こっぱえまにえる


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 09/24 04:41(:志摩燐
 oh my sweet sweat sleeping
柔造のことが好きな燐のことが好きな志摩の話。




「奥村くんさぁ、そろそろ降りてもええと思うんやんか」

「うるせえ!すすめぇ!ダッシュだダッシュ!!ゆーひにむかってはしれえ!!」


まさにひっそりと言った志摩の提案はものの見事に掻き消されてしまった。背中で脚をバタつかせる同級生によってだ。

ケタケタと楽しげに笑うその人物が情け容赦なく髪を引っ張るせいで頭が痛い。だが高校への進学が決まってすぐに染めたピンクのそれの分量が減る事よりも先に志摩がとった行動は、背中のお荷物を強制的に下ろす事じゃなかった。


「ちょっ!奥村くんシィー!!!ほんまご近所さん出てきたらどないするん!!?夕日なんかないしね!!」


時刻は12時を過ぎたところ。もちろん昼間のではなく、真夜中の。

基本的に小さな頃から面倒事が嫌いな志摩にとっては自分の毛髪よりご近所トラブルの方が嫌なのだ。ましてや今現在歩いている場所は京都、生まれた時からの付き合いとはいえ……いやだからこそトラブルは避けておきたい。何かあって両親や兄たちから雷を食らうのは自分か背中の人物のどちらかなんて火を見るより明らかなのだから。

晴れの日に阿呆なことをするな、と。叱り飛ばされる。

自分が。


「しまのにーちゃんカッコいかったなー」

「あー、まぁ……せやねー」


今日(といっても日付は変わってしまったが)は志摩の兄、柔造の祝言の日だった。

たしかに普段より更に凛々しい顔をした兄は格好良かったかもしれない。たとえその結婚相手が身内としか言えない存在だったとしても。ちなみにその点について……いや、主に完全なる難癖的な意味でもう1人の兄が号泣していたわけだが志摩にとっては苦笑いしかできなかった。

そして適当に濁した理由は他にある。


「なんだよおまえー、にいちゃんだろー?」

「はいはい。暴れんといてー」


背中の人物、燐はたぶん柔造の事が好きだったのだ。

それをなんとなく感じていたから志摩は適当に濁したし、今もヨイショと背負い直した。降ろすつもりは最初からない。

もはや何次会なのかも分からない宴の席で、しかも自分達のあたりに酒が混ざっていたのは予想外だったけれどラッキーでもあった。幼なじみたちは寝てしまったし、燐の双子の弟で保護者的な人物は見事に彼の同僚に絡まれていた。露出過多な彼女に絡まれるのは羨ましいものの、志摩としてはその場を離れたかったのだ。

自分に絡む燐を連れて。

背中に背負うのは初めて一緒に京都へ来たとき以来。と、言うと聞こえが良いが実際にはあの時は仕事だったし当初の関係は気まずい雰囲気だった。けれど今日と同じように酔った燐を背負いながら志摩は気付いてしまった。


(やっぱ好き、なんやなー)


超絶ノーマル。あの日まで少なくとも志摩はそうだと思っていたし、今も限りなくそれに近い。

ただ、どうにもこうにもそうらしい。

面倒くさいことになったと思いつつもそうらしい。とりあえずあの場から連れ出したいと思うくらいには。

結果的に「カッケー」を連発されるという地味にダメージの貯まる感じになってしまったが、まぁ良いだろう。上手くいけば自分の好感度アップも期待できる。

柔造と自分の間にそこまでの差はない、と志摩は考えている。もちろん本気で。

顔は誰の目から見ても似ている、祓魔師として経験差は多少あるが志摩にはヤマンタカがいるし力量としては五分以上だろう。燐といる時間なんて雲泥の差だ。

つまり勝算はある。

ここらで酔った燐を介抱し、尚且つ慰めたりしたなら一気に逆転だって夢じゃないはずだ。たぶん。

酒によって上昇した体温が熱い。背中に感じるそれと、燐が呼吸する度に耳に微かにあたるほんのり甘い吐息。

じわりと滲む汗が志摩のやる気を増幅させた。今日からは好感度を上げる作戦に出るのだ。


「おーくむーらくん」

「んー」

「眠たい?」

「んー」

「寝とってええよ、俺んち行くし。泊まったらええわ」

「ん」


ぐりぐりと首筋に頭を押し付けられる感覚がくすぐったい。けれど無意識に普段より数倍甘い声が自分から出た結果だと思えば嬉しさも倍増するというもの。

イケる気がする。

最近あまり見る機会の無くなった詩吟の某人のようなことを思いながら志摩は頷いた。間違いないのだ。

イケる気がするのだ。


「しま」

「ん……?寝れへん?」

「おまえってやっぱしさカッコわりぃな」


たぶん。


「ちょっ!!髪引っ張らんといて!!!はげる!!」




たぶん。



《あとがき》
うへへ、戻ってきちゃった。うへへ| ε:) ニョキ
おんぶがさ……眩しいんですもん。眩しいんですもん……。今さらですが。へへへ

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