スペインのぶどう固有品種一覧と特徴を紹介 スペインのぶどう固有品種一覧と特徴を紹介

スペインのぶどう固有品種一覧と特徴を紹介

多種多様な気候、土壌、そして文化の地方からなるスペインには各地にワイン産地があります。そして、各産地にさまざまな固有品種が存在し、バラエティ豊かなスタイルのワインが生み出されています。

今回はスペインの固有品種のワイン用ぶどうについて解説します。スペインワインの魅力がさらに伝わる内容になるかと思いますので、どうぞ最後までご一読いただければと思います!


赤ワイン用ぶどうのスペイン固有品種

テンプラニーリョ(Tempranillo)

その名も「早熟」という意味をもつスペインを代表する赤ワイン用ぶどうです。原産地はリオハ、(D.O.Rioja)ナバーラ地方(Navarra)。

赤系果実やプラムなどのアロマがあり、タンニンと酸も豊富です。長期熟成に適した品種で、スペインの高級ワインの大半はテンプラニーリョを原料としています。MAPA(Ministerio de Agricultura, Pesca y Alimentación/スペインの農業・漁業・食糧省)によると 、テンプラニーリョは2021年にスペインで醸造用ぶどうとして最大の栽培面積を占めるようになりました。

テンプラニーリョには地域によってさまざまなシノニム(Synonym/別名)があり、マドリード(Madrid)とラ・マンチャ(La Mancha)ではセンシベル(Cencibel)、カスティーリャ・イ・レオン(Castilla y León)ではティント・フィノ(Tinto Fino)またはティント・デル・パイス(Tinto del Pais)などと呼ばれます。


ガルナチャ(Garnacha)

フランスやオーストラリアなど、世界各地で栽培されているアラゴン地方(Aragon)原産の品種です。スペインではアラゴン地方のほか、カタルーニャで多く栽培されています。

糖度が非常に高いのが特徴で、干ばつや日照り、風、病虫害にも強く、土壌を選びません。イチジクやドライプルーンのような果実味に、甘いスパイスやチョコレートのようなニュアンスがあります。

南フランスのローヌ(Rhône)、ラングドック・ルーション(Languedoc-Roussillon)やニューワールド系の産地ではグルナッシュ(Grenache)と呼ばれています。突然変異が起こりやすい品種で、グルナッシュ・ブラン(Grenache Blanc)と呼ばれる白い果皮のものやピンク色の果皮のグルナッシュ・グリ(Grenache Gris)などがあります。


カリニェナ(Cariñena)

アラゴン地方の原産でフランスではカリニャン(Carignan)と呼ばれて栽培されています。アラゴンとカタルーニャで広く栽培されてきましたが、ウドンコ病に対する抵抗力が弱く、栽培面積が減る傾向にありました。ただ、プリオラート(D.O.Priorato)などの産地でガルナチャとブレンドしたスタイルのワインが評判となり、再評価されつつあります。

濃い色合いと、強い酸味とタンニンが特徴で、長期熟成に適しています。


モナストレル(Monastrell)

モナストレルの原産地ははっきりとは判明していませんが、おそらくスペインが原産地だと考えられています。スペインでは主に地中海沿岸のバレンシア(València)、ムルシア(Murcia)、カタルーニャ州で栽培されています。

乾燥に強く、晩熟で完全に熟すためには南スペインやフランスのローヌ地方のような強い日差しが必要とされます。タンニンが豊富で、ロゼ、赤、甘口、カヴァ(Cava)、酒精強化ワインなど幅広いタイプのワインになる品種です。

フランスではムールヴェドル(Mourvèdre)、オーストラリアとアメリカなどではマタロ(Mataró))と呼ばれます。


メンシア(Mencía)

カスティーリャ・イ・レオン州のビエルソ(D.O.Bierzo)を中心に栽培されている赤ワイン用品種です。中世時代、サンティアゴ・デ・コンポステラ(Santiago de Compostela)に向かうヨーロッパの巡礼者たちによってイベリア半島に持ち込まれたぶどうを原種としている、と考えられています。タンニンや酸味がひかえめで、フレッシュなスタイルのワインが造られて人気になっている品種でもあります。


ボバル(Bobal)

バレンシア州のウティエル・レケーナ(D.O.Utiel Requena)周辺で栽培されてきた記録を持つ品種です。現在もこのウティエル・レケーナを中心に広く栽培されています

色素が濃く、天候の変化や病害虫に強く収量が多いためバルク用として多用されてきた品種ですが、近年は良質なワインになる品種として注目されています。

 

