妻の美紗子は月一回、土曜日の午前中に来る生徒のピアノレッスンをしている。
その生徒とは、私と同じくらいの年齢、30歳中頃の男性で妻の友人の夫、石橋氏である。
石橋夫妻とは私達夫婦と交互に行き来があり仲良くしております。一緒に外食したり、カラオケに行ったりなどしている仲です。

その石橋さんですが、以前から私の妻、美紗子の事をとても気に入ってると言うことに私は気づいていました。
妻も石橋さんが面白い人なので会話を楽しみ、彼に対してはまんざらでもない様子でした。
以前、カラオケに行ったときも酔った勢いで口が滑ったのか、私にこっそり耳打ちしてきたのです。
「いやぁ○○さん・・・(私の事)、美紗子さんかわいいですねぇ〜うちのと入れ替えられたらなぁ〜」
と冗談混じりに言ったのでした。正直、妻が褒められるのは悪い気はしませんが、石橋さんの言い方と言えば妻を性対象としての眼差しでした。
「そぉ〜ですねぇ?私は構わないですけどねぇ?」
と、冗談めかし笑いながら受け答えした事もありますが、石橋さんは
「ほんとですかっ!!お願いしますよぉ〜」
と、目を輝かして哀願してきたりもしました。
「うちの嫁さんともっと仲良くなりたいなら、うちにピアノを習いに来るといいんじゃない?」と誘導じみた事を言った事もあります。

そして、しばらく日が進んだ頃、
石橋さんがピアノを覚えたいと言うことで、私の自宅に習いに来ることになったのです。
本気で習いに来るとは思わなかったのですが、まぁ生徒として習いに来るのは仕方ありませんし、
私が経営しているわけでも無いので「石橋は止めろ」と妻に言うのもおかしいですし・・・
大人も何人か習いに来ているので殊更取り上げて問題にする事でもないのです。
ただ、妻が石橋が来ることにえらく喜んでいたのが、少々気になったくらいでしょうか。

ある日の事、仕事で徹夜明けの私は2階の自室で寝ていました。
ピアノの音、妻と石橋の笑い声が時折聞こえ目を覚ましたのです。
完全な防音室を設けているわけでは無いのですが、自宅の教室にしている部分はある程度の防音施工はされているので、
ピアノの音や室内の会話はくぐもった感じでしか聞こえません。
ふと気が付くとピアノの音も、声も全く聞こえなくなって居た事に気づきました。

私は、胸騒ぎを覚え何かいつも違う違和感を感じました。布団から這い出し、ソロソロと階段を降りて玄関ホールを確認。
すると男性ものの靴があるので、石橋はまだ教室にいる事を確信しました。
教室として使用している部屋の扉の手前で、じっと耳を澄ましましたがボソボソと何か話している事が分かる程度で、ほとんど聞き取れない。
妻と彼は小声で話しているのでしょう。防音扉は小さなガラスがはめ込んであるので、おそるおそる覗いてみました。

すると二人の背中しか見えないのですが、石橋がピアノの真中に座り左を向き、美紗子はその視線の先に並ぶように座って会話していただけでした。
正直、私の心情は、ほっとしたのと「なんだ、つまらんなぁ・・・」と言う複雑な思いでした。

私もまだ眠かったので「あほらしぃ・・・寝よう・・・」と、思って立ち去る前に再度チラと覗いたのです。
すると目に見慣れない光景が飛び込んできました。石橋と美紗子が抱き合いキスをしているのでした。

その瞬間、私の背中に冷たい氷を差し込んだような衝撃、見てしまったものに対する明確な答えが出せない混乱に陥りました。
防音扉なので音は聞こえませんが、キスしながらあごをお互いに上下に動かしているのが見て取れたので、舌を絡ませているであろう事がわかりました。
私はその行為を止めさせようとする事よりも、なぜか次の展開に期待する感情が心の奥底から沸き起こってしまったのです。
しかし、次の展開は期待を裏切るもので、キスを止めしばらくすると二人は立ち上がりました。
私は、ここにいてはまずいと思い、なるべく音を立てないよう慌てて自室に戻りました。
布団に潜り込むと、石橋と美紗子の会話が玄関ホールから聞こえてきたので、彼が帰った事がわかりました。

私はその夜、美紗子のレッスン手帳を確認たのです。
石橋の次のレッスン日を調べました。来月の○日土曜19時と書いてあるのを確認しました。
私はある考えを実行することにしたのです。石橋のレッスン日は残業で遅い帰宅になると言うことにして、
こっそり帰宅して様子を確認しようと思いました。
何も無く済んで無駄になるのではないか?
と思いながらも、妻が他人とセックスする現場を見る事になるかもしれない、何とも言えない期待感を抱ていました。

石橋のレッスン日当日の夕方、いちおう出勤する際、遅くなるかもしれないと布石を打っておきましたが、再度電話連絡を入れたのです。
「すまん、やっぱり今日は遅くなるよ・・・0時前後には帰れると思う。」
その電話を入れた後、19時過ぎには自宅に着くように帰宅。
防音室でレッスンをしている間に帰宅しておけば二人に気づかれず家に戻れるからです。
そーっと玄関を開けると、石橋のと思われる男性用の靴がありました。
私は自分の靴を抱え自室に向かいました。
まだレッスンはきちんとやっている様で、ピアノの音がまだ聞こえます。

19時50分頃でしょうか、ピアノの音が止んだので階段の踊り場まで降りて聞き耳を立ててみました。
何やら楽しそうに会話してたのですが、その声も聞こえなくなったのです。
私の心臓は異様な興奮でバクバク鳴り二人に聞こえてしまうのではないか?と思ったほどです。
その興奮を抑えつつ、防音室の小窓を覗くと・・・想像したとおり、二人は抱き合ってキスしていました。
それも、なんというか・・・濃厚って言うんでしょうか、舌を出して舐めあったり・・・
唇を密着させて舌を入れあっているのが分かるのです。

以前に確認したときは、ここで終わっていたのですけれど、なにしろ今日は私は0時前後まで帰宅しない事になっています。
二人の雰囲気からしても、もうこのままで済まないだろう様子が見て取れました。
一旦二人は離れると、防音室から出ようとしていました。私は慌てて階段まで戻り、様子を伺うことにしました。
このまま外出されたらまずいなぁとか考えており、既に妻の浮気がどうとか言う考えは、今思えばほとんどありませんでした。
思ったとおりの展開になりつつある何ともいえない悔しさと、それと同じくらいの期待感と興奮が私の頭をぐるぐる回りました。