※最初に注意書き※
互いに高校生パラレル話で高一設定です。
健二さんに女装癖があるというものなので、女装健二さんが苦手なお方はリターンを!!
あと今回のお話では健二さんが見知らぬ人に痴漢されてます。
特殊な話ですみません!
大丈夫というお仲間は以下よりどうぞ!
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日常の中に潜む、非日常。
それは以外にも誰の直ぐ側にあるものなのだが、それを気付かないまま過ごす人も多い。
これは、そんなある日の出来事―――
ガタン、ゴトン、ガタッ、ゴトンッ。
規則的ながらも不規則に揺れる電車内は人もまばらであり、夕暮れ前の独特の日差しが車内をゆらりと照らす。あと数駅過ぎれば、この車内は人でいっぱいになり、今のようなゆったりとした空気からやや殺伐としたものに変わることを知っていた。
「…………っ……」
何時も彼女はこの瞬間から緊張感が一気に高まり、胸元をギュッと掴んで俯き、時折切なげな吐息を零す。
否、“彼女”と言うのは誤解を招いてしまうだろうか。しかし今の“彼”は、端から見ても女子高生にしか見えないのだから仕方ない。
「……はぁ…」
小さな溜息を零した、見た目は女子高生にしか見えないこの人物は、中はれっきとした男の子。
ややボサボサとしたショートカットだが、華奢な体のラインや撫で肩、そして透き通るような色白さはあまり健康的とは言えないが、それがうっすらと朱にそまっている首筋が清楚な中での何とも言えない色気を出していて、正に女子高生といった雰囲気なのだ。膝よりはやや短いがそんなにミニ丈ではないスカートの長さが、落ち着いた感じを見せている。
『次は〜〇〇駅〜〇〇駅〜』
「ぁっ」
ふと気付くと電車は乗り換えが多い駅へのアナウンスを告げていた。と言うことは、次の駅で一気に人が多くなるということ。彼が降りる駅はまだ先にあり、則ち、彼はこの女装したままで人混みを堪えなければならないのだ。
彼は元々女装癖があった訳ではない。こうなってしまった理由があるのだ。だがその理由を話せる相手は、残念ながらいない。親友にだって話せる訳がないと、彼はそう思っている。
『〇〇駅〜、〇〇駅に到着です』
電車が駅にゆっくりと止まり、アナウンスが車内に響くと同時に扉が開いた。
わらわらと人が車内に入っていくと、先程まではがらんとしていた空間があっと言う間に人だらけ。ラッシュ時の満員乗車とは少し違うが、それでも肩がぶつかってしまいそうなくらいの距離感に、彼は体を萎縮させる。
進行方向でいうと左側にある扉はこの路線では滅多に開かず、どちらかというと開く側の右の扉に人が集中するため、彼は自分の降りる駅までは左側の扉に身を寄せていた。
やや俯き加減で扉の窓から外の景色を眺める。夕暮れのオレンジが街を染め、夜を告げるその姿に瞳を奪われていると、ふと違和感を感じて顔を上げる。
大分混雑してきた車内だが、乗客同士の体がくっ付くまで込んでいる筈ではない。だが、背後にぴったりと体を寄せられているような感覚があり、彼は眉を寄せて体を強張らせる。
多少の不安が芽生えてきた頃になると電車は次の駅に到着し、車内は更に混み合ってきた。すると周りもぎゅうぎゅうになってきて背後の人が更に体を寄せてくる。
ずっと外を眺めていたから気付かなかっただけで、きっと先程から混み合ってきていたのだろう、と思うと体の力も抜けていった。
「っ?!」
だが、次の瞬間に明らかに尻を触られているのが分かり、安堵にも似た思いが一気に冷えたものとなる。表面スレスレを触れるか触れないかの微妙なタッチで手が這っていて、嫌悪感より先に恐怖に襲われた。
