お昼寝日和

2014.10.25 Sat 16:45 :本編
十五話、持ちつ持たれつ〜埋、花芹〜


この上なく気怠い五月。
毛皮で溢れる一室にて、これまた気怠い狸が一匹。

この家の住人の中では一番大人しいのかもしれない。

茶色いフサフサとした毛皮の手入れはしっかりしつつ。
何もする必要がない部屋の片隅で物思いに耽るもいい。

時間になれば餌もある。
人間が言う「おやつ」とやらも出て来る。
気楽でいいが気楽というのは兎に角つまらないものである。

「何か楽しいことはないだろうか。」
狸が問うと狐が答える。

「人間でも化かしに行くかえ。」
またこの狐は面倒なことを言う。

狐の楽しみは過ぎるものが多いことを狸は知っている。
わざわざ化かして面倒事を増やさんでも良かろうに。

このどこか食えない相手と、もしかしたらずっと一緒なのかもしれないと思うと先が思いやられる。

しかし。

「…たまには付き合うのも悪くはない。」

ゆっくりためた後に呟くと。
後ろの狐がくすりと笑った。

牽制しつつ、警戒しつつ。
楽しみは平等に分けるのも悪くはないだろう。
お互いの違う毛色を眺めるではなく。
互いにそっぽ向いてこの世の見物をしているくらいがちょうどいい。

少し蒸し暑い部屋の中。
毎日変わらない天井を見つめてやがて狸はくすくすと笑いだした。




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