白ワイン用ぶどうのスペイン固有品種

アルバリーニョ(Albariño)

原産地には諸説ありますが、ガリシア州(Galicia)原産と言われています。スペインを代表する白ワイン用品種で、主にガリシア州で栽培されていて、高級ワイン産地のリアスバイシャス(D.O.Rias Baixas)全域を支ています。

果皮は黄金がかった黄色で、香り豊かで、酸味も豊富です。口あたりのよい、バランスのとれた辛口の高級白ワインになります。


ベルデホ(Verdejo)

主にカスティーリャ・イ・レオン州のルエダ(D.O.Rueda)で栽培されている白ワイン用品種です。原産地ははっきりしていませんが、ルエダには11、12世紀から植えられています。

厳寒や猛暑、乾燥にも強く、季節や日中の寒暖差の大きな土地で育つと品種の特徴である果実味、柑橘やハーブのアロマが豊かに発揮されます。フレッシュで香り高く、コクがあって酸味も豊かな

ワインになる品種です。

 

マカベオ(Macabeo)

原産地が特定されていませんが、おそらくスペインが原産だとされています。主にスペイン北部で栽培されていて、カタルーニャ州ではマカベオまたはマカベウ、リオハやナバラ、アラゴンではビウラ(Viura)と呼ばれています。

早飲みでも長期熟成でも美味しい高級品種で、豊かな芳香としっかりとした骨格、かすかな苦みが風味にあります。カタルーニャ州では主にカヴァに使われ、リオハでは小樽発酵の白ワインになります。


チャレロ(Xarello)

地中海を航行するローマ人によってスペインに広がった品種で、マカベオ、パレジャーダと並ぶカヴァの主要品種です。

香り豊かで酸味とフレッシュさが特徴。マカベオ、パレジャーダとブレンドされることが多い品種ですが、単一での仕込みも増えてきています。


パレジャーダ(Parellada)

カタルーニャ地方の固有品種で、19世紀末から高品質なカヴァの原料として採用されるようになりました。

花のような香りが特徴で、雅さや柔らかさのあるカヴァに仕上がりますが単独でスティルワインが造られるようになってきています。


パロミノ(Palomino)

スペインではガリシア州やカスティーリャ・イ・レオン州、カナリアス諸島(Islas Canarias)などで栽培されていて、シェリー(Sherry)の産地、ヘレス(D.O.Jerez)で栽培されているぶどうのほとんどがパロミノ種です。

成熟が早く、ワインにビターやアーモンドのようなニュアンスを与えるという特徴があります。


ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)

諸説ありますが原産地はカナリアス諸島と言われています。主な産地はコルドバ(Córdoba)やバダホス(Badajos)、マラガ(Málaga)、バレンシア(Valencia)などです。

糖度が高く、極甘口のシェリーやヴィンテージワインの原料になります。


Godello(ゴデーリョ)

ガリシア州とカスティーリャ・イ・レオン州の境を流れるシル川(Sil)の渓谷が原産地です。主な産地はビエルソ(D.O.Bierzo)とバルデオラス(D.O. Valdeorras)。

早熟で、短期間に成熟する高品級種で、香り高く、しっかりとした骨格、ほのかなフローラルのアロマ、繊細でスムーズな口あたりが特徴です。


ロウレイラ(Loureira)

ガリシア州原産の白ワイン用品種で、ガリシア語でローレル(Laurel)という意味の名がつけられているように独特な風味があります。ワインを滑らかにし、複雑さを与える品種といわれています。芳香豊かで、アルバリーニョなどとのブレンドとして使用されることが大半です。


スペインワインの全体的な特徴

さまざまな固有品種があり、多様な気候や土壌の産地が各地にあるスペインは、さまざまなスタイルのワインを造り出しています。ただ、全体的な評価としては、長期間の熟成により複雑さとまろやかさのあるワインを比較的低価格で提供できる産地、とされています。また、スペインを代表する赤ワイン用品種、テンプラニーリョはピノ・ノワール(Pinot noir)との共通点が多く、ピノ・ノワールのファンがテンプラニーリョを使ったスペインワインを好む、という傾向もあるようです。


まとめ

スペインの固有品種のワイン用ぶどうについて解説しました。

スペインにはさまざまな固有品種のワイン用ぶどうがあります。長年、伝統的な製法でワインにされている品種もあれば、時代とともに使われ方を変え、新たなスタイルのワインに仕込まれている品種もあります。さまざまなぶどう品種のスペインワインに挑戦してみることで、きっと、新たな味に出会うことができることでしょう。

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