新型コロナウイルスのワクチン開発に世界各国がしのぎを削るなか、結核を予防する「BCGワクチン」の新型コロナウイルスへの予防効果を見る治験が始まることが「サイエンス」(電子版)のニュース記事に登場し、注目されている。別にオーストラリアの研究所も臨床治験の開始を発表した。日本ではBCGの定期接種が行われているが、これは人類の希望となるのか? 京都大大学院医学研究科の医師でジャーナリストの村中璃子氏が緊急寄稿した。
一般にワクチンは、麻疹ワクチンであれば麻疹を、インフルエンザワクチンであればインフルエンザをというように、特定の病原体に対する1対1の予防効果を示す。
しかし、あるデンマーク人の研究者グループが2015年、「BCGワクチンは細菌の感染症である結核を予防するだけでなく、免疫システム全体を強化し、ウイルス一般への感染や重症化を予防する効果がある」とする論文を発表した。
BCGは20世紀初頭に開発され、今日まで世界で使われてきた古典的ワクチンだ。
ただ、結核の感染や重症化の予防効果は60%程度と決して高くはない。そのため、日本では生後1歳までの間に接種が推奨されているが、米国をはじめBCGを定期接種としていない国も多い。
前出の論文には科学界から賛否両論の声が上がり、評価は定まっていないが、オランダでは今週中にも、このBCGの効果に注目している研究者たちが新型コロナウイルス感染のリスクグループである医師や看護師1000人を対象とした、BCGワクチンの新型コロナウイルス予防効果を評価する治験に着手する。