明らかに、痴漢をされている。気が強ければこの手を払い除けることも出来ただろうが彼は気が弱く、更に自分が女装していることが負い目で、抵抗してそのことがバレてしまう事が恐ろしくて何も出来ない。
「…っ…ぅ…ひっ!」
微かに体を震わせていると、背後の痴漢の荒い息が耳元にかかり恐怖心が更に増すばかりだ。それが痴漢に伝わってしまったのか、微妙なタッチだったものが、しっかりとした手付きに変わり尻を揉むように触りだす。
「ぅ…く…っ…」
自分はどうなってしまうのだろうか。恐怖と不安に押し潰されそうになりながら、泣き出してしまいたい気持ちを抑えて必死に堪えるしかない。けれどまだ思春期の不安定な年頃な彼に堪え切れる程の気力は無く、潤み始めた瞳の端から一筋の涙が流れた。
「ちょっとオジサン、なにしてんの」
凛とした、そして真っ直ぐな強さを持つような声色に、痴漢の荒い息や車内のざわめきが聞こえていた筈なのだが、彼の中では一気に静まったような気分に陥る。
今まで自分の尻に這っていた手が離れていて、一体何が起こっているのか分からなかった。
ただ一つ分かることは、この凛とした声に聞き覚えがあるということ。
「しらばっくれ様としても無駄だから。今のムービーで撮ってあるし」
「なっ!」
痴漢のものだろうと思われる声は焦りに染まっており、背後でたじろいでいるのが密着した体越しに伝わる。
「オジサンさぁ、いいとこサラリーマンって感じだよね。このまま事を荒げさせたら大変でしょ…?」
「な、なんだお前…金が目当てか?!」
互いに小さな声で話し合っているが、背後なので内容はしっかりと聞き取れた。だが、この後の展開など彼には全く分からない。
「別に。ただ、身分証明書出してよ」
「何が目当てだ…!」
「個人情報知りたいだけ。そうすれば、もうこんなことする気になれないでしょ?」
「っ!…わ、わかった…これでいいだろ…」
「…ふぅん、やっぱりいいとこの会社勤めじゃん」
「これで十分だろう…!」
「アンタさ、自分が不利だってこと分かってんの?」
鋭く冷たい声に、自分が話しかけられている訳じゃないのに背筋が凍るようにゾクリとする。
『〇〇駅〜、〇〇駅に到着です』
何時の間にか次の駅に到着していたようで、そのアナウンスにハッとすると、背後でも大きな動きがあった。
「っ!!」
「あ…やっぱり逃げたか…」
扉が開いた瞬間に、痴漢男が人を掻き分けて外に逃げ出し、それを予測していたのか冷静な声が次に上がる。
やっと開放された、そう思うと体の力が抜けてその場に崩れ落ちそうになった。
「おっと……大丈夫?」
だが彼が崩れ落ちる前に、背後に居る助けてくれた男の人が支えてくれたので大丈夫だった。
「…一度出て、落ち着こうか」
先程とは違った優しさを含む声で小さくそう言うと、腰に腕を回して体を支えられたまま電車から降りることとなる。
電車から降りた瞬間に扉が閉まり、ギリギリで降りれたようだ。そのままホームのベンチまで連れて行かれると、そこに座らされる。ずっと俯いたままで、まだ震える体を縮こまらせて座ると視界にあるのは学生服らしきズボンと革靴。
「………」
安堵と戸惑いに、声が出ない。だがそれは幸いと言うべきか。普通ならばお礼を言うべきだと分かっているが、例え声を出せる状態でも自分の目の前に立っている相手に声を掛けることは出来ない。
何故ならば、目の前に居る相手は―
「…大丈夫?……小磯…」
目の前に居る、自分を助けてくれた相手は、同じクラスの池沢佳主馬なのだから。
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名前を出すのを最後にしたかったので、分かりにくかったら申し訳ない(土下座)
そして女装癖健二さんが書きたかったんです…痴漢にあってるところを佳主馬が助ける話が書きたかったんです…!!