これは、この物語は本当に凄いな。
ずっと圧倒されっぱなしで途中からドキドキしっぱなしで、先は?この先はどうなるの?どうして最初のあの結果になるの!?って叫びたくなって、一気に読んでしまった。

→プロローグ感想(本編未読時)
伊坂さんは結論、じゃないな結果だな、起こった事と結果を最初に持ってくる手法を使うことが多いよね。
プロローグ2では、第三者が青柳(主人公)が首相暗殺の犯人にされて逃げるが2日後に自首したという話をテレビで見てるだけ。あ、ちなみにあらすじは読んでるので、青柳が犯人じゃないことは既に知ってます。
そう、犯人じゃないことは知ってるのに、あたし達はプロローグで青柳が捕まったってネタバレされてるわけ。
まずこの時点で、捕まった青柳が本人ならなぜ自首した?もしくは別人?ならそれは誰?とかもう疑問だらけで……。
プロローグ3で事件20年後の話(青柳が真犯人だとはもう誰も思っていないこと、首相暗殺事件に関わったたくさんの人が皆死んでいること)が出てくるんだけど、そこでもっとこんがらがる。

→本編感想(2分の1)
森田と三浦の死はショックだった。どっちも泣いた。二人とも一度青柳をピンチまで追い込んで、でも結局助けてくれたんだよなぁ。
森田は最初らへんに死んでしまったけどその後も回想とかで頻繁に出てきたせいか、逆にどんどん寂しくなっていった。
三浦は、最初殺人犯かーと思ってあまり好きではなかったんだけど、だんだん真剣に青柳を助けてくれるようになって好きになり始めたところであっさり死んじゃって、予想外にショックだった。

車の「俺は犯人じゃない」「だと思った。」の書き置きの流れはうるっときたわ。
伊坂さんってほんとこういう、なんていうか、さりげない?演出を大きくするの得意だよねえ。(今回だと、「痴漢は死ね」、青柳の親指でボタンを押す癖、「たいへんよくできました」)
あと青柳のお父さん、あたし結構好きだな。馬鹿でもなんでもここまで息子を信じれるのって凄い。
子どもの事を理解して、そして愛してるからこそやってないって言いきれるんだよね。そうですよお父さん、あなたの息子は無実ですよ。みんなの想いを背負って逃げようと必死ですよって言いたくなった。
あのインタビューのシーンは児島さんと一緒に号泣ですよ。

(12/02/24 21:29)


→本編感想(2分の2)
最後の警察の前に姿を現すシーン、あそこって普通はドキドキするべきなんだろうけど、あたしはあそこらへんから最後の最後までずっと涙が止まらなかった。
だって、ここまで青柳が逃げるのにいったい何人が助けてくれたか……中には知らずにハメようとした人とか一度は通報した人とかもいるけど、結局みんな助けてくれたんだよね。
数人の犠牲と、数多の助けのおかげで青柳はここまで生き抜いてきた。そう思うとなんかもうみんな尊くなっちゃって。
樋口が、大学生時代に森田と青柳が二人でお昼を食べながら喋ってたらいつの間にか人が集まってきて笑い声で溢れる、みたいなことを言ってたのできっと青柳は凄く好かれる人だったんだろうな。
そんな青柳だからこそ、信じてくれる人が各自行動して助けてくれて、結局もの凄い人数が青柳のために動いたんだろうなぁ。

→総合感想
今までは伊坂さん作品だとオーデュボンが一番だと思ってたけど、同じくらい面白かった。
オーデュボンとゴールデンスランバーは、内容が違いすぎて比べられないなぁ。
オーデュボンは基本的にたんたんと島の中だけで物語が進んでいくけど、喋るカカシがいるからちょっと不思議な気分になる物語。
ゴールデンスランバーは姿の見えない強大な敵からいかに逃げるか、そして人間の繋がりについての物語。
あたしはドキドキしたり泣けたりする物語の方がいいとは思ってないので、そういう点では同列。でも個人的に人間の繋がり(ノットすれ違い)というのが凄く好きなので、それを含めるとゴールデンスランバーかなー……。

あ、そういえば伊坂さんで人間の繋がりがメインとされてるのはこの物語だけか。
ラッシュライフも各登場人物が繋がっていってるけど、あたしが言う「人間の繋がり」はもっと太いもののことだから違うんだよねえ。
成田さんの作品もおしい。成田作品はどれも繋がりがあるけど方向性が違うんだよなぁ。
まあそれについてはゴールデンスランバーを読んでもらったら、あたしが言いたい繋がりの太さの意味にすぐわかるはず。

ということでまとめですが、いやはや本当に面白かった。
伊坂さん作品はその後が気になる話が多いんだけど(魔王・オーデュボン・重力ピエロ・ラッシュライフ)、これもその後が気になるなぁ。
青柳はやっぱりそのまま別人として生きていくんですかね。顔変わってても、いつか親父さんのところに行ってほしいな。

→25日追記
上で言ってる「繋がり」についてだけど、シリーズ物の小説についてはまた別で!
シリーズ物で繋がりが太いのは普通だわー。まあシリーズ物でもゴールデンスランバーほど人間の繋がりが太くて広い小説は、あんまり読んだことないけど。
広く浅く、でも中心近くだけ深く、というのが多いよね。それでも充分満足できるんだけどさ。
それに広がり方にも種類というか違いがあって、中心は網目状でで外側になるほど放射線状になる広がり方が一番多い。
広く深く、そして網目状に全てが全てに繋がってるからゴールデンスランバーはもの凄く感じるんだよなぁ。
……って、感覚的すぎてよくわかんないっすね。もっと別の言い方をすることもできると思うんだけど、あたしのイメージではこれがぴったりだったのでそのまま言ってみました。

(12/02/24 21:30)