「あぁーん、やだやだやだ、」

「なんでええええええええ〜」

「ダメなん〜」



「どうして、おにぎりじゃいけないの?」



「だってえ みんなとやくそくしたんだもん、」

「遠足のおべんとうは、サンドイッチにしようって、」

「みんなとおおおおおおお」


「知らないわよ、そんな約束」

「ママ 聞いてないし、」

「そういう約束は勝手にしちゃいけないの」

「だいたいから、ふうちゃん、「みんな」って何人?」




「ん………と、4人………。」



「(笑)みんなじゃないじゃない」




「遠足は、ふうちゃんの好きなシャケのおにぎりとゆで卵とタコさんウインナーって、ふうちゃんも一緒に昨日、買い物に行って決めたんでしょ?」



「だって、だって、、、」

「ふうちゃんだけ持っていかなかったら、いじめられちゃうよおおおお」

「うそつきになっちゃうよ〜」

「わああああん、」「あああああ〜ん」「あーーーん」



「泣いたって、駄目よ ふうちゃん」



「急に言ったって、どうにもならないでしょ………。」




「おやおやおや〜?」

「ふうちゃんは、」

「なに泣いてるのかなあ」




「あら、ごめんなさい、あなた、お仕事の邪魔しちゃったわね。」

「なんでもないのよ、ふみこの我が儘が始まっただけだから、」




「パパあああぁ〜、」


「なんだい?ふうちゃん。」


「あのね、、えんそくにね、」


「あゝ、今日は遠足だって言ってたね。」


「ん、………グスングスン………じゅっ、じゅるるる」


「ほら、ほら、鼻かんで、もう泣かないでパパに分かるように話てごらん」





「ん………グスン、グスン、、、チーン。」



「あなた、甘やかさないでくださいな、」

「泣けばいつも思い通りになるっていうのもいけないし、おべんとうは「シャケのおにぎり」がいいって言ったのも二三子自身なんですから、」

「ん、君の言う事もよくわかるよ、だけどさあ」

「遠足ってすごく楽しみじゃなかったかい?」

「子供の頃、」


「俺はさ、遠足の愉しみって特別だと思うんだ。」

「友達と、おやつ買いに駄菓子屋行ったりさ、」

「寝る前も、リュックサックに入れたもんの点検してさ”しおり”出しっぱで忘れたりしたりな〜(笑)」



「(笑)」

「パパ、おっちょこちょいなとこ二三子にそっくりね〜」

「ハハハ、そうか〜(笑)、二三子はパパ似だな(笑)」





「でも、パパ、」

「うん、君の気持ちも分かる。」

「わかるけど………」

「こんなに泣かしちゃったら遠足、楽しく行けないだろう」



「………そうね、」



「そうじゃなくても、二三子には我慢させてると思うし」

「こんな貧乏じゃなきゃ、欲しいものもあるだろうに」


「俺の小説が売れないせいで、君にも苦労かけてて悪いと思ってるんだけどさ。」




「なに言ってるの!あなた!?」

「わたしは あなたの小説が大好きよ 」

「苦労してるなんて全然、思ってないわ!」

「あなたの小説はね、絶対、世に出るの、」

「それでね、映画になったりするわ」


「主演は誰がいいかしらね〜」

「日本中の女性たちが心をわしずかみにされるような魅力的な俳優じゃないとね♪」

「原作のイメージが壊れちゃうから………。」



「(笑)オイオイ、気が早いな〜」

「まあ、そうなれるように頑張ります(笑)」



「ん、体に気をつけてほどほどにね。」











「パパあー」


「で、ママ?」
「パンはあるのかい?」


「パンねえ、、、、パン………」









パン、パン………パン………















「あ、ったあーーーーーっ!!!」









冷凍庫の端っこに隠れるようにあったカチカチのパンは、

食パンを買ったときに”おまけ”でもらったパンの端っこ。

どう見てもこれが、サンドイッチになるようには

小学2年生の二三子の目からみても明らかだった。



がっかりはしたけれど

パパとママをこれ以上困らせることはできないこともよくわかってるから





「ははは、パン、カチカチだね〜(笑)」

と、おどけてみせる。











しばらくカチカチのパンを手に取り、黙って見ていたパパが二三子に聞いた。




「ふみこ、パンのどこが好きだったっけ?」

「ん?ふみこ、パンの耳が好き。」

「だよな〜、パパも耳が好き。」

「ママも、芳ばしくて一番耳が好きかなあ。」




「なら、これは、パンの一番おいしいとこが見つかったってことじゃないか?」

「まぐろで言えば、一番うまいトロの部分だぞ(笑)」

「そうねえ、そうだわ(笑)トロだわ」

「あはは、トロパンだあ」

「ふみちゃん、サンドイッチ出来るぞ!」

「ええええええーーーっほんとー?」



(不安げにママが)


「パパ、大丈夫?そんなこと言って、」


「パパにまかせなさーい」

「だいたいから、パンの劣化を抑えるには冷凍が一番なんだから、このパンの保存はバッチリだ、」

「パンを先ずこんがりと焼くだろう」

「うん、」

「そうしたらパンの茶色い方にバターを塗る。」

「うんうん。」


「で、ゆで卵をつぶしてマヨネーズと塩を混ぜてパンにはさむと?」



「わぁ〜パパ、すごーい! サンドイッチになったあー」


「ほんとねえ、パパ器用ー」


「エヘン、独身時代が長かったから自炊は得意かな(笑)」


「あとはラッピングだな♪」

「なんかかわいい箱ないか?」



「箱ねえ、、、うーん………」

「したら、こうは?」




「アルミホイルにくるくる包んで、真ん中にナプキン入れて、ラップを大き目に切ってそれで包むじゃない…で、両端にリボンをつけたら、ほおら可愛い〜。」


「わぁ〜ママ、すごーい♪」


「エッヘン、(笑)」