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ブルーのTシャツ 2

突然今よりももっと白い世界に変った。相変わらず何も感じないが何かが聞こえて来た。 工事現場のようなガガガという音、誰かが怒鳴っているような叫び声、ぬるい感触と、妻の声。 しっかりして!しっかりして!と馬鹿みたいに同じ事を言っている。 何言ってるんだ、しっかり聞こえてる。 それよりこの足元の少年をなんとかしてくれ。小学生時代の友人なんだ。 死んだはずなんだけど何か出て来ちゃって、離れないんだ。幽霊かな? と思った途端に今まで白かった視界がサッとクリアになった。 雪が降っている。工事現場にいるようだ。 作業員がせわしなく働いている。正月なのに大変だね。 急に妻の顔が目の前に出て来た。あぁ、よかった!よかった!と泣いている。 それからの記憶があまり無い。

 

私は居眠り運転で事故に遭いました。次に目が覚めた時は病院のベッドでした。 車はぐちゃぐちゃになりましたが、親子三人無事でした。私も肋骨、鎖骨、足の骨を折りましたが 数ヶ月で完治しました。 この話をすると妻は小学生時代の友人があなたを助けてくれたと言っています。 そうだったらものすごく嬉しいのですが、今でもただ一つ気になる事があるのです。 昔のアルバムを見てもその少年は何処にも写っておりません。 遠足や行事の時の写真を見てもどこにも写ってないのです。 父は写真が趣味でしたので、私の友人は全てと言っていい程撮っております。 しかも田舎のそんなに生徒も多くない小学校でしたので、写ってないのはまずあり得ません。 でもあれは絶対に私の友人ですし、放課後良く2人で一緒に遊んでいました。 あのブルーのTシャツはおじいちゃんが買ってくれて、ものすごく思い入れがある事を言っていたのも覚えています。 家とかには行った事は無いけれど、夜遅くに何度か私の家には来た事があります。 でも、今思えば彼と遊んでいたのはいつも2人きりだったようなきがします

ブルーのTシャツ 1

2年前の正月休みの事です。 実家に嫁と子供をつれて帰省する途中の話です。 実家へと向かう途中、地元の風景を懐かしいなーとかいいながら車を運転してた。 その日は雪が降っていてチェーンを巻いての走行だった。 時間的には4時か5時くらい、もうそろそろ暗くなるという時間帯。 実家に近づき見通しの良いカーブを慎重に曲がろうとした時、急にダンプカー? トラックが前から出て来た。横から飛び出て来た訳じゃなくて前から突然出て来た。 とっさに急ブレーキ&急ハンドルをきったものだから車がスリップし路肩の溝にタイヤが はまってしまい、動こうにも動けなくなった。 私が「何だよ今のトラック!急に出てきやがって!危ないな!」というと 妻は「何言ってんの?トラックなんかどこにいんのよ!?寝てたの?」 「はあ?今バッと出て来たじゃん!ぶつかりそうになって避けたんだから!」 「私も前見てたけどトラックなんか出てこなかったわよ!」

 

トラックが居た居ないの押し問答に、それより子供が怖がって泣くので、 なんとか大丈夫だからと言い聞かせ、とりあえず助けを求めて妻がロードサービスに電話。 その間私は車外に出て状態を見に出た、かなりの田舎なので辺りには家が無く 50?60メートルくらいはなれた所にポツポツと点在している感じで、 雪も積もってるしとても助けにいく気になれなかった。 ロードサービスは30分程かかるという事で、とりあえず外で気分を落ち着ける為に タバコを吸って今の事を振り返ってみた。何度考えてもトラックはいた。 確かに長距離を走って来た疲労感はあったけど、居眠りはしていない。 急ブレーキを踏む前の道端の自販機は記憶にあった。距離にして15mくらいか 30kmくらいで走った場合の15mって、ほんの一瞬じゃないか。 妻こそ寝てたんじゃないのか?と思いそれを言おうと車に向かった瞬間。 寒さのせいではない悪寒が走った。 運転席にうちの子ではない子供が乗っていた。

 

えっ!?と思いドアを開けようとした瞬間、子供が誰だか解った。少年だ。体がびんと硬直した。 少年はニヤニヤ笑って私の目をジッと車内から見ている。服装はブルーの半袖Tシャツ、 下は見えない。 その少年は私の小学生時代の友人でした。 たしかこの辺りで居眠り運転のダンプに跳ねられ亡くなった。 事故が多い場所でその後で道にはガードレールや居眠り防止のセンターラインの突起などが 設置されたのでよく覚えている。 その少年が私に向かってしきりに笑いかけている、こっちは笑う余裕すら無くガクガクと震えていた。 何か焦点が合わなくなって目の前がブレはじめた。視界の端っこには妻の顔が見えた。 眠っているのかうなだれるような感じで、チャイルドシートに覆いかぶさっている。 妻に抱かれた子供は泣いていた。何か言っている、何か叫んでいる。 目の前がぶれて景色が真っ白になっていった。でも少年の顔はしっかりと鮮明に映った。 何でお前がこんな所にいるんだよ。何で出て来たんだよ。と言ったつもりだった。息が苦しい。 少年は何か言おうとしていた、ニヤニヤした顔で。私の腕をひっぱりだした。 なんだか子供が親と手をつないでブランブランさせる時のように、 その振りはだんだん大きく激くなっていった。腕の感覚が無かったが、 引きちぎれるからやめてくれ!と思った。声は出ない。辺りはもう真っ白で何も無い。 少年がニヤニヤ笑いながら今度は足に絡み付いて来た。子供特有のあれだ。 もう、私は何も感じなくなっていた。足元の少年はニヤニヤしてまとわりついていた。

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