない。
外に面したトイレの窓なので、当然すりガラス。
だから中に入っている人間(俺)が男なのか女なのかよくわからず、ぴったり顔をつけてのぞこうとしたのだと感じた。
それなら怒鳴りつけるなり何なりすればよかったのだろうが、一瞬腰を抜かしそうになった後だったので、なんだかちょっと行動力がなくなっていて、そのままそーっとトイレを出た。
俺が振り返っても動き出しても、その「顔」はうろたえるようすもなくそのままトイレの中を必死でのぞき続けているようだった。
ぴったりガラスに押しつけられているので、異様に大きな顔にも見えた。太った男のようだった。
トイレの外に出てから、しかしこのままにしといたら姉貴がかわいそうだなあと思い直した。
どんな奴なのか顔だけでも見といてやろうと、家族には何も言わずにサンダルを履いて外に出て、家の裏に回った。
路地に出て、トイレの窓のところを見た。
人影はない。そりゃもう逃げてるわな。
ちょっと苦笑しかけて、すぐにあることに気づいて俺はもう一度ぞっとした。
トイレの窓の外には、ドロボウ除けのステンレスの面格子が取り付けられていたんだ。
面格子と窓ガラスとの距離は5センチ足らず。とてもじゃないが人間が頭を突っ込める隙間はないんだ。
俺はあわてて家の中に戻り、その夜は布団をかぶって寝た。
あのガラスに押し付けられた肉厚な顔のイメージが、しばらく頭から離れなかった。

ハンマー

私はかつてあるクラブのキャプテンをやっていました。そのクラブでは毎年新入生の肝だめしが伝統行事となっており、私がキャプテンになった年もとり行うことになりました。
肝試しの場所に選ばれたのは一年前に殺人事件があったという廃家でした。
新入生は3人。夜中に皆が見守る中、一人ずつ廃屋に入っていってあらかじめ奥に置いてあるバッジを取ってくる、というものでした。
まず、最初の一人が中に入りました。ところが待てども待てども彼は戻って来ません。
そこで彼を探すことも兼ねて二人目が入っていきました。しかし二人目も戻ってきません。
そして三人目が行くことになりました。彼は三人の中で最も体格が良く、我々も期待しました。しかしやはり彼も戻りません。
事故の可能性もあるし、全員で廃屋を探しましが、三人は見つかりませんでした。
と、そのとき私は上からトントン、トントンという音が聞こえるのに気づきました。音はかすかですが、確かに聞こえてきます。私は恐怖を抑え、音がする方向に近づきました。
音は屋根から聞こえてきます。私は窓を開け、そこから屋根に登りました。
そこには三番目の新入生がいました。彼は絶望した表情を浮かべ、わけのわからないことを小声で呟きながら、屋根を薄汚れたハンマーでトントン、トントンと叩いていました。私が彼に声をかけても、彼は何の反応も示しません。私は他の部員を呼び、彼を屋根から引きずりおろし、病院に運びました。しかし間もなく彼は息を引き取ってしまいました。その後どう探しても二名の新入生は見つかりませんでした。問題を起こしたクラブは廃部になってしまいました。
それから毎年肝だめしの日になると、そのとき部員だった者の誰か一人が必ず発狂死していきました。彼らは皆、わけのわからないことを呟きながら、ハンマーで床をトントン、トントンと叩きだし、そのまま死を迎えました。
明日がその肝だめしの日で、残っているのは私一人なのです…………
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