続・KinKiと愛と妄想と
2013/06/26 13:16
:小説
〈超王子〉第9話
『まだだろうか?…今、何時だろう?…ああ、5分前だ!どうしよう!!もうおいでになる頃かな?……しかしまさか、あの方が隣国の王子だとは…しかも、マチダが以前仕えていたなど……何か、僕達の間には、深い縁があるように思えてならない…』
『ああ…心地良い風だな……まだ胸は高鳴るが、少しずつ落ち着いてきたようだ……澄んだ空気と踏みしめる草の匂い……この地を選んでくれたマチダに、また感謝せねば……ヨネも私達を引き合わせるために尽力してくれた。ふたりにはいずれ礼をする機会を設けたい……はっ!!あれは?あの緑なす木の下に人影が!!』
『あの方だ!!間違いない!!…遠目にも判る。あの優雅でしなやかな身のこなし…風になびく絹の髪……ああ…白く透き通る肌さえ、離れていても手に取るように…』
『あなただ!!夢にまで見たあなたが、もう、すぐそこに!!…ああ…私に気がつかれたのか!?こちらを見つめている。手にしていらっしゃるのは……〈おやつコロッケ〉だ!!』
「コーイチ…殿下…でございますね?私はツヨシ・アックーア・ドーモティーと申します。お逢い出来て光栄に存じます!」
「私はコーイチ・ディーノ・ドゥモットリアと申します。私こそ、ずっとお逢いしとうございました!!…あっ…い、いや…」
『!!…なんと…なんとお可愛らしい反応をされるのだ、この方は!?僕に逢いたかったなどと、思わず仰ったのか…そのように恥ずかしそうに頬を染められて!…一瞬で…王子らしい凛々しさだけではなく、危ういまでの可憐さをこんなに強く感じさせるとは、想像だにしなかった!!……だが…ますます愛しさが募るのは、何故だろう?』
「し…失礼を致しました…あなたも私を、あのスーパーという店でご覧になられていたとは、露ほども思わず…私だけが、あなたがそのおやつコロッケを手にするのを拝見したのだとばかり…」
「…コーイチ殿下……二度目にコンビニであなたをお見かけした時、まさかと思いました。声をかけられなかったことを、どんなに後悔したことか!…もしや近辺にお住まいの方なのかと思い、その後もあの近くを公用で通る度、コンビニに車を停めさせ、店内に眼を凝らしてみたりと…」
「ツヨシ殿下…」
「しかし、やはりお逢い出来なかった……それもそのはずです。王子殿下であられるなどとは……よもや王子殿下が、スーパーやコンビニにおいでになっているとは思いもよらず」
「そう仰るあなたこそ、私より頻繁に、スーパーやコンビニに通われているのでしょう?」
「仰る通りです、ふふふ……ましてや、あなたが僕と同じお気持ちだとは、夢にも思っておりませんでしたから…あなたの家臣の方から、マチダを通して密書が届き、真実を知りました。その時の僕の心を、どのように表現したら良いか!天にも昇る気持ちとは、こういうことなのかと!!」
「ツヨシ殿下…」
「もう止めましょう、その呼び方は……僕とあなたは今、王子としてではなく、お互いひとりの恋する男としてお逢いしているのですから……コーイチ」
「っ!!…あ……は…い……ツヨ…シ…」
『…何ということだ…知れば知るほど、こんなにも愛らしい方だったとは!!人は一見では解らぬもの。ああ…知れば知るほど惹かれていってしまう!』
『あなたは……初めてあなたを見た時の、あの可愛らしい笑顔からは想像出来なかった、真の男らしさを持ち合わせた方だった!…だが、それを知って、私は気持ちが萎えるどころか、こんなにも心が震えている……こうしてお逢いしてみて、あなたがもし可愛いだけの方だったなら…もしかすると、この逢瀬が最初で最後になったかも知れないのに…』
「コーイチ…これを…」
「…おやつコロッケ…」
「あなたと僕とを結びつけてくれたおやつコロッケを、あなたに…」
「ツヨシ…」
「結局、あなたは、これを手に入れられなかったと聞いているよ」
「…ええ…」
「だから、僕からの最初の贈り物は、やはり〈おやつコロッケ〉が一番良いだろうと思った」
「ツヨシ…ありがとう……食べてみても良い?」
「もちろん。とても美味だよ。開けてあげよう…ほら、召し上がれ」
「…ん……おいち…い…」
「んふふ!『おいちい』?」
「あっ!…た、確かに美味だ」
「…可愛い……コーイチ…」
「っ!!……ん…ぅん…」
『おやつコロッケの味なのに…堪らなく甘い唇だ……僕のコーイチ…このまま離したくない!』
『……あ…頭の中が…おかしく…なりそうだ……口づけくらいで…こんなに……熱い…』
「…ふ…コーイチ…コー…イチ……ん…」
「…んん……ツ…ヨ…」
「…ああ…コーイチ!!攫っても良いか!?他の誰にも邪魔をされない場所へ!」
「…ツヨ…シ……でも…」
「お互いに国へ戻れば、次はいつ逢えるか分からない。僕は、あなたを…もっと知りたい!!」
「!!…ツヨシ…」
つづく
b o o k m a r k
p r e v n e x t