「いらっしゃいませ」
お客さんが来たら第一声。
笑顔で接し、お客さんが困っていたらどんな花を探しているのか聞いてみる。
正直なことを言うと……私はお客さんと接するのが苦手な方。
お花にお水をあげたり、お世話をするのが好き。
だって---
「綺麗なお花ですね」
「---……え、っ…?」
夕方頃。
会社からの帰宅ラッシュ。
駅からバス停にかけて近いこの花屋には学生さんやサラリーマンの人がよく通る。
だからと言って実際通り過ぎるだけで立ち寄ったりする人は居ないに等しい。
来るとしたら、少し遠い所から来る人が多い。かな……?
「あっ……えーっと……」
急に見知らぬ人に声を掛けられてどうしたらいいんだろう、と思わずあたふた。
「ご、ごめんね…。 急に話掛けちゃったりして」
「い、いいえ! 大丈夫ですよっ!」
慌てて弁解。
…したけれど、本当は胸がドキドキしている。
「此処、良く通るから…それに君が仕事してるの目にしてたからさ。 いつ見ても綺麗な花だな、って思ってついね…」
「そんな……っ!」
ドキドキして、言葉が出てこない。
頭の中は『はわわ〜…』と大混乱。
人見知りが激しい訳でもなく、ただ純粋に心が落ち着かない。
今日初めて出会ったサラリーマンの男性に---
---
「ありがとうございました」
いつもの夕方。
カウンター越しから帰宅する人達を眺めている。
あの時の人がまた通ってくれないかと……私は待っている。