────だから、諦めて?

そう言って、私を抱き締める。

駄目だ。もう、怒る気も失せる。

「ごめんね・・でも、もう無理なんだ。離してあげられない。」

彼が切なく言った。

ずるい人。

初めて会った時も、寂しそうな顔が放っておけなかったのだ。

「・・もう、いいです。それに、あなたが私を大切にしてくれるなら、充分です。」

ここに来て理不尽だと思うことは多々あったが、もう、諦めて彼を受け入れるよう努力するしかない。

「・・っ・・ごめん。愛してるんだ・・。こんな気持ち初めてで、どうすることもできない。」
彼は私を強く抱き締める。

きっと、彼はどこかが壊れているんだと思う。
彼みたいに、格好良くてお金も地位もある人が私みたいな人間に強く執着するのは、端からみたら狂っているように見えるかもしれない。

『私がずっと一緒にいます』

言った通りになっちゃったな。

私は彼の背中をトントンと優しく叩きながら、彼に言う。

「約束しましたからね・・私は、どうにもあなたを放っておけないみたいです。」