彼女の体温が徐々に消えていくのを感じる。

僕は必死にその手を温める。
この行動に意味が無いのはわかっている。
しかし、止まらないのだ。
そんな僕を見ている彼女は、ゆっくりと口を開いた。
何かを僕に伝えている。
しかし、その言葉は声になっていない。
僕はその言葉、声を知りたくて、聞きたくて耳を近づけるが動いていないことに気付く。

あぁ、何で。

彼女は逝ってしまった。
それでも僕は彼女の手を離さない。
少しでも彼女の体温を守るために。
そして僕はいつも思う。



「おいていかないで。」



その消えていく体温と一緒に僕を連れてって。