今更な感じですがやっと書き上げたのでUPです。
8話後の折紙と虎徹さん。短め。






「タイガーさん!」

ルナティックとの戦いの後、病院に搬送された虎徹の元に掛け付けたのはイワンだった。
今にも泣き出しそうな表情を浮かべて、肩の手当てを受けていた虎徹の元に駆け寄ると、手を伸ばし、しかしその手は虎徹に届くことなく下ろされる。
「…あの……そのっ…」
ぎゅっと眉を寄せて、服の裾を握り締めるその姿は、まるで何かを壊した子供が親に叱られる前の姿のようで、思わず虎徹は苦笑を浮かべた。
ハンドレットパワーを発動していたお陰か、肩の怪我はそこまで酷いものではなく医者からよくアイシングをして薬を塗っておくようにと言われると、特別に自宅療養でいいとのことで病室を後にする。
イワンも、虎徹の後をちょこちょこと歩きながら病室を出ると、何か言おうとして口を開いては何も言えずに閉じる動きを繰り返していた。
「イワン、こっちこい」
病院の待合室の長椅子に座った虎徹はちょいちょいと手を振ってから自分の隣を叩き、イワンに座るように促す。
イワンは所在無さげに視線を右へ左へ動かしていたが、虎徹がもう一度隣を叩く動作をすると、彼の隣に座った。
「…タイガーさん、あ、あの…」
「なぁ、イワン」
「っはい!」
俯き加減で自分の膝を見ながらまた何か言おうとしていたイワンだが、虎徹に話しかけられるとビクリと体を震わせてから視線を上げ、隣の相手を見上げる。
「今日は頑張ったな」
「えっ…」
思いがけないその言葉にイワンは瞳をパチパチと瞬かせて少し呆けた表情を浮かべた。
「それと、お前はちゃんとヒーローだよ。もっと自分に自信を持て」
ぽん、と頭に手を置いてそう言った虎徹の瞳は優しく、イワンは気付いた時には涙を流していた。
静かに流れるその涙を見て、虎徹は優しく笑いながらイワンの頭をそっと撫でる。
「折紙は、ヒーローだよ」
欲しかったその言葉に、虎徹の手から伝わる優しさに、イワンは涙が止まらない。視界が涙で歪み、体が震える。熱い思いが込み上がり、胸が苦しい。
「った、いがー…さんっ…」
嗚咽交じりの声でその名を呼ぶと、虎徹はどうした?と軽く首を傾げてイワンの顔を覗き込む。
「あっ…あり、が…と…ござぃっ…ますっ…!」
「ん…どういたしまして」
イワンの言葉を、気持ちを受け取り、虎徹はニッと笑ってそう言うと今度はイワンの頭をガシガシと強く撫で繰り回し、まだ溢れ出る涙を指で拭ってやった。
「折紙には、まだまだこれから沢山頑張ってもらわなきゃならないからな!覚悟しておけよ?」
「…っはい!」
その言葉に、元気良く返事をしたイワンに虎徹は満面の笑みを浮かべると彼が泣き止むまでずっと隣にいた。何かを話す訳でもなく、ただ虎徹が隣にいることが、イワンにとっては嬉しい。
イワンは目元の涙を拭うと、隣の虎徹の肩にそっと触れる。
「どうした?」
「…僕、もっと強くなります。そして、タイガーさんにこんな怪我をさせないように…」
「え…っ!」
イワンは強い口調でそう言うと、虎徹の肩に顔を近付けて、唇を落とした。
「おっ折紙…?」
「好きな人を守るためにも、僕は、もっと強くなる」
「…イワ、ン…」
イワンの瞳の強さに、思わず彼の本名を呟いた虎徹は固まってしまう。
「だから…いつか、貴方の隣に立派に立てるまで、見守っていて下さい虎徹さん」
そう言ったイワンはふわりと微笑むと椅子から立ち上がり、虎徹の額にチュッと口付けてその場を立ち去った。
残された虎徹は、イワンに口付けられた肩を額を手で押さえながら、赤い顔でイワンの後姿を呆然と見ていたが、彼が視界から消え去ると長椅子にズルズルと体を預け、天井を見上げる。
「…まいったなぁ」
熱烈な告白をされたような感覚に、虎徹はどうしたものかと頭を抱えた。
というか、先程の言葉の意味は何なのだろう。若者の言うことは分からん!と虎徹はウンウン唸りながらも、取り敢えずは自宅に戻ることにした。
そのまま眠れぬ夜を過ごした虎徹は、翌日のニュースで見切れることなく出ていた清清しい折紙サイクロンの姿に思わず笑みが零れた。
彼はきっとこれからもっと活躍するだろう。いつか、ほんとうに自分の隣に立つ姿が見れるのかもしれない。ちょっぴり複雑なような、何ともいえない気持ちになりつつも、やはり嬉しくもある虎徹なのであった。

end.


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折虎かわいいよ折虎…!!
虎徹たんがフラグ立てまくり毎週もえしぬ…