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舞い上がってしまった

今から46年前、私が小学1年か2年生の時に、先代の林家三平師匠に偶然会った事がありました。
当時母の兄が東京女子医大病院に入院していて、私は母と弟と見舞いに行った帰りのエレベーターの中で、三平師匠と一緒になったのです。
三平師匠は奥様の御見舞に来ていたようでした。

当時三平師匠はテレビで大人気で、子どもの私でもよく知っていました。
いつもテレビで見ている人が目の前に現れて、私は舞い上がってしまったのでしょう。
「三平だ〜。」
そう叫んで、開いたエレベーターの扉から私は闇雲に走って飛び出しました。
母が低く抑えた声で、そこは降りる階じゃない、と言って私を呼び戻しましたが、私の興奮は治まりませんでした。
三平師匠は頭に手を添えて、どぉもすみません、とやるあのギャグを私にやって見せてくれましたが、私は興奮の余り、ギャグに付いては何も言葉を発しませんでした。

私が高校生の時に、三平師匠は54歳の若さで亡くなりましたが、その時に初めて私は、エレベーターの中で一生懸命に子どもだった私にギャグを見せてくれた三平師匠の優しさが分かりました。
こんな事を言うと、向こうも困るでしょうが、まるで親戚のおじさんが亡くなったような気持ちになりました。
その時は分からなくても、後から分かってくる事が、世の中にはあるのですね。

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