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さて・・・と
御剣はポケットから手袋を取り出して自身の手にはめ
さらにはカバンから消毒液やタオルなどを取り出して
‘ソレ’を綺麗にし始める
この作業は己の指紋をつけないためではなく、衛生面からの作業だ
念入りに消毒をしたあと
受話器を耳にあて、プープーという発信音を確認すると
御剣は数桁の番号をダイヤルし、流れてくるメッセージに満足する
ゴミまみれの部屋でニヤリと一人ほくそ笑むと
そのまま受話器をもとのところに置くことはせずに
足早に糸鋸の部屋から退散する
‘来月の支払明細を楽しみにしているがいい’
「ふ〜、やっぱり家が一番落ちつくっス」
一週間振りに戻ってきた糸鋸が部屋に腰をおろして一息ついていると
部屋のどこからか聞き慣れない言語が聞こえてくる
「ど、泥棒っすか? 誰かいるんすか?」
周りをキョロキョロ見回すものの人の気配などなく
声も機械音のようだ
どこかでラジオでも流れているのだろうか
ゴミをかき分けると、音の発信源は受話器からということがわかった
「なんすか、コレ」
受話器からは途切れることなく英語ではない国のアナウンスが流れており、もちろん糸鋸には言っている意味など理解出来ない
「ま、気にすることないッス」
一人そう呟くと
大して考えもせずに、受話器を電話機に置く
こうして、受話器と本体は一週間ぶりに元の位置に収まったのだ・・・・・・
「ぎょええええええええーーーーーーーーーーーーー!!!」
糸鋸が出張から戻った翌月のこと
電話会社から届いた請求書に腰を抜かす
請求額はとんでもない金額が記載されていた
こ、こ、これは・・・ソーメン二年分よりも高くついているッス
この電話機は年に二回使用するかしないかなのに、絶対に間違いッス
鼻息荒く
「アンタ、無茶苦茶な金額を請求すると逮捕ッスよ!!」
とその電話会社に電話してみるが先方からは
「御客様の電話機からは○月○日〜○月×日まで、イエメンの時報に通話されております」
と事務口調で応えが返ってくるだけであった・・・・・・
ふくしゅう 完
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