ゴーイングメリー号は今朝、夏島に入港した。

賑やかそうな町があり、メリー号のほかにも海賊船が何隻か停泊している。

どうやら悪党に寛容な町らしい。

みんなに滞在中のお小遣いを配りながら行動予定のすり合わせ。

「騒ぎを起こさないでよ、ルフィ!」

「おう!まかせろっ」

「ナミさん、俺も食材の買い出しついでにルフィについて行くから、どうぞご安心を」

「ありがとう、サンジ君」

「おれも出かける。この町にはちったぁ強ええのがいるといいんだけどな」

ゴン!!

「だから騒ぎを起こすな!」

「俺はメリーの修繕用の木材を買いにいくぜ」

「俺は船に残るぞ、やりたい実験があるんだ。船番は任せてくれよ」

「わかった。じゃあ船番は頼んだわよ、チョッパー」

「おう!!」

「それでロビンは…あれ?」

甲板を見回してもロビンが居ない。

「チョッパー、ロビンは?」

「ロビンはさっき出かけて行ったぞ」


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「水平距離は…まぁ、だいたいこんなもんか。右稜線は……42度、と」

町で島の地図を買うと、町以外の部分は島の輪郭ぐらいしか描かれていなかったので、一度船に戻り、機材を背負って測量に出た。

海の見える丘に赤白棒を突き立て、傾斜の面積を測る。

長年使っている測量ノートに細かく数字を書き込んでいく。

これは世界地図を描きたいという大切な夢の過程。

____なんだけど。

どうしてだろ、うまく集中できない。


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ここ数日、ロビンはあたしを徹底的に避けている。と、思う。

あんなことしたんだから、避けられても仕方がないと思うけど……、左頬を手で擦るのがくせになりそう。

集中できない作業を一度中断して、近くの岩場に腰かけた。

左の膝に肘をつき、手の平に顎を乗せて陽光に輝く海を眺めた。


あたしはロビンをどう思っているんだろう。


ロビンのことは好き。
知識が豊富で頭も良くて。
それをひけらかさないところも素敵だと思う。
身のこなしも優雅だし。
物腰も柔らかい。


でも、そう思う感情に名前を付けるとしたら何だろう。


参った……、相談できる相手もいないし。

まさかビビにそんな内容の手紙は送れないし。

まあ、あの子のことだから、不思議に思っても真剣に考えてくれると思うけど。

 

目をつぶった。

数日前のロビンとのやり取りが瞼の裏に甦る。

『覚悟がないなら、あまり挑発しないで頂戴』

そう言って、ロビンはあたしにキスをした。

あたしのことを好きと言った。


あれから、ろくに口もきけないまま今日で1週間。

 

___ロビンは今も、私を好きでいてくれているだろうか?

 


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トレインタフルール・クラッチ!!

ぎゃああああああっ

 

至近距離で男の悲鳴。

驚いて飛び上がった。

「ナミ!!」

「ロビン…?」

「無事なの!?」

「え、ええ……あたし、ちょっと寝ちゃってたみたい」

「あなた、こんなところで寝るなんて危ないわ。その海賊たちに囲まれていたのよ」

言われて周りを見渡すと20人くらいの日焼けした男たちが、妙な方向に身体を捩じられて地面に転がっていた。

「ひえっ」

「とにかくここから離れましょう」

「う、うん」

急いで機材を背負って走り出した。


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メリー号、甲板。

「町で会った長鼻君に、航海士さんは町の中にいるはずだって聞いたのに、どこを捜してもいなかったから。この島の治安は良いとは言えないし、暴漢にでも襲われたのかと」

「それで、あそこまで捜しに来てくれたのね」

「案の定で驚いたわ」

「う……ごめんなさい」

あれ、でも___

「なんで町の中であたしを捜していたの?」

「それは……」

「?」

「……航海士さん、話があるの」

「…うん」

ロビンが目線で女部屋を指して歩き出したので、ロビンの後ろについていった。

ロビンの表情はいつものポーカーフェイス。

あまりいい予感はしない。

部屋の真ん中の白い丸テーブルで向い合って座った。

「航海士さん」

「うん」

「避けたりして、ごめんなさい」

「え、ぁ、いや……ううん」

やっぱり、ここ何日もすれ違ってばかりだったのは意図的に避けられていたからなのね。

「話って、そのこと?」

ロビンが顔を横に振る。

ロビンは硬い表情でこちらを見つめてきた。

その深い青色の瞳の中に、何かしらの決意が見て取れた。

 

 


なぜか___、


話の続きを聞きたくないと思った。

その唇がもう動かないで欲しいと思った。

 


ロビンの落ち着いたアルトの声が耳に届く。

「貴女に好きと言った事を、無かったことにして欲しいの」